わたしは消費者 教員向け消費者教育情報提供誌・Web版

賢い消費者を育てたい
−消費生活総合センターを身近に感じて−

東村山市教育研究会 中学校家庭科部
東村山市立東村山第五中学校
主任教諭 加茂 圭子

1.「市教育研究会」研究主題設定にあたって

「今年のテーマは何にする?」

毎年4月になると研究主題を話し合います。家庭科部会は市内7中学校の教員10名で構成されています。日頃の授業の成果や悩みを話しながら、1年間の研究テーマを相談します。家庭での家事体験が少なくなっている現代の中学生に、どんな内容をどんな方法で授業をしていくのがよいのか、若手教員とベテラン教員が一緒に模索しています。昨年度の研究主題は「幼児の生活についての指導法の工夫」とし、家庭での幼児の事故とその対策について授業研究をしました。本年度は、中学生の身近にあるもの、時代にあった新しいものに焦点を当てたいと考えました。

2. 国際規格である新JIS規格と消費者教育

「新しい取り扱い絵表示はどうやって教えたらよいかしら。」

本誌『わたしは消費者No.139(平成27年3月1日)』にも特集されている通り、衣服についている洗濯表示記号に新JIS記号が制定されました。現行の日本独自の洗濯表示はまさしく絵表示であり、絵を見れば取り扱い方法が容易に想像できるものです。新しい記号は国際規格であり、絵を見ただけではわかりにくいものもあります。

しかし、海外からの輸入品が普及している現在、多くの衣類は海外で製造されたものです。国際的に展開するメーカーのファストファッションを着用する機会が多い中学生は、他国の表示ラベルを目にすることもあるでしょう。将来は、国際規格である新表示のみになります。成人して自分の収入で衣類を購入し着用する立場になった時、賢い消費者であって欲しいと思います。そのためには、時代にあった情報を取り入れながら、中学校の家庭科の授業をしていくことが必要です。

新しい洗濯表示記号を題材の一つとして、本年度の研究主題は「家庭科の授業における消費者教育の工夫」としました。

3. 市教育研究会の日程と主な内容

4月 家庭科部会
部員の顔合わせと主題設定
5月 全体会
市内小中学校全ての教員が集まる
6月 家庭科部会
部会の年間予定作成
7月 家庭科部会
夏期休業中の研修計画作成
8月 施設見学
工場、博物館、消費生活センター等
9月 家庭科部会
研究授業についての検討
10月 研究授業
一年生で消費者教育についての研究授業
11月 家庭科部会
研究授業についての検証
12月 家庭科部会
研究発表についての検討
1月 家庭科部会
研究発表(紙面)のまとめ
2月 研究発表会
三教科の部会講演発表(他教科は紙面)
3月 家庭科部会
一年間のまとめ

月に一回、市教育研究会があり、ふだんは市内中学校の家庭科室に集まります。主題について研究を進める他に、日々の授業の実践例や教材、定期テスト・評価等、情報交換をして研修します。夏期休業中は、いつもの家庭科室から外に出る機会で、毎年どこに行くか楽しみの一つでもあります。

4. 専門家の話が聴きたい!

授業をするにあたって、私たち教員は常に研さんをしていかなければなりません。そのために、夏期休業では大学の先生にお願いして講義をしていただいたり、地域の食品工場で生産過程を見せていただいたりしてきました。本年度の「消費者教育」という主題から考えた時、どのように研修していくのか部員でアイデアを出し合いました。

東京都消費生活総合センター(以下「センター」という)で毎年行われている「教員のための消費者教育講座」を受講した経験のある部員が、センターの見学を提案しました。センターの講座を全員で受講する案もありましたが、部員だけで訪問できたら消費者教育について詳しい話をしていただけるのではないかと思い、お願いしてみることにしました。

7月1日の家庭科部会で、早速センターに電話で依頼をしました。突然の電話にもかかわらず、丁寧に私たちの要望をきいてくださり、またセンターの方からいろいろなご提案をいただきました。改めて、研究の目的や日程等の依頼を文書で送り、センターからも正式に施設見学会及びミニ講座の受諾について文書で連絡をいただきました。

5. センター施設見学とミニ講座

平成27年7月27日、飯田橋駅前にあるセンターを7名の部員で訪問しました。家庭科の教科書には「消費生活センター」についての記載があります。それぞれの区や市にも消費相談窓口が設置されていますが、東京都の中心となる「消費生活総合センター」は敷居が高い気がして、訪れたことがない教員も半数いました。私も初めてでしたので、都会のビルにわくわくしながら16階の大きな学習室に案内していただきました。

当日の会議次第

挨拶及びセンターの紹介
ヒヤリハットレポート紹介と子ども服のJIS改正について
センター教材紹介と意見交換
アンケート記入
施設見学(相談課、学習室、実験実習室、図書資料室)

6. 東京都生活文化局消費生活部との連携

7人での訪問でしたのに、会議室では4人もの担当者の方がいらして驚きました。センターの職員お二人に加えて、わざわざ都庁より講師として2名の方が来てくださったのです。

専門家の話が聴きたいと思い、センターを訪ねた私たちですが、センターでは詳しい情報を正確に伝えたいと考え、更なる専門家の方を紹介してくださったのです。そのおかげで東京都生活文化局 消費生活部生活安全課 商品安全係の職員の方の講座を聴くことができました。

JIS L4129「子ども用衣料の安全性― 子ども用衣料に附属するひもの要求事項(フードや衣類後部のひも等について)」の制定公示に向けての話題を中心として、幅広く教えていただきました。JIS改正に至るまでの調査や商品等の安全対策に関して有識者を交えて検討を行う協議会の概要等、興味深い話ばかりでした。子供用衣類の安全確保の問題ですので、子どもの身の回りの安全性に関する調査についての報告は、「幼児の生活」についての授業で生かすこともできます。JIS改正にあたり、経済産業省や製造事業者団体、百貨店やチェーンストアー等の販売事業者団体、教育関係団体等、さまざまな関係機関に提案・協議を繰り返し、制定されていくことがわかりました。そのためにも商品の安全に関しては消費者が声をあげていかないと、安全な物作りができない場合もあり、改めて消費者教育の重要性を感じました。

画像:センター訪問時の写真

センター訪問時の写真

7. センターの教材紹介

講座後に教材を紹介してもらいました。授業で使えるたくさんの教材があります。

センターからは、本誌『わたしは消費者』をはじめとして多くの資料が各学校に送られています。「あ、これは私の学校にあります」という部員もいますが、多くは初めて見たと思うものでした。職員室の机上には日々、書類や会議資料、生徒作品、業者からのパンフレット等山積みにされ、センターからの配布物が埋もれたり、日々の雑務に追われ、センターの教材を忘れてしまったりするのだと思います。改めて、実物を見せてもらい、使い方を紹介していただくと、今後の授業へのアイデアが湧いてきました。

「東京くらしWeb」で、簡単に検索できるWeb版消費者教育読本も紹介してもらいました。パソコン操作に慣れた中学生には、目の前の画面で質問され、自分の考えで答えを入力し学習を進めていくWeb教材が親しみやすいでしょう。

しかし、パソコンでの学習は地域による学校差や個人差で、取り組み方やその効果に違いが出てくるとも思われます。同じ市内の中学校教員でも内容や設問、時間配分について、各学校の生徒の現状から考え、さまざまな意見があります。そんな私たちの意見を、教材作りの参考にしたいと、一つ一つ聞いてくださったセンターの職員の方の熱意には一同感激しました。

8. センターを身近に感じて

少し遠い存在に感じていたセンターが、学校教育のために苦心してくれていることを知り、とてもありがたく感じました。もっと現場の先生達の声を聞いて、実際の学校教育に役立つ物や情報を届けたいと願っているセンター。最新の情報や、わかりやすい視聴覚教材、消費者教育の専門家の意見を聞きたいと願っている教員。お互いの立場が分かり心強く思いました。これからの研究と毎日の授業に、もっと気軽にセンターを活用させていただき、消費者教育を進めていきたいと思いました。