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今月の話題

旅行の前に知っておきたい契約」のポイント
~4つのQ&Aで事前にチェック!~

一般社団法人 日本旅行業協会 消費者相談室
相談員 曽田( そだ ) 五夫( いつお )

新型コロナウイルス感染症の発生で社会経済活動がストップし、友だちと会ったり外に出かけたりする機会が制限されていました。それから3年あまり。ようやく社会が動き出しています。

旅の予約方法は様変わりしました。パソコンやスマートフォンの普及により、いつでもどこからでも旅を選んで予約することが可能になりました。

今回の記事では、夏休みの旅行計画を立てる前に知っておきたい旅行契約のポイントを整理しました。トラブルにならないように、旅行に出かける前にぜひご一読ください。

旅行会社を選ぶ

Q1ネットで旅行プランの最安値を調べていたら、お値打ち商品を見つけました。旅行会社を選ぶポイントはなんでしょうか?

A1旅行会社の店舗が減っているなか、ネットで検索して旅行を予約しようとする方も増えています。

日本の旅行会社は旅行業法に基づき、観光庁長官や都道府県知事の登録を受けており、旅行業約款(用語①)に基づいて旅行者と契約を交わします。旅行募集広告やパンフレットでは旅行会社名の近くに登録番号が記されています。

万一、日本の旅行会社が倒産した場合などは、「弁済業務保証金制度」や「営業保証金制度」から弁済(一部から全部)を受けることができます。

日本には日本旅行業協会(用語②)と全国旅行業協会(用語③)の2つの協会があり、旅行契約上でトラブルが発生した場合「旅行者からの相談」を受けてくれます。

注意したいのは海外の旅行会社と契約するとき。トラブルが起こっても日本の法律が適用されません。旅行の予約をするときは、「どこの旅行会社に予約しようとしているのか」を調べてください。また、サイトはパッケージツアー(ツアー)名で表示されることがあるので、会社名や会社情報を確認することもポイントです。

ポイント

旅行会社名や登録番号などを確認しましょう

ツアーを募集する場合の企画・実施会社名 ツアーを企画・実施している旅行会社の登録番号 所属する旅行業協会名

旅行契約の種類と特徴

Q2ツアーに申し込むのと航空券やホテルだけの予約に、なにか違いはありますか?

A2ツアーは旅行契約で、さまざまな補償などがあります。航空券やホテルだけの予約は旅行契約とそうでないものがあり、補償やキャンセルなどに統一的なルールはありませんので注意が必要です。

旅行契約には、大きく分けて3つの契約があります。

募集型企画旅行契約

一般にツアーと呼ばれる旅行です。旅行会社があらかじめ旅行計画を作成し、旅行代金を決めて、不特定多数のお客様に対して、広告や旅行会社パンフレット、ネット上などで広く募集するものです。この旅行契約では、旅行会社が、旅程管理(用語④)・旅程保証(用語⑤)・特別補償(用語⑥)の3つの責任を負います。

受注型企画旅行契約

旅行会社が、旅行者からのオーダーにより、旅行の企画、手配、そして価格を設定する旅行契約です。例えば、修学旅行や職場の団体旅行、町内会の親睦旅行などがあたります。この旅行契約でも、旅行会社が、旅程管理・旅程保証・特別補償の責任を負います。

手配旅行契約

この旅行契約は、旅行会社が、旅行者からの依頼を受けて、旅行者のための交通機関や宿泊などの旅行サービスの手配を行うものです。航空券や鉄道切符、ホテルなど宿泊施設や旅行先でのオプショナルツアーの予約をする場合などがあります。この旅行契約では、旅行会社は、善良な管理者の注意をもって手配をすれば、その責務は完了したとみなされます。

また、旅行者個人が「交通機関や宿泊施設に直接予約するもの」は、「旅行契約」ではありません。ネットで「地名 旅館」などと検索し、出てきた旅館の公式サイトで直接契約することがあります。この場合は、旅館との宿泊契約となり、旅行会社による補償などがありませんので注意が必要です。

なにかトラブルが発生した場合に解決するには、旅行者が直接、旅館と話し合うことになります。

ポイント

契約の形態によって、万一の場合に、旅行者に補償される金額に大きな違いがあるので、「自分はどことどんな契約をしているのか」をしっかりと把握すること。

契約の成立」とキャンセル料

Q3キャンセル料はいつからかかるのですか? どのように決められるのですか?

A3キャンセル料について説明する前に、「契約の成立」について解説します。

契約はどのタイミングで成立するのでしょうか。それは、「旅行会社が旅行者の旅行の申し込みについてOKを出し、申込金を受け取った時点」で、「契約が成立」することになります(ネットからの通信契約成立の場合は用語⑦を参照)。

キャンセル料が発生するのは契約成立後です。例えば、旅行会社が旅行申し込みにOKした後でも、旅行者からの入金がない場合、キャンセル料は発生しないのが原則です。

契約成立後に旅行者の都合でキャンセルする場合、キャンセル料が発生する期間においては規定のキャンセル料がかかります。募集型企画旅行や受注型企画旅行では、旅行業約款でキャンセル料が定められており、おおむね20~100%のキャンセル料が発生します。

手配旅行では交通機関や宿泊施設が決めた0~100%のキャンセル料と旅行会社が定めた「旅行業務取扱料金」や「取消手続料金(用語⑧)」が発生します。

契約するときに、キャンセルした場合の規定を確認しておかないと、万一のときに問題になってしまうことがあります。キャンセル規定を含め、旅行契約するときに確認すべき事項が、それぞれの旅行パンフレットの「旅行条件書」などに定められているので必ず内容を確認しましょう。

格安航空券を予約する旅行会社の予約サイトなどでは、国内航空券といえどもキャンセル規定の厳しい商品が多くあるので、クレジット決済をする前にキャンセル規定を見ておくことが大切です。

ポイント

旅行代金を払う前にキャンセル規定を一読し、疑問点がある場合は確認すること。

ネット契約のトラブル

Q4予約中に画面がフリーズしたので、もう一度やり直してようやく予約完了したところ、二重予約になっていました。

A4ネット予約で一番多い相談に、二重予約(用語⑨)があります。

これは旅行者のネット動作環境に原因があることが多く、予約手続きを完了した覚えがないので、改めて予約しても重複にはならないはずだ、という思い込みが引き起こすトラブルです。

きちんと予約できたか、確認しましょう。

ポイント

多くの旅行会社のサイトでは、予約がいったん完了すると「完了メール」が送信されたり、登録しているマイページなどに予約完了の表示がされたりします。画面がフリーズした場合は、これらを確認することで二重予約を回避できます。

以上のポイントに注意して、さあ!久しぶりの旅行に出発しましょう。

用語

①旅行業約款

旅行契約をする際に、旅行会社の責務やキャンセル規定などの旅行に関する条件を定めたもの。通常、日本の旅行会社は、観光庁長官及び消費者庁長官が定めて公示している「標準旅行業約款」、または個別に観光庁長官の認可を受けた「個別認可約款」の契約条件に従っている。標準旅行業約款は、「募集型企画旅行契約」「受注型企画旅行契約」「手配旅行契約」など5つの部から構成されている。

②日本旅行業協会(JATA)

海外・国内旅行ともに企画・実施可能な会社が多く加入。募集広告にはJATAマークやJATA正会員と記載される。加入会社約1100社。

③全国旅行業協会(ANTA)

国内旅行の企画・実施ができる会社が多く加入。募集広告にはANTA正会員と記載される。加入会社約5000社。

④旅程管理

旅行者の行程を円滑に実施し、またトラブルが生じたときに「原状復帰」させる努力義務。

⑤旅程保証

交通機関や宿泊施設によるオーバーブックが生じたとき、一定の金額を変更補償金として支払う制度。

⑥特別補償

病気ではなく「おもに怪我」で損害を被ったときや旅行中の携行品の被害に対して一定の補償金や見舞金が支払われる制度。

⑦ネットからの通信契約

旅行会社のサイトから予約する契約で、おもにクレジットカード決済で行うもの。契約は、旅行会社からの承諾通知が旅行者に(旅行者が登録しているサーバーに)届いた時に成立。

⑧取消手続料金

旅行会社が「旅行業務取扱料金表」のなかで定めている事務手数料で、航空券などの予約を取り消すときに旅行者に請求する料金。

⑨二重予約

例えば、同じ個人の予約が、航空会社の同一便のなかに2つ存在すること。多くの場合はそのままの状態で、旅行出発当日まで続き、結果、旅行が終了してから2人分の請求が発生する。航空会社によっては「怪しい記録」と認識され、予約が2つともキャンセルされることがある。

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