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読者レポート

正しい計量器が手元に届く仕組み ~計量器の法定検査~

 「私たちの生活に欠かせない計量」ですが、それらを計量する計量器の精度を気にしたことがありますか。おそらく、ほとんど気にしたことはないでしょう。精度を心配せずに使用できるその陰には、正しい計量器のみが私たちの手元に届くよう、計量法で検査制度が整えられているのです。
 そこで、東京都でこの検査制度を支える東京都計量検定所に、計量器の検査や検定所の役割についてお話を伺いました。

読者委員 藤井 陽子ふじい ようこ

藤井委員(右)と東京都計量検定所の山本さん(左)

暮らしと計量

 私たちは、日々の暮らしの中で、体温測定などのように「自分で計量する」だけでなく、ガス料金の支払いなどのように「計量された結果を利用」しています。このように、計量は、私たちの暮らしを支えており、精度の保たれていない計量器が出回ると社会に混乱が起きかねません。そのため、安心して使える計量器を供給する制度が整備されています。

計量には、目安を知る程度でいいものから、命に関わるわずかな差を見極めなければならないものまで、さまざまなものがあります。

計量器の検定・検査

 安心して使える計量器を供給するための制度として、計量器の検定・検査があります。計量法では、取引や証明、健康管理に使用される、タクシーメーター、質量計(はかり、体重計など)、温度計などの計量器18種を、特定計量器と指定し、〈検定〉という、技術基準を満たしているかの検査を課しています。そして、検定に合格したものにだけ「検定証印(図1)」または「基準適合証印(図2)」という印が付けられ、この印があるものが流通しています。
 検定に合格しても、使用するうちに誤差が生じるため、商店などで使用するはかりには、2年に1度「定期検査」を受検することが使用者に義務付けられています(図3)。
 また、一般家庭で使用する調理用はかり、体重計、乳幼児用体重計を家庭用特定計量器といいます。これらは、製造事業者等が、法定技術基準を満たすことを示す印(図4)を付けたもののみが、市場に流通しています。※図4の印の計量器は、証明などに使用できません。

  • 図1 検定証印
  • 図2 基準適合証印
    (検定証印と同等の基準で付けられる印。検定証印とは、検定場所が異なります。)
  • 図3 定期検査済合格ステッカー
    (定期検査済証印が記載されています。)
  • 図4 家庭用特定計量器の印

東京都計量検定所の役割

 これら計量器の検定や検査などを行っているのが東京都計量検定所です。東京都計量検定所では、四つの施策により、正しい計量を推進しています。

4つの施策…正しい計量器が供給されるための施策/正しい計量器が使用されるための施策/正しい計量が行われるための施策/計量思想の普及のための施策

 その一つに、「正しい計量器が供給されるための施策」があり、計量器の検定や検査を行っているのです。
 〈検定〉は、構造検定と器差検定からなっています。構造検定では、目視等で、法令に基づく技術基準への適合性を確認し、器差検定では、計量器の計量値が、法令で定められた範囲内なら合格となります。ここで、四つの計量器の器差検定をご紹介します。

はかりの検定

 重さをはかる「はかり」の検定には、基準分銅を使用します。そのため、東京都計量検定所には、1000分の1グラムから1トンまでの分銅が揃っています。最低目盛の10分の1の重さの分銅を一つずつはかりに載せ、表示される数字が一つ増える(四捨五入される)タイミングなども確認します。

分銅各種

浮ひょうの検定

 「浮ひょう」とは、液体の密度や比重をはかる計量器です。液体に浮ひょうを浮かべ、その沈んだ深さで測定します。その値が正しいかどうか、あらかじめ密度や比重が分かっている検定用の液体に基準浮ひょうと受検する浮ひょうを浮かべて、計量値を比較します。
 検査によっては、硫酸などの劇薬を使用するため、検定員は、防護服、ゴーグル、手袋などを着用します。更に、検定室には、人体に薬液がかかった際に、直ちに洗い流せるようシャワーが備えられています。薬液は完備された設備できちんと処理したうえで、排水されています。

浮ひょうの器差検定
器差検定:基準器と受検器の差(器差)を測定し、その差(器差)が定められた範囲内か確認する

燃料油メーターの検定

 この検定は、管轄内の全てのガソリンスタンド等に検定員が出向いて行います。正確な体積を示す法定の基準タンクに、大流量(例 40ℓ毎分)と小流量(例 8ℓ毎分)で燃料油を注ぎ、流量に関係なく、正しい計量値を示すかを確認します。

燃料油メーターの検定(ガソリンスタンド)

 ちなみに、ひと昔前に、水道から少量ずつ水を出すと、メーターが反応せず、水道代の節約になるという噂もありました。しかし、この燃料油メーターの検定からも分かるように、実際には、どれだけ少量ずつ水を出しても、水道メーターがしっかり感知するよう法令で技術基準が定められています。

タクシーメーターの検定(装置検査)

 タクシーメーター検査場に設置された基準器の上に車両を載せ、走行状態を再現した上で、メーターが走行距離を正しく計量しているかを確認します。管轄内のタクシー全てが、都内3カ所にあるタクシーメーター検査場のいずれかにて、1年に1度検査を受けなくてはなりません。

東京都計量検定所に行ってみよう!

 東京都計量検定所では、ここに紹介したような検定の見学が可能です。担当の方に案内してもらえますので、興味に合わせ、計量の単位、計量器の変遷など計量に関することが学べます。大人に限らず、お子さんやお孫さんの自由研究にも人気だそうです。(予約制です。)
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、対応できかねる場合があります。まずはお電話でご相談下さい。(令和2年9月取材時点)

取材を終えて

 当然のように使っていた正確な計量器ですが、今回の取材で、計量器の精度を心配せずに計量できることのありがたさ、便利さを、初めて考える機会を得ました。この大切さに気付き、明治維新の混乱の中、度量衡法を定めて現在の計量法につながる検定制度を確立した先人たちの、計量に対する意識の高さに感服するばかりです。

*  *  *

 東京都計量検定所では、例えば「購入した商品の実際の内容量がちょっと少ないような気がする」など、私たちのくらしの中の計量に関する様々な疑問や相談などにも対応してくれますので、何かあれば連絡してみてください。

東京都計量検定所についてのお問い合せ

東京都計量検定所 管理指導課 企画調整担当
TEL03-5617-6643
〒136-0075
東京都江東区新砂三丁目3番41号