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読者レポート

消費者の強い味方、NITEナイト)
~製品事故から守ります~

 消費者を支えてくれる機関といえば消費生活センターや消費者庁、国民生活センターなどが思い浮かびますが、他にも紹介したい重要な組織が存在します。その名はNITE(ナイト)。消費者からの相談には直接対応していませんが、製品安全の面から私たちの暮らしを支えています。一体どのような機関なのでしょうか。取材に伺いました。

読者委員 藤田 朋子ふじた ともこ

藤田委員(中央)と(左から)NITE製品安全センターの岩井田課長、髙橋主任、広報室の田邊主任、相田さん

NITEとは

 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)は経済産業省のもとに設置された行政執行法人※で、製品安全、化学物質管理、バイオテクノロジー、適合性認定、国際評価技術の5分野において、技術的な評価や法執行支援などを実施し、日本の産業を支えています。
 今回は、主に製品安全の分野についてNITEに取材しました。

※独立行政法人の中でも国と密接に関連した事業を確実に執行することを目的とした法人

事故情報の収集と原因の究明

 NITEでは、消費生活用製品安全法に基づき、私たち消費者が日常的に使用する家庭用電気製品や身の回り品などを対象に、暮らしの中で起こった事故情報を収集しています(図1)。事故情報は、製造・輸入事業者からの報告、消費生活センター、消防・警察などからの通知で、最近は年に約2千件の情報が寄せられています。
 収集した全ての事故情報について、公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明を行っています。原因究明調査の結果は公表され、製品事故の再発・未然防止に役立てられています。

図1 事故情報の流れ(出典:NITE)

※「重大製品事故」は、死亡事故のほか、治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病、後遺障害事故、一酸化炭素中毒事故及び火災事故と政令で定められています。

 例えば、エアコン洗浄液が原因とみられる火災が発生したとします。まず下準備として、現場の状況、日頃の使われ方などを確認。過去にエアコンクリーニングをしたことがあったか、それは事業者がやったのか、聞き取り調査をします。続いて、焼けた端子部に洗浄液の影響があったのかなど、化学分析専門の担当者とも協力して丹念に調べます。NITE、消防、事業者の三者で集まって合同調査することもあり、事業者の協力を得て入手したエアコンの構造等技術資料と比較、観察しますが、激しく焼けて原因究明が困難な場合はX線で調べたりするため、一日がかりになることもあるそうです。
 なお、輸入製品については、海外のリコール情報を収集し、国内で同様の製品が流通していないか確認して、関係機関に情報提供しています。

立入検査の実施

 NITEでは、法を着実に執行するための支援を行っています。その中の一つにPSマークを表示している事業者に対しての、製品安全4法に基づく立入検査があります※。立入検査では技術基準が守られているか、自主検査の体制が備わっているかなど遵守状況を細かく確認しています。結果は国に報告されます。

※製品安全4法(消費生活用製品安全法、電気用品安全法、ガス事業法、液化石油ガス法)で指定された品目は、国が定めた技術基準適合義務を履行していることを示すPSマークの表示がないと、販売することができない。

図2 PSEマーク

消費者への情報提供

 NITEでは、消費者の方々への情報提供にも力を入れています。

注意喚起動画

 NITEでは、さまざまな注意喚起動画を作成しています。報道番組などで、その動画をご覧になった方も多いのではないでしょうか。
 動画を作成する際は、消費者への分かりやすさ、自分のこととして捉えてもらうために身近な製品を選ぶこと、印象に残りやすい動画を撮ることの3点を心掛けているそうです。
 いざ撮影してみると、想定と違うこともしばしば。携帯用扇風機(ハンディファン)から出火する動画を撮影した時は思うように発火せず、9回撮り直したそうです。
 子どもが被害者となる事故の再現動画は、どういう状況で事故が起きたのか本人からの聞き取りが難しいので、子どもの行動様式を念頭に試行錯誤しながら作成するそうです。撮影ではさまざまな製品を使うので、製品を借りるなどメーカーの協力が不可欠とのことでした。

事故品の展示

 NITEには、一酸化炭素中毒を引き起こした石油温風暖房機やエスカレーターに巻き込まれたサンダルなどの事故品とその事故原因などの解説を見ることができるNITEスクエア(東京都渋谷区)があります。
 中でも衝撃を受けたのは、幼児が指9本を失ったシュレッダー。投入口が広いため指が入ってしまうことと、投入口から細断刃までの距離が短いことが原因でした。
 展示されている事故品には、NITEが消費者のために全力で原因究明した歴史が詰まっていて胸が熱くなりました。

NITEでは情報発信にも力を入れています
YouTube〈注意喚起動画以外にも動画を多数アップ〉
  • 「秘密結社 鷹の爪団」:NITEを分かりやすく紹介
  • 「せいあんちゃんねる」:NITE初のユーチューバーが身近な製品を使って防衛策を紹介
SAFE-Lite〈製品安全に特化したウェブ検索ツール〉:https://safe-lite.nite.go.jp/
  • NITEがこれまでに蓄積した約6万件の事故情報を手軽に検索できます。

取材を終えて

 今回、普段は非公開の再現テスト室を特別に見せていただきました。
 コンクリートむき出しの部屋にIHコンロが一台あり、壁に触れるとすすがつきます。ここで撮影された動画には、天ぷら油から勢いよく上がった炎に防火服を着た人が慎重に近づき、蓋をして消火するまでが映っていました。
 消費者向けに危険を訴える動画を撮るということは危険を伴いますが、NITEの方が入念な防護のうえ撮影に臨んだ現場を拝見して、そのご苦労に頭が下がりました。

取材の様子(再現テスト室)

 製品安全の面から私たちの暮らしを支えているNITE。取材して、NITEをもっと多くの方に知って欲しい気持ちになると同時に、私たち消費者は製品を正しく使うこと、そして日頃から製品事故の情報に関心を持たなければいけないと強く思いました。