わたしは消費者 教員向け消費者教育情報提供誌・Web版

文字サイズ変更

トピック
教員とともに考える消費者教育
東京都公民科・社会科教育研究会と東京都消費生活総合センターとの連携
平成28年度 すぐに役立つ「教員のための消費者教育講座」実施報告
146号PDFファイル(934 KB)
ページ1

平成28年度

すぐに役立つ「教員のための消費者教育講座」実施報告

東京都消費生活総合センター活動推進課

1.開催概要

東京都消費生活総合センターでは、毎年度、小・中・高等学校、特別支援学校の教職員を対象とした「教員のための消費者教育講座」を開催しています。今年度も7月22日から8月22日の期間に、16テーマを飯田橋・立川等の会場で31講座実施しました。例年人気の高い衣・食・住の講座の他に、教員の皆さまから「授業に取り込むことが難しい」という声の多かった法律の講座の充実を図りました。

台風襲来というアクシデントに見舞われた日もありましたが、延べ1,257名に受講していただきました。

No 分野 講座テーマ 受講者数
概論 学校における消費者教育の意義と実践法 66
消費者教育 カート君の買い物★なびげ〜しょん
―「消費者の権利と責任」の社会―
59
法律 リーガル☆レッスン♪
〜民法と契約の基礎を学ぶ〜
109
法教育 学校での法教育
〜若者に多いトラブルを題材に〜
75
契約 東京都に寄せられる最新の相談事例と生徒に
伝えたいポイント
59
情報 情報リテラシー最前線 78
環境 持続可能な社会の担い手を育むESDと
消費者教育
58
洗濯用洗剤から考える環境の授業 92
服育で衣服の力を生きる力へ
〜環境と着こなしの観点から〜
126
10 食・環境 身近なものと世界のつながり 75
11 生徒に伝えたい食品表示法と食品との
付き合い方
120
12 家の中の安全を考えよう 150
13 金融 ライフプランの立て方・教え方 70
14 実験電気 IHクッキングヒーターの仕組み
〜火を使わないから安全!?〜
46
15 実験繊維 プレタポルテ(高級既製服)の縫製技術
ー婦人ジャケットを例にー
54
16 ものづくり マイ箸を作ってみよう
〜ものづくりを通した消費者教育〜
20
受講者内訳
  • 学校別

小学校3% 中学校37% 高等学校32% 中高一貫校12% 特別支援学校10% その他6%

  • 担当教科別

(技術)家庭科75% 社会科4% その他(情報・養護・栄養科など)21%

2.受講された先生方の感想

今年度の講座を受講されたお二人の先生から御感想をお寄せいただきました。

No. 6
情報リテラシー最前線
講師:
トレンドマイクロ株式会社
マーケティングコミュニケーション本部
シニアスペシャリスト 森本 純 氏
講座の概要

インターネットの普及とともに、インターネット特有の匿名性、情報の拡散を利用した悪質なトラブル事例は後を絶ちません。インターネットを上手に活用するために求められる情報リテラシーを考えます。

情報セキュリティの担い手として、最新のインターネット脅威情報やトラブル事例の分析をもとに、「サイバー攻撃者の狙いはどこにあるか」を解説していただきます。新たな手口にも対応し、子供たちをトラブルから守る対策の「考え方のヒント」を小学生、中学生、高校生と成長段階に応じ、先生方と一緒に考えていく講座です。

(事務局)

生徒を被害者にも加害者にもしないために
墨田区立吾嬬第二中学校 副校長 西川 由哲 氏

私はここ数年、食育やインターネット・SNSに関する内容を中心に、本センターの講座を受講しています。実は、私自身が数学科で消費者教育についてあまり知らないこと、教諭の時に指導したことがないからです。また、教育行政も学校も取組が弱いのではないかと思うこと、熱心な社会科や家庭科の先生のいる間だけの取組であり、全校の継続的な組織的な取組になっている学校は少ないのでないかと思っているからです。さらに、本校は東京都の人権尊重教育推進校です。人権という視点から、消費者教育は大切であり、全ての学校で推進・充実させていかなければならないと考えています。

消費者教育の中でも、特に情報リテラシーを生徒に身に付けさせることは、学校が中心となり、企業の協力を得、家庭と連携して行う喫緊の課題であると考えています。現在、ほとんどの公立中で校内のケータイ、スマホ、ゲーム機等の持ち込みを禁止しています。しかし、校外でも禁止することは現実的ではありません。きちんと指導し、適切な使い方を身に付けさせ、生徒を被害者にも加害者にもさせないことは重要なことです。

昨年度、墨田区立中学校全10校で生徒会が中心となり、各学校のインターネット・SNS使用ルールを作り自分たちで律していこうという取組をしました。そして全校の代表が協力し、墨田区立中学校インターネット・SNS使用ルール宣言を行いました。今年度は、その検証と見直しをしているところです。

本講座を受講して得たことは、単に「気を付けましょう」ではなく、どのように気を付けたらよいのか。また、気を付けていてもトラブルに巻き込まれたり、だまされたりして被害に遭ったりした時どう対処したらよいのか、未然防止や被害を小さくするための手立てです。具体的でかつ一般にも通用するものの考え方のヒントを得ることができました。

今は、ある方法で守れても、1年後にその方法が有効かどうか分かりません。本講座での考え方の基本を生かし、教員に伝達し、生徒の情報リテラシー向上のために役立てていきたいと思います。

No. 9
服育で衣服の力を生きる力へ
〜環境と着こなしの観点から〜
講師:
株式会社チクマ 服育net研究所
主任研究員 有吉 直美 氏
講座の概要

衣食住の一つである衣服について、さまざまな観点から考える講座です。

一つ目は、環境問題の観点から、原材料の生産、製品化、着用、廃棄やリサイクルといった衣服のライフサイクルを通して環境負荷などを考えます。

二つ目は、衣服のもつコミュニケーション力と役割についてです。自分の着こなしが、他者にどのような印象を与えているのか、またTPOに適した着こなしがなぜ大切であるのかを知ることで、自己表現のあり方を見つめ直すことができます。そして、衣服には健康面や生活の中での安全確保の役割もあるということです。

「服育」について、授業のヒントが詰まった講座です。

(事務局)

衣服の社会生活上のはたらきと着こなし
杉並区立井草中学校 主幹教諭 本田 鈴代 氏

日頃から、実生活に結び付いていることで生徒の興味を引き出し、すぐに生活に活用できる授業を心がけていますが、中学家庭科「衣生活」の領域において、「日常着の活用−自分らしく目的に合わせた着方」の教材については毎年苦慮していました。服装やおしゃれに興味がある生徒は、まだクラスに数名だけ。学習活動自体は楽しめても、自分のこととしてしっくり捉えさせている手応えはありませんでした。そこで今年度出会った研修が当講座。講座案内を見ただけで、引き付けられました。

衣服には、①保健衛生上のはたらき、②生活活動上のはたらき、③社会生活上のはたらきの3つがありますが、①②は小学校で学習し、職業や所属、気持ちや個性を表す③は中学校で登場します。思春期のとかく自己の世界観を主張しがちな中学生に、他者視点や社会との関わりにおける着こなしや服装の選択、公私の区別や個性はどんな場面で表すのかを考える力をつけさせたいと思っています。

ちょうど2学期から2年生の授業が「衣生活」に入るので、当講座でいただいたワークシートを早速使わせていただきました。ワークシートから学習できるデザインによるイメージの違いは大変効果的で、自分が着用したことがなくても、いろいろな場面で大人が着用している服装を思い起こしながら学習活動を進めることができました。「色のイメージ」とも組み合わせて、学校の制服はどのイメージに当てはまるのか、どんな目的や効果があるのかを考える機会にもなります。これまでの色の組合せだけでなくデザインが加わったことで、よりTPOと結び付けやすくなりました。このようなスキル(着こなしの基礎知識、基本のテクニック)があることを、生徒達はとても興味深く捉え、社会のマナーや礼儀として身に付けていくことの必要性を感じてくれたようです。また、個性はどのようにして表すのか。講座で学んだ「SENSEとSKILL」(すなわち「感覚、人による違い」と「着こなしの基礎知識、基本のテクニック」)、「ONとOFFの時間」(すなわち「仕事や勉強、みんなの時間」と「自由、リラックス、自分の時間」)をキーワードにし、学習活動を進めました。今後は、「制服の一生すごろく」(注)による環境にからめた授業を計画しています。

(注)
「制服の一生すごろく」は服育net 研究所(http://www.fukuiku.net/ )が作成した教材です。
制服の一生(原材料→縫製→着用→リサイクル→廃棄まで)の環境負荷について、特に温暖化の原因とされているCO2の排出量を見える化したすごろくです。