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今月の話題

もったいない! 私の家の食品ロス

東京農業大学 国際食料情報学部
助教 野々村 真希ののむら まき

 食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」って、本当にもったいないですよね。食品ロスは限りある資源の無駄遣いであり、地球温暖化や食料自給率、飢餓の問題にも深く関係しています。ここでは、家庭の食品ロスに焦点を当てて、消費者として何ができるか、考えてみたいと思います。

あなたの家は大丈夫?

 「食品ロス」と聞くと、コンビニの恵方巻の廃棄や、レストランのバイキングの食べ残しなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、家庭から生じる食品ロスは、日本全体の食品ロス量の約45%(※)にも達し、日本人1人あたり1日お茶碗1杯分、お金に換算すると1世帯(4人家族)あたり年間約6万円に相当する食べ物を捨てていると推計されています。
 「うちはそんなに捨てていないぞ」と思われたでしょうか。そのように感じた方も、ぜひ一度、1週間に廃棄した食品を記録したり、冷蔵庫の奥や上の方、扉を点検したりしてみてください。思っている以上に捨てているもの、食べる見込みのないものがあるかもしれませんよ。
 なぜこんな意地悪なことを言うかというと、いくつのも研究で、消費者は自宅で出る食品ロスを実際よりも少なく見積もることが報告されているからです。捨ててしまう食品を記録するだけで、普段の生活でどれだけ食品を廃棄してしまっているかを自覚することができ、食品ロスが減る、という調査報告もあります。まずは自分の行動を知ることが、家庭の食品ロス削減の第一歩ではないでしょうか。

※平成28年度推計(農林水産省・環境省)

それ捨てるの、ちょっと待って!

 卵を食べようと冷蔵庫から取り出したら、期限が1週間過ぎていた。こんなとき、あなたはその卵をどうしますか?
 卵は消費期限か賞味期限、どちらが表示されているでしょうか?ほとんどの場合「賞味期限」が表示されています。過ぎたら食べない方がよいとされる「消費期限」と異なり、「賞味期限」はおいしく食べられる期限であり、過ぎたからといってすぐに食べられなくなるわけではないのです※。えっ、でもさすがに1週間も過ぎていたら危ないって?実は卵の賞味期限は、安心して生で食べられる期限を示したものです。十分加熱すれば、卵における食中毒の原因とされるサルモネラ菌は死滅するので、もっと長い期間食べられます。もっとも日本では、サルモネラ菌が付着している卵は、そもそもとても少ないのですが。
 卵に限らず、賞味期限は実際に品質を保持できる期間より短めに設定される場合が少なくありません。賞味期限の意味だけでなく、期限の設定方法や、それぞれの食品の保存性についても、ぜひ知っておいてください。そして、賞味期限を過ぎたからとすぐに捨ててしまうのではなく、その見た目やにおいなどにより、五感で飲食可能かどうか、判断してみてください。

※消費期限・賞味期限は、どちらも未開封の状態で、適切に保存した場合の期限です。

残り物も上手に消費

 賞味期限の過ぎた食品をすぐに「食べられない」と捨ててしまうことは問題ですが、そもそも期限が過ぎてしまう前に食べ切ってしまいたいものです。そのために重要なのは、冷蔵庫の残り物や期限の迫ったものを優先して使うことです。買いすぎない、余計なものを買わないことも重要ですが、買うときにその後の数日間に食べる量を正確に見極めるのは難しいところがあります。そのため、買った後にいかに使い切るかが、やはり重要になってきます。

 週に1回だけでもいいので、残り物を消費する日を設けてみてください。特に、特定のレシピのためだけに買った食品や、冷蔵庫の奥や上の方など目につきにくい場所にある食品にはご注意ください。このような食品は、つい後回しにされがちということが、これまでの研究で指摘されています。

食べ慣れない頂き物、冷蔵庫に捨てていませんか?

 家庭にある食品の中には、期限が切れるずっと前から食品ロス予備軍になっているものもあります。その1つが、食べ慣れない「頂き物」です。ある研究では、消費者に家庭の在庫点検をお願いしたところ、そのときに廃棄された食品の約40%が頂き物だったと報告されています。相手を想って贈り物をする文化そのものは大事にしたいですが、それが結局ゴミになってしまうとしたら、悲しいことです。
 新鮮なうちに、おいしく食べられるレシピを考えたり、周囲で食べてくれる方にお裾分けしたりできたらいいですよね。
 最近は、食品を福祉団体などに寄付する〝フードドライブ”という取り組みも活発になってきましたので、ぜひ活用していただければと思います。

食べ残し・過剰除去

 農林水産省は、家庭の食品ロスを直接廃棄(賞味期限切れなどによって利用されることなく廃棄される食品)、食べ残し、過剰除去(野菜や果物の皮むきなどで除去される可食部)の3つに分類しています。これまでにお話ししたことは、主に直接廃棄に関することでしたが、食べ残しや過剰除去による食品ロスも少なくありません。
 イギリスの調査では、子どもの食べ残しが多いことが報告されていますが、他方、神戸市の調査では、一人暮らしの高齢の方で食べ残しが多いとも報告されています。食べきれなかった場合は保存して、ぜひ次の食事に活用してみてください。数切れ残ったお刺身をしょうゆ漬けにしたり、少し残ったサラダにごま油をさっとふりかけたりすれば、次の食事でもきっとおいしくいただけますよ。
 過剰除去については、皮を薄く剥くことができないといった調理技術の問題だけでなく、普段の習慣から除去するのが当り前になっている、という場合もあります。ニンジンのヘタ周りやタマネギの芯も、少し刻んで料理に加えれば、おいしくいただくことができます。

お家の外でできること

 近年は事業者も食品ロス削減に動き始めています。飲食店などで余ってしまった料理や食材を買うことができる、〝フードシェア”と呼ばれるサービスが登場しました。また、これまで二の足を踏んでいたコンビニエンスストアが、期限の迫った商品の値引き販売をしたり、クリスマスケーキを予約制にして売れ残りが出ないようにしたりし始めました。
 消費者がこういったサービスを積極的に利用すれば、事業者はますます食品ロス削減に意欲的になるはずです。消費者と事業者の間で、いい循環を作っていければいいですよね。