わたしは消費者 教員向け消費者教育情報提供誌・Web版
ページ1

平成27年度
すぐに役立つ「教員のための消費者教育講座」実施報告

東京都消費生活総合センター活動推進課

東京都消費生活総合センターでは、毎年度、小・中・高等学校、特別支援学校の教職員を対象とした「教員のための消費者教育講座」を開催しています。学校の夏休み時期に、今年度も16テーマの講座を飯田橋・立川の2会場で開催(7月22日〜8月21日)。延べ1,071名に受講していただきました。教員のニーズの高い情報関連の講座を充実させるとともに、さまざまな団体と連携し、衣・食・住など各分野の専門家によるバラエティに富んだ講座を展開しました。

講座テーマ一覧

No 分野 講座テーマ 受講者数
1 概論 実はこんな効果がある「消費者教育」 46
2 法律 若者たちを狙う悪質商法
〜SNSを悪用した出会いにご用心〜
154
3 契約 東京都に寄せられる最近の相談事例と生徒に伝えたいポイント 53
4 情報1 正しく怖がるインターネット
〜事例に学ぶ情報モラル〜
110
5 情報2 スマホ・ネットを安全に利用するために 56
6 製品安全 事故が起きたのは誰かのせい?
〜社会全体で安全に暮らすために〜
55
7 医療 生徒に伝えたい薬のはなし 48
8 社会保障 生徒たちが社会保障を正しく理解するために 90
9 衣料品のリサイクル
〜現状と新たな取り組み〜
56
10 食1 知りたい!東京の水産物
〜東京の地産地消〜
59
11 食2 チョコっと世界をのぞいてみよう!
体験ワークショップ「おいしいチョコレートの真実」
92
12 ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた街づくり 66
13 金融 Web版消費者教育読本で学ぼう
「もしも未来が見えたなら
〜いつかクレジットカードを使う日に〜」
58
14 実験食品 甘みの科学
〜砂糖の特徴と役割〜
50
15 実験繊維 服の裏側に隠されたものづくりの「技」
〜婦人ジャケットを例に〜
43
16 実験電気 電気の安全と省エネについて
〜実験で知る電気の不思議〜
35

1. 受講された先生方の感想

今年度の講座を受講いただいた3名の先生方に、受講された講座のご感想をご執筆いただきましたので、紹介します。

実はこんな効果がある「消費者教育」

担当講師 椙山女学園大学教授 東 珠実 氏
講座概要

「学校教育で消費者教育を行うのは時間がなく難しい」と考える傾向があるようですが、今までの授業に一工夫することで、問題解決能力や実践的能力といった『生きる力』を育むことにもつながります。そこで、本講座では、消費者教育の取り入れ方について、具体的な手法の紹介や、小、中、高校ごとに実践事例と学習の効果を解説しました。受講生にはグループディスカッションを体験してもらい、「自分から情報を発信する」主体的な手法が有効であることが実感できる内容としました。

(事務局)

消費者教育講座に参加して
日本大学鶴ヶ丘高等学校 國學院久我山中学高等学校 教諭

家庭科を担当しています松田(旧姓七沢)信子と申します。今回、初めて消費者教育講座に参加し、まず「概論」を学びたいと思い、標記の講座を受講しました。

当日は、グループディスカッションからスタートしました。ディスカッションの内容は、全16講座のうち、どの講座を選択したか、また既に受講した講座のうち良かったと思う講座について話し合いをしました。毎年受講している常連の方や今回、5、6講座受講した方、私のように初めての人もいました。受講者の率直な感想をお聞きすることで自分も受講したいと思う講座がたくさんありました。グループのなかで特に人気があった講座は、教材紹介のある「正しく怖がるインターネット」、「衣料品のリサイクル」などでした。話し合いが進むにつれ、会場の雰囲気も和んだところで、講座の本編へと入って行きました。

東先生の講座で特に興味を持った項目は、「消費者教育の体系イメージマップ」(参照:消費者庁の消費者教育ポータルサイト)でした。成長段階に応じた重点領域別目標(課題)の提示です。幼児期、小学生期、中学生期、高校生期、成人も若者、一般、高齢者に分類され、それぞれの段階で育みたい能力のポイントが紹介されていました。重点領域としては「消費者市民社会の構築」「商品等の安全」「生活の管理と契約」「情報とメディア」があり、成長段階ごとに具体的な教育内容が提示されていました。

消費者市民社会の構築のためには、消費者市民として経済的市民、倫理的市民、政治的市民の育成が求められているとのこと、そのような消費者市民として社会批判的に思考すること、社会参加することが大切であるという内容を学びました。

講座では、ドリップコーヒーを例に、「もしコーヒーをこす紙や布部分に穴が開いているといった不良品が入っていたら、あなたはどのような対処をしますか。メーカーに連絡しますか、黙っていますか。」という問いかけがありました。小さな問題でもそれを指摘することで社会問題や環境問題を「自分ごと」化し、解決に向け進んで実践する、その態度がいかに大切かを改めて感じました。意見を伝えることに意味があり、その自覚を高めることが他者との合意形成や協働へとつながり消費者市民社会の実現になる、そんな消費者教育を目指してライフステージに合わせた授業を展開するよう努力したいと思います。

衣料品のリサイクル

担当講師 日本環境設計(株) 専務取締役 髙尾 正樹 氏
講座概要

「環境に配慮した生活や社会貢献につなげるための行動力」を考えるきっかけとなるように、本講座では古着(綿繊維)から燃料を取り出す技術、大手企業を巻き込んだ「FUKUFUKUプロジェクト」というリサイクルシステムを確立するまでの過程をお話しいただきました。さらに、有機物(ごみ)から燃料を取り出す技術を開発した講師から、「商用化で日本を資源大国に」という今後の抱負と、「資源の提供は消費者。衣料品(資源)を提供してほしい」との、受講者へのメッセージで講座をしめくくりました。

(事務局)

この夏の「感動」の実践化
練馬区立石神井西中学校 主任教諭

家庭科を担当しています磯部祥子と申します。本講習には20年以上前から参加させて頂いております。本年度も都合の付く限り、多数の講座に参加しました。

これから紹介いたします「衣料品のリサイクル」は正直それほど大きな期待はなく、衣服?リサイクル?資源?と謳い文句はそれほど魅力的ではありませんでした。ところが講師の髙尾さんの穏やかな笑顔から発せられる軽妙な関西弁で紡がれる会社設立のストーリー・理念・現状・展望を聞けば聞くほど、ハラハラドキドキが止まらず、講話が終わった時には、思わず大きな拍手をしてしまいました。

髙尾さんがたまたま居酒屋で隣り合わせた現社長からスカウトを受け、たった2人で立ち上げた「日本環境設計」、各家庭に大量に存在する「着ない衣服」という「資源」をエネルギーに転換するという、身近なテーマを壮大なテーマに結びつけていくという講話でした。リサイクルによって地上に存在する資源を活用することで、「資源」の奪い合いから生じる世界各地の紛争を撲滅し、世界平和へと結び付けていきたいというものでした。帰宅後この感動を誰かに伝えたいという思いに駆られ、家族・職場の同僚・ママ友など、とにかく話しまくりました。しかし伝え方の拙さか、緊急性の低さか、共感は得られても「行動をともにする」までには至りませんでした。それでは、自ら実践してみようと普段なかなか手つかずの我が家の不要物を断捨離してみました。押し入れ・クローゼット・本棚、引っ越してから溜まりに溜まった「モノ」と向き合ってみました。「捨てる」という選択肢は最後にし、引取先・買取先を探し、実際に「モノ」を持参し交渉しました。

この夏の成果をやはり「授業で生徒に伝えたい」と、休み明け一番に生徒には「モノ」とのつきあい方、行動に移すことの大切さについて、私がどのように行動したかを例に挙げて話をすると目をキラキラさせながら共感してくれました。これだから先生はやめられない!

毎年本講座には得るモノが埋蔵されており、その出会いから大きな発見・気づきがあります。さしずめ本年度の収穫は本当に必要なモノを見極める目を培えたこと、モノを精選することで時間の活用が上達したことです。最後になりましたが、毎年本講座をアレンジして下さっている消費生活総合センターの方に深く感謝申し上げます。

チョコっと世界をのぞいてみよう!
体験ワークショップ「おいしいチョコレートの真実」

担当講師 認定NPO法人ACE 召田 安宏 氏
講座概要

本講座では、クイズやビデオ視聴を通して、安いチョコレートの裏側に児童労働が使われている事実を説明しました。また、児童労働の背景にある貿易問題を理解してもらうため、ガーナでのカカオ農園の経営者と労働者の生活水準、日本の製菓会社の経営者と労働者についてロールプレイや買い物カードを使ったワークショップを行いました。そして、カカオの相場変動が日本とガーナのそれぞれの家計に与える影響として、どのような相違が生じるかを体験してもらいました。その後、受講者による「私たちにできることはなにか」をテーマにグループワークを行いました。さらに「中学生が行動を起こしたことで、企業がフェアトレード製品を製造・流通するようになった」事例が紹介され、「学び」から「行動」へと変えるための手法を解説しました。

(事務局)

授業改革! 生徒の「学び」を「行動」へ
世田谷区立烏山中学校 主任教諭

社会科を担当しています末次哲侍と申します。今夏、「すぐに役立つ教員のための消費者教育講座」を受講した目的は、社会の授業で生徒に「おかしいな。どうしてだろう。」「このままだと困る。」「なんとか解決したいな。」という切実な問題意識をもたせたいと思ったからです。

一昨年、アフリカ州のモノカルチャー経済、昨年、南北問題の中で、ガーナのカカオ栽培の実態を教材化しました。チョコレートという身近なものを扱ったことで、生徒の関心は高まりました。しかし解決策についてはフェアトレードの紹介にとどまってしまいました。生徒にもっと切実な問題意識を持たせて「学び」を「行動」へ変えていけるように授業改善をしたいと感じていました。

講座では授業改善のための、すぐに役立つ三つの方策を得ることができました。

一つ目は、ガーナやカカオについての生の体験です。カカオの実を触ったり、匂いを嗅いだり、講師の先生のガーナの村へ行った時のエピソードを聴いたりすることで、知識としては知っていたアフリカの実態が、鮮やかにイメージできました。

二つ目は、ACEのオリジナルワークショップ教材「おいしいチョコレートの真実」です。講座では実際にこの教材を使ってロールプレイをしました。私のグループはガーナのマハマ家になって1ヶ月の買い物を考えました。収入が最も低いマハマ家は買うことができるものは水などしかなく、他のグループ(日本の製菓会社の社長の家族、社員の家族、ガーナの国家公務員の家族など)が楽しそうに何を買うか相談しているのを、見ているだけでした。そのおかげで格差についてじっくり考える時間もありました。

三つ目は、全国各地の高校生や中学生の実践事例を知ることができたことです。特に「フェアトレード商品を扱っている店舗マップ作り」の実践は、商店街に近い本校でもすぐに実践できそうな取り組みでした。

今年も南北問題の授業を行います。講師の方の体験やワークショップ教材「おいしいチョコレートの真実」や実践事例を授業に活用することで、生徒の「学び」を「行動」へ変えていきたいと思っています。