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今月の話題

冬の食中毒」に
気を付けましょう

消費者庁消費者安全課
柿谷( かきたに ) 康仁( やすと )

「食中毒」と聞くと気温の高い季節での発生をイメージしがちです。しかし食中毒にもさまざまな原因があり、冬に発生するものもあります。

今回の記事では、特に冬に注意が必要な食中毒について、予防のためのポイントなどを紹介します。食中毒に注意して、元気に冬を過ごしましょう。

夏だけではない食中毒

急な腹痛や下痢、おう吐などの症状がでたら、それは「食中毒」かもしれません。食中毒を引き起こす主な原因は、「細菌」「寄生虫」「ウイルス」であるといわれています。

「細菌」(腸管出血性大腸菌O157など)による食中毒は、細菌の増殖が活発となる高温多湿な季節に多発する傾向があることから、梅雨期から夏にかけて特に注意が必要とされています。ただし、生・半生・加熱不足の鶏肉料理によるカンピロバクター食中毒など、季節に関係なく発生しているものもあります。

その他、生鮮魚介類に寄生するアニサキスなどの「寄生虫」による食中毒も季節に関係なく発生していることが知られています。

また、「ウイルス」による食中毒も季節に関係なく発生していますが、特に冬(11月から2月)は、ノロウイルスによる食中毒が多く、集団発生する傾向があります。

このことから、冬も食中毒の予防を意識しつつ、特にノロウイルスについては、より注意を払うことが必要です。

ノロウイルスの症状と原因

ノロウイルスは、非常に感染力が強く、ごく少量のウイルスが原因となって、おう吐や下痢、腹痛などの食中毒の症状を引き起こします。ノロウイルスは、細菌とは異なり食品中では増殖しませんが、人の腸管内で増殖するため、感染者の吐しゃ物や排泄物中には、大量のウイルスが排出されることとなります。

ノロウイルスによる食中毒の多くは、感染者の排泄物等で汚染されたトイレを使用した際などに、ウイルスによって手指が汚染され、その手指が食品に触れることにより、食品が汚染されて発生します。

※イメージ

潜伏期間

24~48時間

主な症状

吐き気、おう吐、下痢、腹痛、発熱(37℃~ 38℃程度)

※3日程度で回復

※感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような症状のこともある

ノロウイルス食中毒を予防するポイント

ノロウイルスによる食中毒は、多くの場合「人→食品→人」という経路でウイルスが伝搬され発生します。ウイルス性食中毒の予防4原則「持ち込まない」「つけない」「やっつける」「拡げない」を知り、日常生活で実践することが予防のためのポイントとなります。

1 持ち込まない

調理を行う場所や人がノロウイルスに汚染されていると食中毒が発生するリスクが高くなるため、次の2点がポイントとなります。
①日頃から、丁寧な手洗いや日々の健康管理を心がけましょう。
②腹痛や下痢などの症状があるときは、食品を直接取り扱う作業をしないようにしましょう。

2 つけない

ノロウイルスの汚染は人の手指を介して起こります。食品及び食器・調理器具にノロウイルスをつけないように手洗いを励行しましょう。

①手を洗うタイミング

トイレに行った後・調理を始める前・料理の盛付けの前・調理作業の区切りとなるタイミング

②手の洗い方

指輪や時計などを外し、せっけんを使って丁寧に洗いましょう。特に洗い残しの多い指先や指の間、爪の間、親指の周り、手首、手の甲は、意識してより丁寧に洗うよう心がけてください。

3 やっつける

食品に付着したノロウイルスは加熱調理で失活(感染力がなくなる状態)させることができます。また、食器や器具類は熱湯消毒や消毒薬を用いて失活させることができます。

①加熱調理の方法

食品の中心温度が85℃~90℃で90秒以上加熱することによりノロウイルスは感染力を失うといわれていますので、この温度・時間が保てるように調理しましょう。

②食器・器具類の消毒方法

洗剤などで洗浄した後に、熱湯(85℃ 以上)で1分以上加熱するか、塩素消毒液(塩素濃度200ppm)に浸して消毒しましょう。

4 拡げない

ご家族などが感染した場合、おう吐物などの処理の際には二次感染しないように、使い捨てのビニール手袋やマスクを利用し、塩素系消毒剤でトイレや居宅内を消毒するなど、感染が拡大しないための対策をすることが重要です。

もし感染してしまったら(感染したことが疑われる場合を含む)

おう吐や下痢、発熱などの症状がみられた場合は外出を控え、まずは医療機関を受診しましょう。医師の指示に従い治療を行うとともに、家庭内での二次感染を防ぐために前述の予防4原則を実践してください。

食中毒に注意して元気に冬を過ごすために

今回は、冬に多く発生するノロウイルスについて、予防のためのポイントをお伝えしました。

その他、冒頭で触れたカンピロバクター食中毒を防ぐためには、「鶏肉を中心部までしっかりと加熱」「他の食材に菌が移らないように注意」しましょう。アニサキスによる食中毒を防ぐためには、「まず目視で確認」「さらに冷凍・加熱」が有効です。

また、厚生労働省では「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」を示しています。これらを参考にして食中毒に注意し、元気に冬を過ごしましょう。

家庭でできる食中毒予防の6つのポイント

①買い物

消費期限などを確認するなど

②家庭での保存

冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫に保管する など

③下準備

野菜などの食材を流水できれいに洗う/生肉や魚、卵を触ったら手を洗う など

④調理

調理の前に手を洗う など

⑤食事

清潔な食器を使う/作った料理は長時間、室温に放置しない など

⑥残った食品

清潔な容器に保存する など

●厚生労働省のホームページでは、食中毒予防のためのポイントなどを紹介しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html