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トップページ > 若者 > サッと読める ちょっとお耳に入れたい話 > 寝ながらスマホで時差ボケに?! ~スッと寝て、キリッと起きるために~

更新日:2019年4月12日

寝ながらスマホで時差ボケに?! ~スッと寝て、キリッと起きるために~
第1回  理屈を知って上手に眠ろう

  執筆: 東京ベイ・浦安市川医療センター CEO 神山 潤 氏

目覚まし

 みなさんはスッと眠り、キリッと起きることができていますか。
中には、「布団に入ってもスマホをずっといじってしまって、気づいたらこんな時間に…。おかげで勉強や仕事中にとても眠くなる…」という方もいるかもしれません。
今回は医学的な視点から、夜更かしや寝不足が私たちの体に及ぼす影響と、上手に眠るための方法を解説します。

 

寝ながらスマホで時差ボケに?!

ヒトは朝起きて、昼間に活動し、夜に眠る昼行性の動物です。体温は朝が一番低く、午後から夕方に高くなります。また成長ホルモンは夜寝入って最初の深い眠りの時に多く分泌されます。眠気をもたらす働きのあるメラトニンというホルモンは、朝目が覚めてから14~16時間して、夜暗くなると分泌されます。このように、おおよそ1日の周期で変化するヒトの生理現象の周期(リズム)は脳内の視交叉上核(しこうさじょうかく)という場所にある生体時計がコントロールしています。

入眠

  

ただこの生体時計の周期は大多数の方で地球の1日である24時間(地球時間)よりも長いため、毎日その周期を短くして、地球時間と合わせる作業(リセット)が必要です。この作業がなされないと、生体時計と地球時間のズレが生じ、時差ボケのような体調不良(作業能率・意欲・食欲の低下、疲労感増大、不眠、眠気、活動量低下等)に陥ります。

生体時計

  
そして生体時計のリセットに何よりも大切な刺激が朝の光です。大多数のヒトは朝の光を浴びることで、24時間より長い生体時計の周期を短縮し、地球の周期に合わせています。一方で、夜の光は生体時計の周期を伸ばし、もともとある生体時計と地球時間とのズレをいっそう拡大させてしまいます。
もちろん夜の光にはコンビニの光、テレビやスマホを始めとする各種ディスプレイやスクリーンからの光も含まれます。そのため、布団に入ってもずっとスマホをいじっていると、時差ボケのような体調不良をおこす原因になるので注意が必要です。

寝ながらスマホ 

 

  夜の光は眠りの敵

成長ホルモンは名前からすると成長過程にある子供にだけ重要なホルモンと考えられがちですが、このホルモンには抗加齢作用があります。確かに分泌のピークは思春期ですが、成人にも大切なホルモンなのです。そしてこのホルモンには分泌が高まる時間帯があると誤解されていますが、成長ホルモンの分泌には時刻依存性(何時になったら分泌される)は少なく、寝入ってから最初の深い眠りに際して多量に分泌されるということがわかっています。
眠気をもたらし、酸素の毒性から細胞を守る抗酸化作用を有するメラトニンは、先ほど紹介したように朝目が覚めてから14~16時間して夜暗くなると分泌されますが、夜でも明るいと分泌は抑制されます。その結果、体調の維持に支障が生じる恐れもあります。

眠りに大切なのは朝の光を浴びることで、夜の光は眠りの敵です。上手に眠るためには、寝る前のスマホなど、夜に光を浴びることは避けた方が良いでしょう。

目覚め

第2回は、寝ないことで体にどんな影響があるのかを解説します!  

第2回 寝ない自慢の行く末は?

 執筆: 東京ベイ・浦安市川医療センター CEO 神山 潤 氏

寝ない自慢

周りに勉強や仕事で寝ていないことを自慢している人はいませんか。また眠くても気合いと根性で乗り切るのが素晴らしいことだと思っていませんか。
でも、みなさんは「寝ないと太る。」ということをご存じでしょうか。
肥満度を測るための国際的な指標であるBMI (body mass index(体格指数)のことで、体重(kg)を身長(m)の2乗で除して得ます。)と睡眠時間の関係を調査した
研究による と、睡眠時間が7~8時間のグループが一番BMIが低くなり、それより睡眠時間が少ないグループでも多いグループでも、BMIは増加することが分かりました。
集団としてみると睡眠時間が少ないとBMIは増加するわけで、「寝ないと太る」と言えます。

体重 

どうして「寝ないと太る」のでしょうか。睡眠時間が少ないとレプチンという食欲を落とす働きのある物質が減ってグレリンという食欲を高める作用のある物質が増えるから、という有力な説があります。
さらに前頭前野という脳の前の方にある部位との関連も最近指摘されています。前頭前野は思考や創造性を担い、衝動を抑制してヒトをヒトたらしめている脳の最高中枢です。
ただし、命に直接関係する呼吸や循環の働きには関わりません。だから寝不足になると命に直接の関係がない前頭前野への血の巡りが悪くなり、前頭前野の働きは低下します。
すると正しい判断ができなくなり、衝動を抑えられなくなり、食欲が抑えられなくなり、食べてしまって太るという理屈です。
なお寝不足で前頭前野の働きが低下するとガマンもできなくなり、衝動的になりがちです。寝不足になるといらいらしがち、というご経験は多くの方がお持ちでしょう。注意したいものです。

食欲旺盛

 

なお心を穏やかにする作用が知られている神経伝達物質のセロトニンは、その働きが低下すると精神的に不安定となり、気分が滅入り、攻撃性や衝動性が高まり、社会性が低下します。
セロトニンの働きは前回その大切さを強調した「朝の光」を浴びたり、リズミカルな筋肉運動(歩行、咀しゃく、深呼吸)をすることで高まります。
十分な眠りを取れていないで活動意欲が低下していると、リズミカルな筋肉運動を行うことができずに、セロトニン低下の状態に陥ることが心配です。
心穏やかにすごすためにも、テレビやスマホによる夜更かしなどセロトニンが低下しやすい生活は避け、「朝の光」をあびて適度な運動を心がけると良いでしょう。
 

歩いたり、よく噛んだり

 

 第3回では、あなたにあった適切な睡眠時間の考え方を解説します。


第3回 No sleep,No happiness

 執筆: 東京ベイ・浦安市川医療センター CEO 神山 潤 氏

nosleepnohappiness

 

睡眠時間とBMIの間には、「寝ないと太る」関係があることを前回紹介しましたが、この関係を知ってあなたはどうしようと思われますか?
様々なことを考えていただいて結構なのですが、調査結果で一番BMIが低かったから、自分も7~8時間寝よう、とだけは考えないでください。

 

適切な睡眠時間

なぜか。それはあなたにとって最適な睡眠時間に関する情報はこのデータからは抽出する事は出来ないからです。7~8時間寝ている方に肥満の方はいないのだろうか?6時間睡眠、あるいは9時間睡眠のかたは皆肥満なのでしょうか?そうではないでしょう。このデータを見て、7~8時間寝ようとするのは、ご自身の特性は無視して、あなた自身の身体の状態をデータに委ね、無視してしまう結果になる危険があるのです。

 

つまり大切なことはあなた自身にとって適切な睡眠時間を知ることです。誰かに決めてもらうのではなく、あなた自身がご自身の身体の声に耳を傾け、考えて、適切な睡眠時間を知ることが大切です。ではあなたにとって適切な睡眠時間はどのようにして決めることが出来るのでしょうか?実は適切な睡眠時間を決める方法論は未だ確立してはいないのですが、ヒントとしては、ヒトは日に2回眠くなる、ということです。午前4時と午後2時がピークで、午前も午後も2~6時の間にはヒトは生理的な眠気に襲われます。様々な事故、作業ミスもこの時間帯に多く発生します。

2時~6時

ただ、どうしてこの時間帯に眠くなるのかについてはよく分かっていません。昼食のために眠くなる、と考える方が多いかもしれませんが、食事を全くとらなくても、2時間ごとに食事を与えても、昼食をとらなくとも、午前も午後も2~6時の間にはヒトは眠くなるのです。逆にいえば、ヒトという昼行性の動物は午前10~12時には覚醒度がもっとも高い、ともいえます。つまり午前中に眠くならずにしっかりと活動ができていれば、その方の基本的な眠りの量、質、生活リズムに大きな問題はないと考えていいだろう、と私は思っています。

午前10時~12時

 

この連載の最後に、ある学生さんのレポートを紹介します。
「私の父はサラリーマンだった頃はずっと仕事のことばかりを考えていていつも家にいなくて、たまに顔を合わせてもイライラしていました。
ですが、思い切ってサラリーマンを辞めて、自分の好きな仕事にして、好きなように働くようになってから、とてもイキイキしたように思います。イライラからイキイキへ、No sleep, no happiness.」寝ないと幸せはやってこない。

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