わたしは消費者 教員向け消費者教育情報提供誌・Web版
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繊維製品の洗濯表示に関するJIS規格を制定

経済産業省 産業技術環境局国際標準課 課長補佐 永田 邦博

1.洗濯表示の規格について

(1)国内規格

国内規格であるJIS(日本工業規格)L0217においては、家庭における洗濯などの取り扱い方法を示すため、洗濯表示記号(6分類22種)、表示方法及び試験方法が規定されています。

JIS規格そのものは任意ですが、家庭用品品質表示法(繊維製品品質表示規程)でJIS L0217が引用されており、国内で販売される繊維製品(主に衣料品)は、このJIS規格に従った表示が義務づけられています。

また、このJIS規格は日本独自のものであり、海外では通用しません。

(2)国際規格

国際規格であるISO(国際標準化機構)3758においては、繊維製品の洗濯表示記号(5分類41種)が規定されています。

また、ISO 6330においては、家庭用洗濯の表示に関する試験方法が規定されており、更にISO 3175においては、商業クリーニング(ドライクリーニング及びウェットクリーニング)の表示に関する試験方法が規定されています。

2.新JIS規格制定の背景

国際規格には、我が国の洗濯習慣上必要な記号(自然乾燥表示)や、我が国で用いられている洗濯機(パルセータ型(縦型)洗濯機)に関する試験方法が規定されていなかったことが、JIS規格の国際規格との整合化の支障となっていました。そのため、我が国から国際規格の改正(ISO 3758に自然乾燥記号の追加、ISO 6330にパルセータ型洗濯機による試験方法の追加)の提案を行い、2012年に我が国の提案がほぼ反映された国際規格が発行されました。

これにより、JIS規格の国際規格との整合化への環境が整備されたため、今回、試験方法も含めて6件のJISを制定しました(別表1参照)。なお、現行のJIS L0217は、多くのJIS規格などに引用されており、それらへの影響が大きいこと、また、内容が大きく変更していること等から、「改正」ではなく、新規のJIS規格として制定しました。一から新しくなるという意味を込めて、JIS L0001という番号にしました。現行のJIS規格は当分の間存続することとします。

3.新JIS規格制定の必要性

これまで慣れ親しんだ洗濯表示記号が国際規格との整合化によってガラリと変わることについて、戸惑いの声が多く寄せられています。なぜ変更するのか、なぜ国際規格に整合する必要があるのか、理由は大きく以下の3つあるかと思います。

(1)市場のグローバル化への対応

近年、ファストファッション(注1)の流行やインターネットの普及により、衣類やファブリック商品の海外からの輸入が急増しています。海外メーカーは日本へ輸出する際、JIS L0217に適合した洗濯表示記号のラベルの付け替えや試験方法が国内外で異なるため、新たに試験を実施する必要性がある等、コストがかかり貿易の障害となる可能性があり、以前より国際規格への整合化が求められていました。

(2)洗剤・洗濯機などの技術進歩

現行のJISは1968年に制定され、1995年を最後に改正されておらず、現在に至るまでの世の中の技術進歩に追いついていません。

(3)WTO/TBT協定による国際規格との整合化が必要

日本はWTO(世界貿易機関)に加盟しており、全ての加盟国は「任意規格(日本の場合はJIS規格)を制定又は改正が必要な場合において、関連する国際規格が存在する場合には当該国際規格を基礎として用いること」というTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)の適用を受けます。

(注1)
流行をとり入れながら低価格に抑えた衣料品を短いサイクルで世界的に大量生産・販売するブランド

4.新JIS L0001の主なポイント

(1)洗濯表示に関する記号について

今回制定したJIS L0001において、洗濯表示記号は基本的に、下図の基本記号((1)洗濯処理記号、(2)漂白処理記号、(3)乾燥処理記号、(4)アイロン仕上げ処理記号、(5)商業クリーニング処理記号)、及び基本記号と組み合わせて用いる付加記号((6)弱い処理記号、(7) 非常に弱い処理記号、(8)処理温度記号、(9) 処理・操作の禁止記号)で構成されます。これらは、現行のJIS規格で規定する記号とは大きく異なったものとなります(別表2参照)。

(1)洗濯処理記号
(基本記号)
(2)漂白処理記号
(基本記号)
(3)乾燥処理記号
(基本記号)
(4)アイロン仕上げ処理記号
(基本記号)
(5)商業クリーニング処理記号
(基本記号)
(6)弱い処理記号
(付加記号)
(7)非常に弱い処理記号
(付加記号)
(8)処理温度記号
(付加記号)
(9)処理・操作の禁止記号
(付加記号)
(1)の洗濯処理記号の処理温度については、摂氏の単位記号“℃”を省略した温度の数字で表示し、(3)乾燥処理記号及び(4)アイロン仕上げ記号の処理温度については、上記のドットで表示します(ドット数が増えると処理温度がより高いことを表す)。

(2)洗濯表示記号の種類増加

洗濯表示記号は、上記基本記号の組み合わせや、組み合わせを基礎にした記号により表示されます。現行JIS規格では洗濯表示記号が22種類でしたが、今回制定されるJIS規格では41種類の記号が規定され、酸素系漂白、ウェットクリーニング等に関する表示記号も追加されるなど、より詳細な情報を表示できるようになりました(別表2参照)。

例1 酸素系漂白の表示記号 例2 ウェットクリーニングの表示記号
漂白の基本記号に斜線を加えたもの。
塩素系漂白剤の使用ができないことを示す。
商業クリーニングの基本記号にウェットを示すWの英文字を加えたもの。
ウェットクリーニング処理ができることを示す。

5.新しい洗濯表示記号を覚えるコツ

新しい洗濯表示記号が覚えにくい・分かりにくいとインターネット上でも話題になっておりますが、特徴さえつかめば、実は意外と簡単に覚えることができます。漂白の「」の形は現在の洗濯表示記号にも使われている三角フラスコをイメージしてください。商業クリーニングも現在使われている「」の形で、消費者は「」の中の英文字(P、F、W)(注2)の意味まで覚える必要はなく、商業クリーニングができるのか否かを判断できれば良いかと思います。

厄介なのが自然乾燥ですが、「」の中の棒が洗濯物です。縦(:垂直)はつり干し、横(:水平)は平干しで、それぞれの二重線は濡れ干しで、棒の数が多いのは濡れている分だけ重くなっていると考えてください。そして斜め線が日陰干しです。

また、付加記号のアンダーバーは「マイナス」と考え、アンダーバーの数が多いほど弱い処理になります。一方、付加記号の「」は、「点火」「追加点」と考え、数が多いほど温度が高い処理になります。

(注2)
別表2の表6参照