わたしは消費者 教員向け消費者教育情報提供誌・Web版
ページ1

特定商取引法に定める「通信販売」規制の概要

弁護士 木 篤夫

1.特定商取引法

訪問販売、通信販売、連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)の取引について消費者被害の防止を図ることを目的として「訪問販売法」が制定されていましたが、特定商取引法は、さらに取引適正化の必要があると認められる取引類型を加えて訪問販売法の改正法として制定されたものです。現在は7つの取引類型について適用される法律となっています。

2.特定商取引法で定める「通信販売」

通信販売にあたるものとして想定されるのは、ダイレクトメールによる通信販売、雑誌・新聞広告、チラシ、カタログ通信販売や、テレビ・ラジオ通信販売、インターネット通信販売などがあります。

特定商取引法では、「通信販売」を「販売業者または役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約または役務提供契約の申込みを受けて行う商品もしくは指定権利の販売または役務の提供であって電話勧誘販売に該当しないものをいう。」(特定商取引法2条2項。以下、別の法令名の記載がない限りすべて特定商取引法の条文です。)と定めています。

「郵便等」とは、省令2条1号ないし4号で、(1)郵便、信書便、(2)電話機、ファクシミリ装置、その他の通信機器または情報処理の用に供する機器を利用する方法、(3)電報、(4)預金または貯金の口座に対する払い込みを指すものとされています。

「電話勧誘販売」は、特定商取引法で別の商取引類型として規制されていますので通信販売からは除外されています。さらに、購入者が営業のためにもしくは営業として締結する取引など、一定の取引についても適用除外(26条1項)とされています(これらは訪問販売と同じ適用除外です)。

3.「通信販売」の特質

通信販売の特質は、販売業者等と消費者との取引が非対面で隔地者間取引としてなされるところにあります。したがって、消費者が契約する意思を形成したり、契約する価値があるかどうかの判断を行うために必要な情報は、販売業者等が提供する広告などを通じて入手するほかありません。このように通信販売では、原則として販売業者等から提供される情報は限定的なものでしかないので、消費者が取引をする際に入手できる販売業者等の信用性にかかわる情報や商品の内容の情報が限られています。そのため、消費者が現実に入手した商品等が期待したものと違うといったトラブルや、代金を先払いしたにもかかわらず商品が送られてこない、問い合わせやクレームの申告をしたくとも販売業者等の所在がはっきりしない、連絡がつかないといったトラブルが想定されるところです。

4.「通信販売」の代表的な規制

「通信販売」は、非対面取引であることから、消費者にとって販売業者等と商品等に関する主たる情報源である広告について規制がなされています。

(1)
広告規制

通信販売では、一般に商品等の表示や広告を通じてしか消費者は販売条件や契約条件を認識できません。そのため、販売業者等には、法律が定める事項を必ず広告中に表示することが義務づけられており(11条。積極的広告規制)、消費者に取引条件を明確に認識させることでトラブルの防止を図っています。なお、広告の態様や広告のスペース等は多様なものが考えられ表示に制約を受けることがあるため、一定の条件の下で表示を省略することができる場合があります(11条ただし書き)。

また、販売業者等に対して商品の性能または権利もしくは役務の内容、売買契約の解除等について著しく事実に相違する表示(虚偽広告)や著しく優良・有利であると人を誤認させる表示(誇大広告)を禁止しています(12条。消極的広告規制)。

商品や役務の効能、効果等に関して誇大な広告等によって消費者を誤認させて契約するトラブルも多いことから、行政処分の前提となる事実認定のため、主務大臣は合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます(12条の2。不実証広告規制)。

消極的広告規制については、景品表示法や薬事法、健康増進法など他の法令でも規制されていますが、特定商取引法でも重ねて規制がされていることになります。

(2)
電子メール広告規制

広告規制の一つとして、電子メールの広告規制が定められています(12条の3)。

販売業者等は、消費者の請求に基づかずに、または承諾を得ないで通信販売の電子メール広告をしてはならないとして、オプトイン規制をしています(12条の3第1項)。平成20年の特定商取引法改正前は、広告であることの表示義務を課した上で広告メールの受信拒否の意思を通知した者に対する送信を禁止するというオプトアウト規制を行っていましたが、オプトアウト規制では実効性に欠け、迷惑メールの被害拡大をも招きかねないことが指摘されるようになり、迷惑メールの通信インフラへの過負荷についても看過できなくなったことから特定電子メール法とともにオプトイン規制に転換したものです。

オプトイン規制により消費者の請求や承諾について、販売業者等はその記録を作成し、保存しなければならないものとされています(12条の3第3項)。さらに、販売業者等が電子メールの送信業務を受託する業者を利用する場合も多いため、販売業者等から委託を受けて電子メールによる広告を送信する広告受託事業者についても規制しています(12条の4)。

(3)
前払式通信販売での承諾等の通知義務

商品の引渡し、権利移転や役務提供を受ける前に、消費者から代金の全部または一部を支払わせる通信販売では、消費者からの契約の申込みに対し、承諾等の通知をすべき義務が課されています(13条1項)。通信販売ではクレジットカードによる支払いが多く利用されますが、この場合、前払式通信販売かどうかは、消費者の銀行口座からクレジットカードの立替払金を引き落とされる時期が商品等の引渡し時期の前であるかによって判断されます。

(4)
顧客の意に反して通信販売に係る売買契約等の申込みをさせようとする行為の禁止

インターネット通信販売やハガキ、ダイレクトメールで送付した書面を返送させる方法で申込みをさせる場合に、契約の申込みであることを隠したり、不実表示を行うことなどによって、消費者の意思に反して申込みをさせようとする行為を禁止しています(14条1項2号、省令16条1項)。これは、インターネット通信販売で特に問題となるので、インターネット通信販売の項目で詳しく述べます。

(5)
規制の効果

これらの規制に違反する行為は、主務大臣の指示対象行為(14条)となりますし、業務停止命令の対象や氏名等の公表の対象となる(15条)など、行政処分が課せられる可能性があり、さらに刑事罰(70条の2、72条)が課される場合もあります。