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食品が、さまざまな理由で食べられるのに捨てられていることを「食品ロス」といいます。我が国の食品ロスは平成28年度で年間643万トンと推計されており、その内訳は、事業系廃棄物由来のものが352万トン、家庭系廃棄物由来のものが291万トンです。生産、製造、販売の各段階及び家庭での調理や食事、後片付けの各場面において、食品ロスは発生しています。
日本では、食料を海外からの輸入に大きく依存し、食物の廃棄は、その生産に使われた土地、水、エネルギー、そして人々の労力など、多くの資源を無駄にしています。
限られた資源の有効活用や環境負荷の軽減に目を向け、社会全体で食品ロスの削減に取り組むことはとても大切です。国では、食品ロス削減関係省庁等連絡会議を設置し、連携や推進を図っており、全国各地でも食品ロスの削減に向けたさまざまな取組を進め始めています。
食品ロスの発生状況
平成30年度に消費者庁が実施した消費者の意識に関する調査結果によれば、食品ロス問題の認知度は74.5%となっています。
食生活の中で「もったいない」を意識した場面として、期限切れ等で食べずに捨ててしまうとき(55.7%)、レストラン等で他人の食べ残したものを見たとき(48.7%)、自分又は自分の家族等が食べ残したものを見たとき(37.5%)、ごみ(特に生ごみ)を捨てるとき(21.5%)があります。
食品ロスを減らすための取組として、残さずに食べると回答した人が60.7%と最も多く、冷凍保存を活用する、料理を作り過ぎない、賞味期限を過ぎてもすぐには捨てずに自分で食べられるか判断するという回答が4割を超えていました。このほか、飲食店等で注文し過ぎない、残った料理を別の料理に作り替える、日頃から冷蔵庫等の食材の種類・量・期限表示を確認する、小分け商品・少量パック商品・バラ売り等食べきれる量を購入するという回答もみられ、食品の購入や外食の場面で取り組まれています。
食生活の中で「もったいない」を意識した場面
食品ロスを減らすための取組
フードチェーンでは、小売店などが設定するメーカーからの納品期限や店頭での販売期限といった構造的仕組みにより返品や廃棄が生じており、食品ロスの発生要因の一つとなっています。こうした課題に対し、納品期限の緩和や品質保持技術による賞味期限の延長、賞味期限の表示を年月日から年月に見直すなどの改善に取り組む企業が出てきています。また、食品ロスの削減に役立つ容器包装の工夫も進み、容器の形状の工夫で開封後の劣化を抑制し鮮度の保持期間を延長したり、包装の材質の工夫で酸素や水蒸気のバリア性能を高めて長期保存を可能にしたり、使い切り・食べきりサイズに応じた容器包装の工夫で使い残しや食べ残しを防いだり、高度な技術を生かしたさまざまな工夫がみられます。
レストランや食堂、ホテル、スーパーマーケットの食品売場などでは、適量を注文する呼びかけや食べ残しを持ち帰りできるサービスの実施、小盛りやハーフサイズなど分量の少ないメニューや商品の提供、需要予測を行い食材の仕入れや仕込みの効率化を図るなど、食品ロスの削減に向けた取組があります。
自治体では、生ごみの削減や食育の推進、環境教育の推進などさまざまな観点から、食品ロスの削減に向けた取組を実施しています。
消費者庁では、食品産業から発生する食品ロスのうち外食産業で133万トンもの食品ロスが発生していることから、平成31年4月19日に、外食時の食べきり促進や持ち帰りに関して、関係者が一堂に会する戦略企画会議を開催しました。食べ手である消費者と、作り手である飲食店双方の理解や実践が進むよう、関係者による議論を行い、外食時の「食べきり」の一層の促進に向けて実践のポイントや留意事項を盛り込んだ『外食時のおいしく「食べきり」ガイド』を作成しました。
消費者庁のウェブサイトでは専用ページ「食べもののムダをなくそうプロジェクト」を設けて自治体の取組事例の紹介や、料理レシピサイト「クックパッド」に「消費者庁のキッチン」を設けて自治体や団体の方々から寄せられた「食材を無駄にしないレシピ」などを紹介しています。また、徳島県において、家庭における食品ロス削減の取組についての実証事業を実施した結果、家庭で食品ロスの計量を行うことで約2割、計量に加え、削減の取組を行うことで約4割の食品ロス量が削減したという結果が得られました。
家庭でどのくらいの食品ロスが発生しているか、把握することで食品ロスを削減することができます。この結果をもとに、啓発資材を作成し、家庭における食品ロス削減の取組の推進に活用しております。
家庭での食品ロス削減の促進
福井県では、全国に先駆けておいしい食材を使っておいしい料理を適量作って食べきる運動「おいしいふくい食べきり運動」を展開し、平成28年度には、福井県から全国の自治体にネットワークへの参加を呼びかけ、「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」が設立されました。情報の共有・発信と全国共同キャンペーンを活動の柱とし、令和元年5月23日現在で389自治体が参加するまでに、活動の輪は広がっています。
長野県松本市では、会食や宴会などで乾杯後の30分間とお開き前の10分間は席を立たずに料理を楽しむことで、食べ残しを減らす「残さず食べよう!30・10運動」を進めるとともに、食品ロスの削減を推進する飲食店や事業所等を「残さず食べよう!」推進店・事業所として認定しています。
神奈川県横浜市では、食品ロスの中でも手つかずの食品を減らすため、毎月10日と30日を冷蔵庫の中をチェックする日とした「冷蔵庫10・30運動」を実施するとともに、「まるごと旬野菜〜使い切りレシピ」として食品ロスを減らすためのレシピ集を公開しています。
食品ロス削減レシピの発信
平成27年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において、持続可能な開発目標の一つに「持続可能な生産消費形態を確保する」ことが掲げられ、その中で「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」ことが盛り込まれました。食品ロス削減の必要性は、国際的にも重視されつつあり、持続可能な社会を支えます。
食品ロスの削減に関する対策には、食料の生産から製造、販売、日々の買物から調理、食事、後片付けなど、さまざまな場面での活動が関わってきます。このため、業界や地域の実情、人々の日々の暮らしに応じて、関係者が連携して取り組んでいくことが重要です。事業者、消費者、自治体、関係団体、国など、取組を行う多様な主体が、お互いの取組の理解を深め、食品ロス削減のためにできることを増やしていくことが望まれます。
特に若い世代では、食品ロスの問題について活発な活動が行われており、鎌倉市の小学生4年生の児童たちは、社会科の授業でごみとして廃棄される食品の多さを知ったことをきっかけに、まずはできることから行動しようと、給食の残食量を減らすために、「君が動けば世界が変わる」という手書きポスターや新聞を作成し、給食の残食量を1/3程度減らしたり、街頭で地域の大人たちに日本の食品ロス問題や飢餓に苦しむ世界の子どもたちの現状とあわせて食品ロスの重要性を呼び掛けたり、という活動に取り組みました。
また、今年の1〜2月に報道が集中した「恵方巻き」については、恵方巻きによる食品ロスをなくしたいという思いをもった大学生が、消費者の声を集めるキャンペーンを実施しました。自らネットで呼びかけ、630件の署名を集め、食品ロス防止に取り組む小売業者の方への理解や応援の声、ロスを望まない声などをとりまとめ、当庁にも報告してくれました。
食品ロスをめぐる社会問題を、自らの問題としてとらえ、自ら実践し、自ら発信する、そうした取組の背景には、限りある資源であり、人々の健康や楽しみに欠かせない食品を大切にしたいという思いがうかがえます。
令和元年5月31日には「食品ロスの削減の推進に関する法律」が公布されました。
法では、食品ロスの削減に関する理解と関心を深めるため、10月を食品ロス削減月間とし、特に10月30日を食品ロス削減の日としています。また国は、食品ロス削減に関する基本方針を策定し、都道府県・市町村は、基本方針を踏まえ、食品ロス削減推進計画を定めるよう努めることとしています。
食品ロスの削減に向けて、消費者・行政・事業者といった多様な主体が相互に連携しながら取組を進めることが重要です。
多様な主体が連携し、国民運動として食品ロスの削減を推進するため、本法を制定する旨を宣言
まだ食べることができる食品が廃棄されないようにするための社会的な取組
国・地方公共団体・事業者の責務、消費者の役割、関係者相互の連携協力
食品リサイクル法等に基づく食品廃棄物の発生抑制等に関する施策の実施に当たっては、この法律の趣旨・内容を踏まえ、食品ロスの削減を適切に推進
食品ロスの削減に関する理解と関心を深めるため、食品ロス削減月間(10月)を設ける
内閣府に、関係大臣及び有識者を構成員とし、基本方針の案の作成等を行う食品ロス削減推進会議(会長:内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全))を設置
施行期日:公布日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日
※令和元年7月1日より食品ロスに関する業務は消費者庁消費者教育推進課へ移管されました。