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今月の話題

消費者団体訴訟制度の活用のために
~みんなで被害をストップしよう。知っておきたいポイント~

消費者庁消費者制度課
課長補佐 西川 功にしかわ いさお

 消費者被害の未然防止・拡大防止および被害回復を図る「消費者団体訴訟制度」をご存じですか?
 最近は、インターネットや新聞・テレビ・ラジオなどのメディアで、「消費者団体訴訟制度」や、それを担う「適格消費者団体」を取り上げた報道に接する機会も増えてきました。
 消費者団体訴訟制度および適格消費者団体の活動について、さらに多くの方々に知っていただき、消費者被害の防止等につなげていくためのポイントを整理しました。

消費者団体訴訟制度とは

 事業者による不当な勧誘行為、不当な契約条項、不当な表示に接して、多くの消費者被害を防ぎたいと思ったとき、みなさんはどうしますか。
 また、「支払ったお金を取り戻したい」と思っても、個人で訴訟を起こすのは、お金や時間、専門知識などの点で、難しいことも多いのではないでしょうか。
 「消費者団体訴訟制度」は、内閣総理大臣が認定した消費者団体(適格消費者団体・特定適格消費者団体)が、事業者に差止めや被害回復の訴訟などができる制度です。
 制度には、消費者被害の未然防止・拡大防止を目的とした「差止請求」と、財産的な被害の回復を目的とした「被害回復」の二つがあります。それぞれの内容や、どういった案件が対象となるのか、ポイントをみていきましょう。

差止請求

被害の未然防止・拡大防止
実施主体
適格消費者団体

被害回復

相当多数の消費者被害救済
実施主体
特定適格消費者団体

消費者被害を未然に防ぐ差止請求

 差止請求とは、適格消費者団体が、不特定多数の消費者の利益を擁護するために、事業者に対して、「不当な勧誘」「不当な契約条項」「不当な表示」など不当な行為をやめることなど(※)を求めることができる制度です。
※不当な行為の停止、予防又はそれらのために必要な廃棄・除去などの措置(例えば、勧誘マニュアルや契約書の廃棄・除去など)をとること。

 適格消費者団体は、消費者から寄せられた情報を基に検討し、差止めの必要があると判断した場合に、不当な行為をやめるように事業者に申し入れます。それでも事業者がやめない場合、適格消費者団体は、差止めを求めて裁判を起こすことができます。
 「適格消費者団体」は、令和2年9月末時点で、東京都内の2団体を含め全国で21団体があります。
 差止請求は、平成19年の制度開始以来、令和2年9月末までに約700事業者に対して申し入れがなされ、そのうち約70事業者に対し、差止めを求める訴訟が提起されています。

不当な行為が改善された例

  • 水漏れ修理事業者によるクーリング・オフ妨害など不当な行為の差止め
  • 消費者に損害が発生しても、事業者は理由のいかんを問わず一切補償しないことを定めた不当な契約条項の差止め
  • 専門学校の授業料不返還特約を定めた不当な契約条項の差止め
  • 定期購入が条件にもかかわらず、健康食品をお試し価格で1回のみ購入できるかのような不当な表示の差止め

被害回復は2段階型の訴訟制度

 被害回復とは、相当多数の消費者に共通して発生した財産的な被害(※)について、適格消費者団体の中から更に認定を受けた特定適格消費者団体が、訴訟を通じて集団的な被害の回復を求めることができる制度です。
※ただし、例えば治療費、精神的な損害である慰謝料、家電製品の発火による家具の損傷などの拡大損害等は、被害の個別性が高いため、この制度の対象にはなりません。

 特定適格消費者団体は、消費者から寄せられた情報を基に検討し、多くの消費者のために訴訟提起が必要だと判断したときに、消費者に代わってお金を取り戻すための訴訟を起こすことができます(個別事案の訴訟提起はできません。)。
 被害回復制度は、2段階型の訴訟制度であることが大きな特徴です。
 第1段階目の手続きは「共通義務確認訴訟」と呼ばれ、事業者にお金を支払う義務があることを確定させます。次に、第2段階目の「簡易確定手続」と呼ばれる手続きが行われ、消費者も参加します。ここで手続に参加した個々の消費者の誰にいくらの支払が認められるのかどうかを決めます。

被害回復の流れ

 最初に特定適格消費者団体が訴訟を行い、消費者はその勝訴を確認してから、手続に参加できる仕組みなので、個人で訴訟する場合に比べて、より少ない費用・労力で被害金額を取り戻すことができます。
 「特定適格消費者団体」は、令和2年9月末時点で東京都内の1団体を含めて全国で3団体あります。
 被害回復訴訟は、平成28年の制度開始以来、令和2年9月末までに5事業者に対して提起されています。

事業者(学校法人)の損害賠償義務が認められた判決

大学入試において、事前の説明なく女性や浪人生の得点調整を行っていた大学(学校法人)に対して、前記1段階目の訴訟が提起された結果、損害賠償として受験料などに相当する額の支払義務が認められました。
(東京地方裁判所令和2年3月6日判決・確定)

被害防止のためにできること

 皆さんからの情報提供が、多くの消費者被害の防止や被害回復につながる可能性があります。適格消費者団体では、電話、FAX、ウェブサイトなどで情報提供を受け付けています。
 また、多くの適格消費者団体では、自治体と連携し、被害の防止に向けた啓発講座などを例年実施しているところです。
 今後も、消費者被害の防止・救済に向けて、適格消費者団体が大きな役割を果たすことが期待されます。

東京都内の適格消費者団体への情報提供先

  • 特定非営利活動法人 消費者機構日本
    ※特定適格消費者団体としての認定も受けています。消費者被害の集団的な回復のための情報提供も受け付けています。
    TEL:03-5212-3066 FAX:03-5216-6077
  • 公益社団法人 全国消費生活相談員協会
    TEL:03-5614-0543 FAX:03-5614-0743
  • 全国の適格消費者団体の情報は、消費者庁HP(https://www.caa.go.jp/)をご覧ください。
  • 個別の消費者トラブルの解決を図りたい場合は、消費者ホットライン188(局番なし)にご相談ください。