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今月の話題

老後の資産を守る! 手口を知って防ぐ悪質商法の被害

高齢者の相談件数の推移

 平成30年度に東京都内の消費生活センターに寄せられた高齢者からの相談件数は、5万6千件を超え、全体の相談件数の約4割を占めています。
 つい「私は大丈夫」と考えてしまいがちですが、悪質事業者は言葉巧みに高齢者の不安をあおり、大切な財産をだまし取ろうと狙っています。今回は、そんな被害に遭わないために、悪質事業者が使う「手口」とその対処法などを紹介します。

高齢者の相談件数の推移

高齢者の被害の特徴

 高齢者には「お金」「健康」「孤独」の3つの不安があると言われており、悪質事業者は、高齢者の不安に付け込んで勧誘してきます。

高齢者の被害の特徴

  • 昼間、家にいることが多く悪質な訪問販売などの被害に遭いやすい。
  • 健康や家の耐久性など、日頃の不安に付け込まれやすい。
  • 誰とも相談せずに契約し、だまされたことに気づきにくい。
  • 認知症など判断能力が低下した高齢者が被害に遭いやすい。
  • 被害に気づいても、自分にも責任があると感じて人に相談できない。
  • 一度被害に遭うと、その後も狙われ二次被害に遭いやすい。

 悪質商法の被害に遭わないためには、その「手口」を知ることが重要です。以下では、高齢者が巻き込まれやすい悪質商法の事例をいくつかご紹介します。

悪質商法の事例紹介

事例1 点検商法

 突然リフォーム業者が訪ねてきて「近くで工事をしていたら、お宅の屋根瓦がずれているのが見えた。今なら無料で点検しますよ」と言われた。以前から家の老朽化が心配だったので、無料ならと思い点検を頼んだ。点検後に業者から「屋根裏にひどい雨漏りがある。すぐにでも修理しないと大変なことになる」と言われた。不安になり業者に言われるまま補修工事を契約してしまったが、よく考えると高額のため解約したい。

対処法 無料点検を口実に訪問し「このままだと大変なことになる」などと事実と異なることを言って消費者を不安にさせ、契約させる手口を「点検商法」といいます。事例のように事業者に不安をあおられても、その場で契約せず、本当に工事が必要か家族や身近な人に相談したり、複数の事業者から見積りを取るなど、慎重に検討しましょう。
 また、点検商法は、「特定商取引法(※)」の対象となる取引のため、契約書面を受領した日から8日以内であれば、クーリング・オフができます。

※特定商取引に関する法律

事例2 原野商法の二次被害

 不動産会社から「あなたが他県に所有する土地を購入したい」という電話があった。来訪してもらうと「あなたの土地を700万円で買いたいと言っている人がいる。ただし、登記の手続き費用として50万円を用意してほしい」と言われた。翌日、自宅で書類にサインをして、権利証と現金50万円を事業者に渡した。その後、業者と連絡が取れなくなったので不安になり、契約書を確認すると、所有していた土地を700万円で売り、別の原野の土地を750万円で買っていることになっていた。

対処法 「原野商法」とは、値上がりする見込みがほとんどない山林などを将来値上がりするかのように偽って販売する手口を言います。過去にこの被害にあった人に対して「あなたの土地を購入したい」、「買い取りたいという人がいる」などと嘘の説明で勧誘し、別の原野を購入させるなどの「二次被害」が発生しています。
 事業者は、原野の購入者名簿や登記簿を基に、山林や別荘地を持っている人を特定して狙いを定め、勧誘します。事業者の言うことをうのみにして、安易に契約してはいけません。たとえ宅地建物取引業の免許があったとしても、慎重に判断することが重要です。
 また、電話勧誘販売や訪問販売であれば契約して8日以内は、クーリング・オフが可能です。

事例3 はがきによる架空請求

 公の機関と思われるところから、「民事訴訟最終通知書」と書かれたはがきが送られてきた。はがきには、「契約不履行による訴状が提出された」とあり、このまま連絡しないでいると、原告の主張が全面的に受理されて、預金や不動産などの差し押さえを強制的に執行すると書いてある。「訴訟取り下げ最終期日」が記載されており、それまでに本人から連絡するようにと、問い合わせ先の電話番号が書かれていた。身に覚えがないがどうしたらよいか。

対処法 事例のようなはがきは、「訴訟」や「財産の差押え」などという言葉で消費者を不安にさせて、金銭をだまし取ることが目的です。慌てて電話をかけると、金銭を支払うように求められます。裁判所が、はがきで電話するよう求めたりすることはありません。身に覚えのない訴訟案件に関するはがきを受け取った場合、記載されている電話番号には絶対に電話しないでください。事例のような架空請求は一切相手をせず、無視しましょう。

事例4 悪質な訪問購入押し買い)

 自宅に知らない出張買取業者から電話があり、「不用品を買い取ります」と言われた。使わなくなった布団などを処分したいと思っていたので、買取を依頼した。しかし、実際に訪れた買取業者は「布団なんかお金にならない。貴金属はないのか」と強く迫ってきた。怖くなり、売るつもりがなかった指輪やネックレスを渡し、お金を受け取ってしまったが、思い出の品だったので取り戻すことはできないか。

対処法 事例のように、不用品の買取などをきっかけに訪問し、貴金属などを安く買い取る悪質な訪問購入(押し買い)が問題となっています。
 訪問購入は、特定商取引法により、契約書面を受領した日から8日以内であればクーリング・オフができます。また「飛び込み勧誘」を行うことを禁止しているので、 事業者は消費者の同意を得てから訪問しなければなりません。さらに、消費者が電話で依頼したことが「布団の買取」「見積りの依頼」などであるにもかかわらず、それとは違う「貴金属の買取」の勧誘をすることも禁止されています。頼んでいないものの買取を切り出されたときは、きっぱり断りましょう。

まとめ

 最近の悪質商法は、手口がより巧妙・悪質になっていて、誰もがだまされる危険があります。 なかには、認知症など判断能力の低下した高齢者に、契約内容をよく理解させないまま契約をさせるといった、極めて悪質な被害も見られます。このような場合には、高齢者ご本人が、被害にあったことに気づかなかったり、被害にあったことを他人に相談するのが恥ずかしいと思って誰にも相談できず、消費者被害が表に現れにくい傾向があります。
 そのため、高齢者の消費者被害の未然・拡大防止には、家族や地域の方々、ホームヘルパーなど周囲の人々の見守りと気づきが重要になります。
 トラブルに遭ったとき、また、高齢者の身近にいる方々が少しでも疑問を感じたら、被害が大きくなる前に、早めに最寄りの消費生活センターにご相談ください。
消費者ホットライン 電話188】

クーリング・オフ制度について

 クーリング・オフとは、訪問販売など特定の取引の場合に、一定期間内であれば、無条件で契約を解除できる制度です。

はがきの記入例(訪問販売の場合)
クーリング・オフ制度の手順
1 契約書面を受け取った日を含めて8日以内(例外もあります)に、書面で通知します。
2 はがきに書いて、両面をコピーします。コピーは大切に保管してください。
3 はがきは郵便局の窓口から「特定記録郵便」か「簡易書留」で送ります。
4 支払ったお金は、全額返金されます。商品の引き取り料金は業者負担です。
はがきの記入例(訪問販売の場合)

 クーリング・オフができる場合や期間など詳しくは消費生活センターにお問い合わせください。また、クーリング・オフできる期間が過ぎていても、解約できる場合があります。あきらめずにご相談ください。