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今月の話題

増えるサブスクリプションサービス

ひかり総合法律事務所
弁護士 髙木 篤夫たかぎ あつお

 サブスクリプションサービスは、一定期間内の定額サービスとして、デジタルコンテンツやソフトウェアでは一般的な契約形態になってきています。消費者が生活を豊かに過ごすために役立つ契約の一つと言えますが、メリットだけでなくデメリットを十分認識していないと、トラブルに発展することがあります。注意する点をよく知っておきましょう。

サブスクリプションサービスとは?

 通常、商品やサービスを購入する際には、その都度、料金を支払います。
 これに対し、サブスクリプションサービスとは、月額料金などの定額を支払うことで、一定期間、商品やサービスの利用が可能となるものをいいます。
 サブスクリプションサービスの利用形態には、①契約期間内は無制限に利用ができるもの(いわゆる「使い放題」)と、②一定の条件のもとに利用可能なもの(提供数、種類、利用回数などに上限があるなど)があります。
 法的にみると、一回きりの売買契約ではなく、継続的契約に分類されます。対価は「定額」で「定期支払い」をすること、「所有すること」ではなく「使うこと」が契約の中心的内容となること、期限が定められているとしても自動更新となっていて終了させるには解除が必要となっていることが特徴です。
 レンタルやリースは、借りる都度、商品を選択し、レンタル料やリース料を支払いますが、サブスクリプションサービスは、商品を特定する必要がなく、定額を支払えば、事業者が用意した商品やサービスの中から、利用するものを選択したり組み合わせたりすることができる仕組みになっています。

レンタル契約とサブスクリプション契約の比較

 動画、音楽、電子書籍や雑誌などのデジタルコンテンツ、ソフトウェアなどでは、サブスクリプション契約による提供が普及しつつあります。
 また、従来から、洋服や服飾雑貨が毎月届く定期購入契約や頒布会といった、一定期間・複数回の売り切り型の販売が行われてきた商品などについても、近年は、一定期間商品を使用した後に返却するという商品使用型のサブスクリプションサービスで提供されるようにもなってきています。

サブスクリプションサービスのメリットとデメリット

 消費者にとってサブスクリプションサービスは、次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 都度、購入するよりも、割安に商品・サービスを利用できることが多い
  • 契約の範囲内で、さまざまな商品・サービスを使うことができる
  • 維持管理や処分の手間が不要
  • 新しい商品・サービスを利用することができる
  • お試し無料期間が設定されていることが多いため、選択の失敗が少ない
  • 契約期間の縛りがない場合には、不要になれば解約できる
  • デジタルコンテンツなどの商品・サービスは、インターネットで簡単に契約できることが多い

デメリット

  • 使用しない機能や興味のない商品・サービスも含まれていることがある
  • オプションサービスなどの契約の内容がわかりにくいことがある
  • 使わなくても定額料金が発生する
  • 解約すると商品・サービスが利用できなくなる
  • 契約後に、提供される商品・サービスが変更されることがある
  • 解約の方法が理解しにくかったり、解約制限があったりすることがある

トラブル事例

試用期間・契約に関するトラブル

 試用期間が無料とされていたので、申し込んだ。その後、有料の契約をした覚えがないのに、クレジットカードから利用料金が引き落とされていた。無料期間終了後、自動的に通常の契約に移行していたようだ。

 無料期間の申し込みをした場合でも、申し込み時にクレジットカード情報など決済手段の入力をしているときは、無料期間後に自動的に有料の契約に移行する可能性があります。
 一定期間無料であるという広告表示だけでなく、利用規約や広告の注意書きなどをよく読んで契約条件を確認してから申し込むことが重要です。無料期間だけで契約が終わるものなのかどうか、有料契約に自動移行する場合は解約手続がいつまでに必要なのかということを必ず確認しておきましょう。
 また、一つの申し込み手続の際に、オプションや複数のサブスクリプション契約も同時に申し込めるよう、あらかじめ設定されていることもあります。サブスクリプションサービスは簡単に申し込めるようになっていることがほとんどですので、申し込みの前に契約内容について、十分な確認をするようにしましょう。

サービスの内容・利用方法に関するトラブル

 動画見放題のサービスを契約したが、見たい番組は追加料金が必要だった。しかも、パソコンでは動画がうまく映らず、スマホでしか見ることができなかった。利用しないで忘れていたら、月額料金がかかり続けていた。

 サブスクリプションサービスでは、利用していなくても、継続して定額の利用料金がかかり続けます。利用しないサービスであれば、確実に解約手続をしておくことが必要です。
 また、定額の月額利用料で提供されるサービス以外にも、追加料金のオプションなどがあったり、別のサービスを同時に提供したりしている事業者も見られます。「見放題」という言葉だけで判断せずに、どのようなサービスがどのような条件で提供されるのかという契約内容を十分確認したうえで、申し込みをすることが重要です。使ってみたら自分の期待していたサービスが使えないということがないよう、定額料金で利用できるサービスの範囲や利用できる機器などのサービス提供の条件についても、申し込みをする前に確認しておきましょう。

解約に関する事例

 音楽聴き放題のサービスを解約しようとしたが、解約方法がわからない。事業者に電話したがつながらない。ネットで調べてみると、ネット上でログインして手続をする必要があるようだった。そのサービスのIDがわからなくなってしまって解約できずにいる。

 解約方法がわからないなどの理由で利用料金を支払い続けることになるトラブルも多く見られます。特にオンラインでの解約手続は、解約するまでにいくつもの画面を示されたりして、申し込みの時よりはるかに手間がかかることがあります。IDやパスワードが必要になることもありますが、契約時から時間が経過していたりすると、忘れてしまいがちです。いずれ解約するかもしれないことを考えて、IDやパスワードは確実に管理しておきましょう。

まとめ

 商品やサービスを定額で利用するサブスクリプションサービスは、その内容に納得して賢く使えば、効率的かつ安価に商品やサービスを利用することができます。しかし、サブスクリプションサービスの内容によっては、自分にとって不要なものに毎月支払いを続けるということにもなりかねません。申し込みの際には、契約条件や利用料金、利用条件などの契約内容にかかわる事柄を確認するほか、解約の手続方法や解約できる時期などについても十分に確認していくことが必要です。

 特に、解約方法などについては、トラブルも多くなってきており、事業者がわかりやすく適切な説明や解約手続を用意していないこともあります。申し込もうとするサブスクリプションサービスの評判などを事前に確認して、類似のサブスクリプションサービスとも比較検討するなど申し込み前の検討が重要です。また、注意書きや利用規約に細かな制限が書き込まれていることがありますので、きちんと確認しましょう。

 事業者の広告や申し込みの画面などが消費者に誤解を生じさせるものであった場合や、契約時に示された内容と実際のサービス内容が異なっていた場合など、契約の取消や解除を事業者に主張できる場合があります。
 トラブルにあってしまったら、まずは消費生活センターに相談をしましょう。

消費者ホットライン

電話188(局番なし)
お近くの消費生活相談窓口につながります。
東京都消費生活総合センター
電話03-3235-1155