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今月の話題

安心・納得して利用する家事支援サービス

小菅・島薗法律事務所
弁護士
島薗 佐紀しまぞの さき

共働き世帯や高齢世帯などにとって、家事の負担を減らせる家事支援サービスは、便利でありがたい存在です。でも、頼んでみたら思っていたサービスと違った、家具が傷ついたなどのトラブルが心配という方もいるでしょう。そこで、安心・納得して家事支援サービスを利用できるように、契約時に気をつけるポイントや、トラブルが起きた場合の対処方法などを解説します。

家事支援サービスとは

 掃除や洗濯など、日常の家事を代行するサービスを「家事支援(代行)サービス」と言いますが、厳密な定義はありません。本稿ではこれを、「事業者のスタッフが利用者宅を訪問し、主に利用者宅において、家事(掃除、洗濯、炊事など)の全部または一部を利用者に代わって行うサービス※」と捉え、安心・納得して利用する方法を解説します。
 なお、専門的な技術・機材で、エアコンや換気扇などの清掃を行う「ハウスクリーニング」については、日常的な家事ではないことから、本稿では扱いません。
 家事支援サービスの内容は、様々です。複数の家事を代行する場合と、特定の家事を代行する場合があります。また、スポット(単発)のサービスもあれば、定期サービスもあります。
 料金体系も、単価×時間で計算される場合、一回当たりの金額の場合、月額の場合など様々です。
 家事支援サービスの形態は、消費者が事業者との間で契約を結び、事業者から派遣されたスタッフが業務を行うことが一般的です。以下では、消費者が事業者との間で契約を結ぶ一般的な形態を中心に解説します。家事支援サービスとハウスクリーニングの概略図

※経済産業省「平成26年度 女性の活躍推進のための家事支援サービスに関する調査」における定義に基づく。

事業者をしっかり選ぼう

 家事支援サービスを事業者に依頼するに当たっては、複数の事業者を比較・検討し、提供するサービスの内容や価格が希望に沿っているか確認することが重要です。

①サービスの内容

 事業者の提供するサービスにどのようなサービスがあるのか、どのように利用できるのか(時間、回数)、どの程度の効果が見込まれるのかなどを、ホームページやパンフレットなどを見て、十分に確認しましょう。分からないことがあれば、遠慮なく事業者に質問しましょう。

②価格

 見積もりを書面で出してもらい、価格をよく確認しましょう。見積もりは、二社以上から取ることをお勧めします。

契約時に注意すること

 契約をする際には、契約書をよく読みましょう。そして、契約書に提供を受けるサービスの内容が正しく書かれているか確認しましょう。
 また、不適切・不合理な条項がないかなどをチェックしましょう。例えば、キャンセルした場合に高額なキャンセル料を請求するような条項や、トラブルがあった場合に事業者の責任を免責するような条項は、消費者契約法に違反する可能性があります。

提供されたサービスが契約内容と違う場合

 家事支援サービスの利用者から寄せられる相談の中には、契約書に記載された内容と、提供されたサービス内容が違ったというものがあります。そのような場合に、利用者は何が言えるでしょうか。

ケース1

 リビングと台所を2時間で掃除する契約だったが、時間が足りず台所の掃除が不十分だった場合。
 時間内に終わらなかった原因が事業者側にある場合(スタッフが1時間遅刻し、1時間しか掃除をしなかったなど)、約束した債務を履行していないとして、完全な債務の履行(遅刻した1時間分の掃除)を請求することが考えられます。場合によっては損害賠償を請求できる場合もあります。
 一方で、事業者との間で具体的な掃除内容を明確にしていなかったことで、期待する掃除がされなかったという場合もあります。このようなトラブルを避けるため、どこをどの程度掃除してほしいかなど、希望する掃除内容を、なるべく具体的に事業者に伝えておくことが大切です。

ケース2

 浴室の清掃をしてもらったけれど、汚れが残っていた場合。
 家事支援サービスのスタッフとしての注意義務を尽くさず、汚れが残ってしまったような場合には、汚れを落とすように求めるか、場合によっては、別の業者に依頼する場合の費用などを損害賠償として事業者に請求できる場合もあります。
 他方、汚れがこびりついていて、注意義務を尽くして清掃しても残ってしまったような場合には、それ以上の請求はできない場合もあります。

不注意で家財を破損した場合

 掃除の家事支援サービスを頼んだところ、物を落とすなどして家財を傷つけてしまった場合には、 何が言えるでしょうか。
 スタッフには、契約に付随する義務として、家財を傷つけないように注意する義務があります。その義務に違反したとして、損害賠償を請求できる可能性があります。破損箇所の写真を撮影するなど、証拠を残しておきましょう。

シェアリングエコノミーサービスの場合

 家事支援サービスは利用者と事業者との間で契約を結ぶ形態が一般的であることは前述のとおりです。一方で、最近では、事業者が提供するウェブサイト上で、 利用者と家事サービス提供者が出会い、直接契約を結ぶ形態(いわゆるシェアリングエコノミーサービスの一種)もあるようです。この場合、利用者と家事サービス提供者が直接契約を締結するため、トラブルがあった場合には、基本的に家事サービス提供者個人の責任しか追及できないので、注意が必要です。

クーリング・オフできるケースも

 訪問販売や電話勧誘販売で契約したケースなどでは、契約書を受け取ってから8日以内であればクーリング・オフできる場合があります。なお、契約書に不備がある場合には、8日を過ぎてもクーリング・オフできる場合があります。
 トラブルが起き、対処方法がわからない場合には、あきらめずに消費生活センターなどに相談しましょう。

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