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TOKYO景観探訪 - 都内にある歴史的建造物をご紹介

旧岩崎邸庭園(台東区)

緑豊かな敷地内に、国重要文化財が建ち並ぶ

 都立旧岩崎邸庭園は武蔵野台地の東端、本郷台地上に立地している。現代のように高層建築物のない時代、近隣のまちなみはもとより、房総半島や富士山などを一望できたという。逆に敷地外からは、石垣や塀にさえぎられて内部の様子がわからず、平成13年に都立公園になって一般公開(洋館は平成15年から)されるまで、庶民にとって憧れと畏怖が共存する場所であった。

 三菱財閥の創始者・岩崎彌太郎が明治11(1878)年にこの地を入手した後、彌太郎の長男で三菱第3代社長である岩崎久彌が整備し、明治29(1896)年に本邸とした。久彌は社交の場として洋館を、生活の場としての和館をそれぞれ建築。洋館に隣接して撞球室(ビリヤード室)も造られた。それらは通路でつながっており、往時は現在の3倍ほどになる約1万5,000坪の敷地に、20棟もの建物が並んでいたという。

 洋館の設計は、明治から大正にかけて日本の近代建築の礎を築いたジョサイア・コンドル。構造は地下室付きの木造2階建で、建築面積は約160坪。外壁は下見板張りのペンキ塗り仕上げ、屋根は天然スレート葺で、玄関上部が塔屋になり、庭園側には大規模な二層のベランダが設けられている。デザインは17世紀初めのイギリスで盛行した建築・工芸の様式であるジャコビアン様式を基調に、ルネサンスやイスラム風のモチーフが用いられている。その整然とした様に「邸宅建築こそ彼の真骨頂」といわしめる所以を垣間見る。
 現存している建物はこの洋館のほか、撞球室と和館の3棟。洋館と撞球室は昭和36年に、和館内の大広間と洋館の袖塀1棟が昭和44年に国の重要文化財に指定されている。

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所在地
台東区池之端一丁目
建設年
明治29(1896)年
設計
ジョサイア・コンドル(洋館)
規模
木造2階建(洋館)
最寄駅
東京メトロ千代田線「湯島」駅、都営地下鉄大江戸線「上野御徒町」駅、東京メトロ銀座線「上野広小路」

※平成30年1月中旬から平成30年10月末(予定)まで、洋館の外壁の塗り替え工事が行われます。