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今月の話題東京都消費者月間特集
生産者と消費者をつなげる
エシカルな消費スタイル

一般社団法人 エシカル協会
代表理事 末吉 里花(すえよし りか)

エシカルとの出会い

 皆さん”エシカル“という言葉を聞いたことがありますか?「エシカル」とは、地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、地球環境、地域に配慮したお金の使い方や生き方のことを言います。皆さんが普段食べたり、飲んだり、着たり、使ったりしている製品は全て、誰かがどこかで作ってくれています。しかし、今の世の中では、私たち消費者が製品を手にした時、その裏側にはどんな背景があるか、なかなか知ることができません。もしかしたら、その背後には劣悪な環境で長時間働く生産者や、教育を受けられず強制的に働かされている子どもたち、美しい自然やそこに住む動植物が犠牲になっているかもしれません。「エシカル」な消費とはそういったことがないような製品を購入することであって、いわば「顔の見える消費」とも言えます。今、世界の緊急課題である、貧困・人権・気候変動の3つの課題を同時に解決していくために、「エシカル」という概念が有効だと言われています。「エシカル消費」とは、「フェアトレード※」を筆頭に「オーガニック(有機栽培)」や「地産地消」、「障害を持った方が作った商品」、「応援消費」、「伝統工芸」など幅広い消費の形があります。
 私が今、「エシカル」を推進する活動をしているのは、過去、某テレビ番組で、ミステリーハンターとして世界中の秘境を旅する貴重な機会を与えてもらったことからです。現地に生きる人々と過ごす時間を通して、実に多くのことを学びました。中でも人生のターニングポイントとなったのが、平成16年アフリカ最高峰のキリマンジャロ登頂です。キリマンジャロの頂上には氷河が横たわっているのですが、地球の温暖化により平成22年頃には完全に解けてしまうだろうという予測が、科学者によって発表されました。一体どのくらい解けているのか確かめにいくという取材だったのですが、登り始める前に麓(ふもと)に暮らす小学校を訪ねたところ、小さな子どもたちが植林活動をしていました。彼らにとって氷河の雪解け水は生活用水なので、氷河が解けて無くなってしまうということは、死活問題だったのです。頂上にたどり着いたとき目にしたのは、1割程度しか残っていない氷河でした。温暖化の影響を目の当たりにした私はショックを受けました。限られた少数の人たちの利益や権力のために、立場の弱い人や美しい自然が犠牲になっている、この実情を多くの人に伝えたいという使命感が湧きました。

※フェアトレード…公正な貿易を通じて、立場の弱い途上国の生産者の生活を改善し、自立を支援する仕組みのこと。

途上国の生産現場の現状

 そもそも、なぜエシカル消費が必要なのでしょうか。それはエシカル消費を推進していかなくてはいけない不公正な世界の現状があるからです。皆さんは、普段自分が着ている洋服は、どこで、誰が、どのように作っているかわかりますか?恐らく、ほとんどの方は知らないでしょう。なぜなら、私たち消費者は製品を手にとっても、その裏側にある情報をほとんど受け取れないからです。つまり、製品の背景を全て開示している企業はまだまだ少ない、ということです。私たちは日々何らかの消費をして生活していますが、毎日着る洋服の原料となる綿やコーヒー、紅茶、チョコレートの原料となるカカオなど、多くのものは途上国で作られています。その生産背景には、労働搾取や児童労働、環境破壊といった深刻な問題が潜んでいます。平成25年4月に起きたバングラデシュの縫製工場ラナプラザの崩壊事故では、1,100人以上の生産者が犠牲になりました。ここでは主に、私たち先進国の消費者が安いといって好んで購入するファストファッション※のブランドの商品が作られていたのです。私たち消費者が積極的に求める安い商品の裏には、弱い立場にある途上国の生産者の犠牲があるといっても過言ではありません。
 人権、環境問題を引き起こしているグローバルイシュー(世界が抱える課題)の中でも、早急に取り組むべき課題は、綿の生産のあり方です。世界で約1億世帯の農家が綿生産に従事しており、そのうち90%は途上国の人たちです。インドやウズベキスタンでは深刻な児童労働も行われています。また、世界中の農耕面積のわずか2.5%足らずの綿農場で、世界の殺虫剤の約16%が使用され、年間20億ドル相当の農薬が使用されています。(データ提供:NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン)しかも途上国の綿農家は農薬を扱う教育を受けていないため、マスクもせず上半身裸の状態で作業をします。その結果、毎年農薬による健康被害で2万人が亡くなり、300万人が慢性の健康被害に苦しんでいるという報告(世界保健機関〈WHO〉)があるのです。日常的に多くの綿製品を消費、使用している私たち消費者にとって、綿生産の現実は決して遠い世界の問題ではない、ということがお分かりいただけるでしょう。

※ファストファッション…流行を取り入れつつ、低価格で衣料を大量生産し、短いサイクルで販売するブランドや業態のこと。

私たちにできること

 一方、先進国に住む私たちは、どのような関わり方でエシカル消費を推進していけばよいのでしょうか。 私たち全員に共通することは、消費者であるということ。毎日何らかの消費のために大切なお金を使っています。企業にとって消費者の存在は無視できず、私たち消費者が何を求めるかによって、企業の生産のあり方が左右されるはずです。そう考えたとき、私たち消費者が持つ力は絶大であり、それぞれが「誰が、どこで、どうやって、どのように作った製品か」を意識しながら買い物をすることが重要です。また、企業やスーパーに、「フェアトレード商品は置かないのか?」「この製品の生産過程を知りたい」と掛け合ってみるのも効果があります。毎日の消費行動は、個人的な営みにとどまりません。人や環境や社会、ひいては未来にも影響を与えていることを一人ひとりが自覚しながら生活することで、社会を変えていくことができるのです。「エシカル」とは「いきょうを っかりと んがえことなのです。
 全てのモノをエシカルに切り替えることは誰にもできません。でも、5枚買っていたTシャツのうち1枚をオーガニックコットンにしてみる、いつもの1杯をフェアトレードのコーヒーにしてみる、地元の農家さんから直接野菜を購入してみるなど、小さなことから始めてみてください。きっと自分にとっても新たな発見や喜びがあるはずです。

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エコプログラム

末吉 里花さんが登場される月間事業のご案内です。

2017年124日(火) 13:30~15:30
会場/東京都消費生活総合センター 17階 教室I・II

学習会 「エシカルな消費スタイル ~買い物で社会貢献~」

講師/末吉 里花さん(一般社団法人 エシカル協会代表理事/フリーアナウンサー)

東京都消費者月間実行委員会事務局 
TEL:03-3267-5788 FAX:03-3267-5787

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