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今月の話題

だましの手口を知って、悪質商法に立ち向かう!

高齢者悪質商法被害防止キャンペーン月間特集
弁護士 間川 清(まがわ きよし)

減らないだまし犯罪の現状と対応策

 オレオレ詐欺や振り込め詐欺を含め特殊犯罪の被害件数は、近年減る傾向がありません。オレオレ詐欺という言葉が流行してからすでに10年以上も経過しているにもかかわらず、高齢者をはじめ、だまされてしまう人が、まだたくさんいるのです。また、オレオレ詐欺以外のだまし犯罪、悪質商法も、いまだに多く発生しています。
 このようなだまし犯罪、悪質商法への対応策として効果的なのは、「だましの手口を知る」ということです。
 相手の手口を知れば、いざだましの場面に遭遇した時、そのことに気が付いて、だまされずに済むのです。
 以下、典型的なだまし犯罪、悪質商法の事例を紹介します。

だまし犯罪・悪質商法について

事例1オレオレ詐欺

 Aさんの自宅に、息子を名乗る男性から電話がありました。なんでも交通事故を起こしてしまい示談金が必要とのこと。Aさんは、オレオレ詐欺ではないかと半信半疑でしたが、電話で話している息子の背後から、被害者の怒鳴り声が聞こえ、だんだんと「これは本当かもしれない。」と思うようになりました。息子は次に、警察官を名乗る男性に電話を代わります。男性は、「息子さんが交通事故を起こし、相手が刑事事件にすることを希望している。そうなれば、息子さんが刑務所に行くことになる。」とAさんに告げます。「息子が刑務所に行くなんて…」という思いで、Aさんはパニックになり、すっかり真実であると信じ込みます。その後、男性は「今すぐに示談金200万円を支払えば事件化せず、刑務所へ行くことはない。」と提案。Aさんは、誰にも相談することなく現金を用意してしまいます。その後、警察官を名乗る男性から連絡があり「私服警官が自宅まで現金を取りに伺う。」と言い、Aさんは私服警官に成り済ました男性に現金をだまし取られてしまいました。

解説
オレオレ詐欺の手口はどんどん巧妙化しています。最近では、この事例のように、息子に成り済ます犯人一人だけでなく、警察官役や被害者役、時には弁護士役などが出てきて、犯人側の作っただましのシナリオが、あたかも真実であるような手口を使います。これを劇場型勧誘と呼ぶことがあります。
 このような電話がかかってきた時に絶対にしてはいけないことは、その場で決めることです。相手はすぐに現金を支払うよう要求してきますが、その要求に応じてはいけません。
 また、予兆電話(携帯電話の番号を変えた等)があったら、特に警戒しましょう。オレオレ詐欺は今後も様々な手口を使ってくると思いますが、誰かに相談する等、その場で決めないという対応策を必ず守るようにしてください。

事例2不用品回収トラブル

 夫に先立たれたBさんは、夫が残した不用品の処分を考えていました。ちょうどそのとき、家のポストに不用品回収のチラシが入っていたため、その業者に依頼することに…。
 最初は見積もりをお願いし、15万円ということだったので依頼をしました。業者が荷物をトラックに積み込み、作業は終了。ところが精算の際、「作業をしてみたところ、思ったより荷物が多かったため、費用は30万円になります。」と突然、業者が言い出したのです。話が違うと思ったBさんは支払いを拒否したところ、業者の態度が一変。とても高圧的な態度で「払えないなら、荷物を全部トラックから自宅へ戻してくれ。うちは一切手伝わないから。」と言ったのです。高齢の女性であるBさんが、一人で荷物を運び出すことは到底できません。Bさんは泣く泣く業者に提示された請求額を支払いました。

解説
この事例のように悪質な不用品回収業者は、口頭でしか見積もりを出しません。荷物の積み込みを行い、荷物を元に戻すのが困難な状況を作り出し、当初の見積もりとはかけ離れた金額を請求してくるのです。
 このような業者を避けるためには、必ず見積もりを書面でもらうようにしましょう。またチラシ広告を出している業者が必ずしも悪質であるとは言えませんが、どの業者が信頼できるか、なかなか判断が難しいため、信頼できる人から紹介してもらった業者に依頼するなど、業者選びは慎重に行ってください。ただし、不用品の処分方法は、区市町村によって異なりますので、お住まいの自治体に早めに相談しましょう。

※一般の家庭から出る粗大ごみや不用品の収集・運搬を自ら業として行うには、一般廃棄物処理業の区市町村許可が必要です。許可を得ている事業者かどうかは、区市町村で確認できます。

※23区では、家電リサイクル法で定められている4品目を除き、家庭廃棄物の収集の許可をしていません。

事例3点検商法

 築40年の持ち家に住んでいるCさん。ある時、自宅にいると「無料で白アリ点検をします。」と業者が家を訪ねてきました。「キャンペーンでこの周辺一帯を訪問している。」という業者の言葉に納得し、普段から家の老朽化を感じていたCさんは、「無料ならいいか。」という気持ちで、点検を依頼します。
 業者はすぐにCさん宅の軒下を点検。結果として「ひどく白アリに食われています。」とCさんに報告します。疑心暗鬼のCさんに、業者は証拠として、木の柱に白アリがたくさん群がっている写真を見せます。「いつ家が傾いてもおかしくない状態なので、すぐに駆除した方がよい。」などとCさんを焦らせます。家が傾いてはたまらないと思い、Cさんは業者の言い値通りの金額で白アリ駆除を依頼し、お金を支払いました。
 後日、Cさんの家は、実は白アリの被害にあっておらず、業者がシロアリ駆除をした事実も全くなかったことが判明します。証拠写真も偽物であったことがわかり、Cさんは、自分がすっかりだまされてしまったことに気が付きました。

解説
人は、「無料」という言葉の響きに弱いものです。だます側の人間はそこをうまくついて、無料という言葉で相手をだまそうとします。当たり前のことですが、何の思惑もなく、無料で相手に何か施すことはありません。それを意識しておくことが必要です。
 無料をきっかけに相手をだまそうとする悪質商法はCさんの事例以外にも色々あります。
 安易に「無料」という言葉にのせられないこと、その場でお金を払うことを決めないこと、相手任せにせず自ら動いて調べること、等がこのような悪質商法にだまされないポイントです。

事例4サクラサイト商法

 最近購入したスマートフォンで無料占いの広告を見たDさん。興味本位で占い診断の登録をしました。送られてきた診断結果には「近いうちに大きな災いが降りかかる。」と書いてありました。ついつい続きが気になってしまったDさんは、ポイントを購入して続きの診断を受けてしまいます。最初は数百円のポイント購入でしたが、気が付いたら50万円もポイント購入に使っていることに気が付きました。診断を受けた占いサイトから情報が漏れていたらしく、別の占いサイトからも、しつこく勧誘のメールが来るようになってしまいました。

解説
スマートフォンをきっかけにしただまし犯罪や悪質商法も増えています。占いであったり、出会い系サイトなど、最初は無料と言っておきながら、いつのまにか有料化されており、気がついたら大金を失っていたということがあり得ます。無料だからといって安易に利用するのは避けましょう。トラブルになった場合には一人で悩まず、周囲に相談することが大切です。また、周囲の人も、家族や親しい友人で悪質商法にだまされている様子が見受けられたら、積極的に声かけをしましょう。

だまされてしまった場合の対処法

 だましの手口を知っていれば、多くの悪質商法は未然に防げると思いますが、それでもだまされてしまうことはあります。
 そんなとき、オレオレ詐欺や振り込め詐欺のような場合には、まずは最寄りの警察署へ連絡してください。警察へ通報することで、新たな被害者を出さないことにもつながります。
 悪質商法のような契約トラブルの場合には、クーリング・オフにより、契約を取り消すことができる場合があります。クーリング・オフは、時間の制限等色々な条件があるので、自分で判断することが難しければ、お近くの消費生活センターなどの消費生活相談窓口に相談しましょう。
 平成27年7月より、電話局番なし188に電話することで、地方公共団体が設置している身近な消費生活相談窓口を案内してくれるサービス(消費者ホットライン)が始まっていますので、利用してみてください。
 また、東京に設置されている3つの弁護士会が運営する法律相談センターでも相談対応をしているので、連絡してみてください。
電話0570-200-050 ※都内からのみ)

※東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会