わたしは消費者 教員向け消費者教育情報提供誌・Web版
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消費者教育教員ネットワーク懇談会の実施内容の紹介

東京都消費生活総合センター活動推進課

東京都消費生活総合センターでは、消費者教育を推進していく上で、これまでも教員の方々との連携を重視しながら教材を制作してまいりました。今後はさらに多くの教員の方々から継続的に要望や助言をいただくとともに、学校の授業で消費者教育を進めるうえで、教員の方々がどのような支援を必要としているかを伺うなど、双方向の連携を図ることが重要です。このため、昨年度初めての試みとして「消費者教育教員ネットワーク懇談会」(以下、「懇談会」という)を、去る平成28年3月23日に実施しました。

参加者は、これまで当センター事業に継続して協力いただいている教員の方々をはじめ、昨年の夏休みに実施した「教員のための消費者教育講座」参加者のうち、「当センター事業に協力いただける」とアンケートで回答された方々です。今回の参加者は、小学校、中学校、高等学校の教員、大学関係者の16名でした。

懇談会の内容について紹介します。

1.懇談会の概要

テーマ:
「消費者市民社会と学校における消費者教育の実施について」
日 時:
平成28年3月23日 午後3時から5時まで
場 所:
東京都消費生活総合センター内会議室
内 容:
(1)
消費者教育推進会議の動向について

消費者庁 消費者教育推進会議(第1期及び第2期)委員
東京学芸大学教授 大竹美登利氏

(2)
教育現場での取組について

第1期消費者教育推進会議委員
青梅市適応指導教室長 小谷野茂美氏

(3)
当センター作成の教材紹介
(4)
意見交換会
(1)
消費者教育推進会議の動向について:大竹美登利氏

平成24年12月に消費者教育推進法が制定されて以降、消費者教育推進会議が設置されました。

第1期は、第1回会議(平成25年3月6日)から第9回会議(平成27年2月23日)までで、第2期は、第10回会議(平成27年7月9日)から現在も継続中です。

第1期消費者教育推進会議のポイントは、次の3点です。

(ⅰ)
消費者教育推進法で、「消費者教育」の定義と「消費者市民社会」の概念が明示されたことを踏まえて、消費者教育を推進するために消費者教育の担い手の育成を目指す。
(ⅱ)
国民生活センターを核として、地域の消費生活センターを支援しながら、消費者教育の推進を目指す。
(ⅲ)
あらゆる世代で消費者教育を推進するためには、長い人生のライフステージで、さまざまな機会をとらえては消費者教育を学んでいくことができるようにする。

第2期消費者教育推進会議では、「消費者教育の核となる学校教育」がテーマとなっています。第12回会議(平成27年12月9日)で検討した「学校における消費者教育の充実に向けて(案)」について、抜粋して説明します。

  • 第2期では、学校教育をテーマとした。広く国民全員に消費者教育を伝えるためには、学校における消費者教育を充実させることが必要。小・中学校で消費者教育を受けた世代が消費者問題対応力のある社会人や高齢者になると期待される。学校での消費者教育を継続すれば全国民に浸透すると思われる。
  • 学校教育で消費者教育を取り組んでいくには、一人ひとりの教員が消費者教育を担当できる指導力を持つ必要がある。そのための教育・研修が重要となる。

なお、消費者教育推進会議では、教員が個別に消費者教育に対応するのではなく、学校としての消費者教育の方針やカリキュラムの作成といった「学校全体で取り組むこと」が重要と述べました。環境教育、金融教育などは、すでに学校全体で取り組んでいますが、今後は、消費者教育も学校全体で取り組めるよう進めていきたいと考えています。

(参考資料:学校における消費者教育の充実に向けて〈案〉平成27年12月14日消費者教育推進会議)

(2)
教育現場での取組について:小谷野茂美氏

消費者市民社会では「私も社会の一員として何ができるのか」を考えることとなります。「いつも守られている、教えられている」というだけでは、消費者市民社会の意識は根付いていきません。学校教育では子どもの発達に沿って段階的に指導することが大切であり、そのためには、教える側が「どのような消費者に育てたいのか」を明確に持ち、社会の一員としての自覚や責任感を育てることが重要です。さらに、教科間の連携が必要となります。消費者教育では、一つの教科のみで指導するだけでなく、消費行動の判断、公平・公正な態度等を育てるために各教科、道徳、特別活動等との連携を深め、学校としてのクロスカリキュラムをどのように構成するかがポイントとなります。 

また、新作教材「中学生向けWeb版消費者教育読本」の作成委員として携わりましたので、その教材の使い方について説明します。

今回は、さまざまな題材を幅広く取り上げたため、授業時間内に終わらせられる分量ではないかもしれません。先生方の授業展開に合わせて、どの項目をどのように使うのか、ねらいを見定めた指導の仕方を工夫して、利用していただきたいと思います。

最後に、「学校全体として消費者教育をどのように進めていくのか」を検討することは大変有意義だと思いますので、後半の意見交換会では、各学校の取組を情報共有し、ひとつでもふたつでもヒントを得る機会になるように願っています。

(3)
当センター作成の教材紹介:事務局

ア. 小学生向けWeb版消費者教育読本の改訂について

平成25年度作成の「小学生向けWeb版消費者教育読本『さあ始めよう!自分でお買い物』」は、活用いただいた先生の意見をもとに、下記の通り4点を改訂しました。

タブレットに対応するため画面表示の字を大きくしたこと。
キャベツ、ベーコンの表裏写真をA3までカラー印刷もできるように、高画質のPDFでダウンロードできるようにしたこと。
「先生のためのページ」を充実させ、ワークシート、指導者用資料(パワーポイント)をダウンロードできるようにしたこと。
ワークシートは、先生方が加工できるようにPDF版をエクセルに変更してダウンロードできるようにしたこと。

イ. 新作教材の紹介(詳細ページ、中学生向け高校生向け参照)

  • 中学生向けWeb版消費者教育読本「カートくんの買い物★なびげ〜しょん―『消費者の権利と責任』の社会―」
  • 高校生向けDVD教材「リーガル☆レッスン〜民法と契約の基礎を学ぶ〜」
(4)
意見交換会

2グループに分かれて、消費者教育を授業に取り入れる工夫や困っていることなど、自由に情報交換をしていただきました。その内容は次の通りです。

  • 教科の時間数に制限があり、消費者教育に充てる時間が足りない。消費者教育の何を取り上げるかを選別するのが難しい。
  • 高校の場合、「総合学習」の授業や学年集会の後に全体にDVDを見せたり、外部講師による特別授業としてネット関連の話、クレジットの知識や社会保障の話をしてもらったりしている。
  • 家庭科・公民科で同じ項目を扱っていても、生徒は別々にとらえてリンクできていない。消費者教育に関連する内容には、教科をまたがっていることもあるため、他の教科の教員と話し合って授業を展開する必要があると思う。
  • 家庭科はモノ作りが基本であるので、環境の授業ではポスターを作って展示したりしている。みんなに見てもらうことで、子供たちのやる気が出る。
  • 特別支援学校で、軽度の知的障害の生徒に向けた消費者教育を行う場合、抽象的な説明では難しいため、具体的に繰り返し学べる教材がよい。
  • ネット関連の授業は、家庭科ではなく学年全体の時間で行う内容と感じた。

最後に、大竹氏からは、「教科書のほかにWeb版や映像などの副教材があると子供たちはゲーム感覚で一生懸命取り組む。『教材を工夫して使う、自分の経験を共有する、積み重ねる』ことが重要」と解説がありました。

また小谷野氏からは、「これからは段階的に教科を横断して学校全体のクロスカリキュラムを実践することが求められる。また小・中・高校と学年が上がるにつれて、同じ指導内容でもその幅や深さを付加しながら、学習を積み重ねていくという取組が必要である。そこで、必ず問題になるのが『誰が率先して進めるか』である。校長時代には『学校として取り組む課題を誰が行うのか』と議論になったとき、『課題を見つけた人がリーダーですよ』と答えていた。」と説明がありました。

最後に、「ここにいる先生方は、消費者教育に熱心に取り組んでいる方ばかりであり、是非他教科の先生や学校を巻き込んで、消費者教育の推進に努めていただきたい。」と、エールを送られました。

2.まとめ

懇談会終了後のアンケートでは「他校種や同じ教科の先生方の、具体的な工夫を知ることができ、貴重な機会となった」「都作成の教材の特長や効果的な利用法を知ることができた」「講演会と意見交換会の両方があってよかった」「他教科との連携の可能性が広がった」「また参加したい」「消費者教育と法教育など、結びつけると面白いと思う」などの感想がありました。

今後も教員の方々の意見や要望をもとに、センターならではの情報提供や教材を作成することで、双方向の連携強化に努めていきたいと考えています。

既に本誌「わたしは消費者(平成27年12月号No.142)」では、誌面の都合上4名の教員の方々に、消費者教育への取組や授業例などを御執筆いただいています。今後も多くの教員の方々との連携を深めていきたいと考えていますので、当センターの事業への積極的な御参加をお待ちしています。