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悪質商法は事例に学んで予防しよう!

間川法律事務所
弁護士 間川 清まがわ きよし

 主に高齢者を対象とした悪質商法とその被害が多く発生しています。今後、高齢者人口が増加するにつれ、ますます悪質商法の発生件数も増加すると予想されます。
 悪質商法の被害に遭った場合、後からお金などを取り戻すことはとても困難です。そのため、何よりも大切なのは未然に防ぐことであり、実際に起こった悪質商法の手口を知っておくことが重要になります。
 以下では近年実際に起きている悪質商法の典型的な手口を紹介します。

1自然災害に便乗した悪質商法

 ある日、巨大台風が発生。日本の一部地域に甚大な被害をもたらしました。幸いAさんの自宅は台風の直撃は避けられましたが、かなりの暴風雨に見舞われました。Aさん宅は、築40年を超える家だったので屋根などが破損していないか心配していました。
 そんなとき、屋根修繕業者を名乗る男性が自宅を訪問してきました。Aさん宅の屋根であるという説明とともに、見るからに破損した屋根瓦の写真を見せてきました。そして、「写真を撮らせてもらったが、屋根が破損している。雨漏りや屋根の一部崩壊の可能性があるので急いで修繕した方がいい。火災保険に入っていれば、修理代は全額保険で後日取り戻せる。保険の申請は代わりにうちでやるのでサインと支払いだけしてほしい」というのです。
 Aさんは、再び台風が来たら大変だと思い、また、修繕費も保険で回収できるのならいいかと考えて、その場で契約してしまいました。しかし、修繕費は通常より高額で、保険金も全額下りませんでした。

解説

 近年多発している自然災害に便乗した悪質商法です。この事例では、屋根の上という実際に目で見て確認できない場所の写真を見せることで、相手を信用させるという手口を使っています。また、「火災保険を申請すれば修繕費は回収できる」と言っていることにも注目です。経済的負担がないと見せかけることで、相手がお金を支払いやすくしているのです。この点は、火災保険だけでなく「政府から補助金がでるから大丈夫」などという手口を使ってくることも予想されます。このような悪質商法の手口に対しては、複数のリフォーム業者から見積もりをとるようにする、保険会社に自ら連絡して保険が適用されるかどうかを確認する、などの対策が重要になります。
 また、このような訪問販売については、法律上、クーリング・オフ期間中の8日間は、無条件で契約を解除することができます。

2架空請求

 Bさん宅にある日突然はがきが届きました。そのはがきには「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」との記載があります。全く身に覚えのない内容でしたが、Bさんは念のためと思い、詳しくはがきの内容を確認しました。すると、そこには「契約違反により、民事訴訟を提起する予定である」「民事訴訟を提起すれば裁判所から連絡があり、給与の差し押さえ、不動産の差し押さえを強制的に執行する」「訴訟取り下げ期限である〇年〇月〇日までに、連絡があれば、協議に応じることは可能」と書かれていました。また、はがきの差出人は「法務省管轄訴訟管理センター」などと書かれており、いかにも実在する公的機関からのはがきのようでした。
 Bさんは、なにかの間違いではないかと思いつつ、万が一、不動産の差し押さえなどがあったら大変だと思い、はがきに記載されている電話番号に連絡してしまいました。すると、担当者と名乗る男性から、本人確認のためという理由で生年月日や電話番号などを聞かれ、その上、ネット上のショッピング契約の支払代金が払われていないとして、数十万円の支払いを求められました。Bさんは否定しましたが、今なら半額まで減額できる、支払わないなら強制執行となると言われ、支払いに応じてしまいました。

解説

 このようなはがきが届いた場合に、絶対にしてはいけないことは、はがきに書いてある連絡先に電話することです。記載されている内容は、架空請求である可能性が高く、このような架空請求はがきを送った業者の狙いは、無作為に送り付けたはがきの受取人のうち、連絡をしてきた相手から詳しい個人情報を聞き出し、言葉巧みに支払う必要のない金銭を支払わせることにあるのです。ですから、不安を感じて連絡してしまうのは相手の思うつぼ。絶対に連絡せず無視しましょう。
 通常、裁判が起こされたときに、法務省から通知することはありませんし、訴状は、裁判所から封書で送られ手渡されるのが原則です。はがき一枚でその連絡が来るということはありません。このようなはがきが届いてどうしても不安な場合には、自分の住所を担当している裁判所をネットなどで調べ、連絡して聞いてみるのがいいでしょう。

3定期購入に関するトラブル

 健康状態に不安を抱えていたCさん。あるとき何気なくウェブサイトを見ていたら、健康食品のサイトを見つけました。サイトをみると初回購入価格がわずか500円となっており、「試してみて良かったら使い続けよう」と思い、クレジットカードの番号を打ち込んで購入しました。届いた商品を使ってみたところ、あまり効果が実感できなかったため、継続購入の申し込みはしないでいました。
 すると1カ月後、再度商品が送られてきて、代金が請求されていました。継続購入はしていないのにおかしいと思い、業者に確認すると、契約は全部で5回の継続購入となっており、初回分の代金だけが500円になっていると言われました。そんな認識はなかったと抗議をしましたが、サイトにもちゃんと記載されているとの一点張りで、継続購入分の解約には応じてもらえませんでした。

解説

 「初回無料」「初回特別料金」などの言葉でお得感を演出し、実は複数回の契約が条件になっている商品を買わせる、というトラブルが近年発生しています。「初回無料」などとなっていても、2回目以降は定額で決められた回数(事例では5回)の購入を求められるため、トータルではお得な価格だと感じられなかった、という場合も多くあります。
 近年の法改正により、2回以上の継続購入の場合には、継続的契約であることや、販売の期間・金額などを広告で表示しなければならないとされています。しかし、小さな文字で記載するなど買い手側が見落としてしまうような表示をしている場合があり、トラブルになることも多くあります。通信販売で商品を購入する際は、注文する前に購入・返品条件をよく確認することが必要です。

4押し買い(悪質な訪問購入)

 Dさんが自宅にいると、突然「ご不要な貴金属の買取サービスをしています」といって男性が2人訪問してきました。Dさんは断りましたが、「今、金の値段が上がっているのでチャンスです。お話だけでもさせてください」としつこく食い下がり、強引にあがりこんできました。Dさんは恐怖を感じ、貴重品箱を持ち出したところ、男性が勝手にその貴重品箱に手を伸ばし、大切に使っていた金のイヤリングを取り出しました。そして、これなら1000円で買い取りますよ、と言って1000円札だけ置いて、強引に買い取っていきました。そのイヤリングは数万円したもので売るつもりもなかったので、なんとか返してもらいたいと思いましたが、業者の連絡先がわからず、あきらめるしかありませんでした。

解説

 訪問購入については、法律上、クーリング・オフの対象となります。しかし、Dさんの事例のように相手が連絡先を明かさない場合や、嘘の連絡先を教えられるなどして、連絡ができない場合もあるでしょう。
 このような悪質商法の被害に遭わないためには、相手がいくらしつこくても絶対に玄関のドアを開けない、しつこい場合には警察への通報をためらわない、あいまいな返事をしない、などの毅然とした対応をとることが必要です。
 なお、訪問購入の場合は、契約書などの書面※を受け取ってから8日間はクーリング・オフにより無条件で契約を解除することができますので、契約書面は必ず受け取りましょう。
※事業者には、法定の事項が記載された書面を消費者に交付する義務があります。

それでも被害に遭ってしまったら

 いくら用心していても、思わぬところで悪質商法の被害に遭ってしまうことはありえます。
 その際には、被害を受けたことを恥ずかしがらず、家族や親族などの親しい人に相談しましょう。
 そして、警察や、お近くの消費生活センターなどに相談しましょう。消費者ホットライン(局番なしの☎188番)で、近くの消費生活センターを案内してもらえます。ほかにも、東京都内の3つの弁護士会が運営する法律相談センター(☎0570-200-050)もありますので活用してみてください。

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