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web版 くらしに役立つ都民のための消費生活情報誌 東京くらしねっと平成27年 2015 No.220 8月号

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今月の話題 災害時への備え
~避難生活とトイレ問題を考える~

株式会社防災都市計画研究所
吉川 忠寛(よしかわ ただひろ)

東京は、戦後70年を経て、目覚ましい経済発展をとげ、私たちは豊かな生活を享受できるようになりました。しかし、人智を超えた自然災害の前では、私たちの豊かな生活は一瞬にして無に帰してしまいます。私たちにはどんな備えができるのでしょうか?

イラスト 災害時への備え

応急対応から事前対策を考える

 東京都内の大半で震度6以上の揺れが想定されている首都直下地震に対して、どのように備えればよいでしょうか?すぐに「○○の備蓄」や「○○の訓練」などの事前対策が思い浮かぶかもしれませんが、ここでは地震防災対策の手順を追って考えてみましょう。その手順とは、地震や地域の条件から被害をイメージし、その被害(危険)に対する対応の流れを時系列で考え、とくに大事な対策から事前に備えることです(図1)。

【図1】交通人身事故における自転車関与事故の推移
【図1】地震防災対策の手順

 まずは、①地震や地域の条件について、地震の規模や揺れの特徴、発災時間、地域の地形や建物の状況等から自宅周辺の被災状況をイメージしてみましょう。行政の被害想定などの情報を自分で集め、実際にまちを歩いて想像することが大切です。そうすると、地盤の崩壊や液状化、建物やブロック塀の倒壊、火災の発生と延焼などの身近な被害が見えてきます。
 次は、②こうした危険(被害)に対する対応方法を考えます(「被災・対応シナリオ」)。例えば、地震火災の場合には、まず、消火器を用いて初期消火をし、間に合わなければ玄関ドアを閉めて、周囲に火災発生を知らせながら素早く、安全な避難場所まで避難します。
 最後は、③こうしたシナリオが本番でうまく機能するためには周到な「事前対策」が必要です。例えば、先程の火災ですと、最も懸念される電気火災を防ぐため、自動的にブレーカーを遮断させる通電火災防止装置の設置、消火器の現状確認や補充、避難場所やそこに至る安全な避難路の検討(避難計画)、それに基づく避難訓練などを家族や地域で備えます。もちろん建物の耐火化や消火設備等の充実化も必要です。これら災害対応に必要な人、モノ、情報、空間等の防災資源の現状を事前に調べて地図に記し(「災害危険・資源マップ」)、それを効率的に用いる計画や訓練を続けることが重要です。
 さらには、東日本大震災で注目された「想定外」の被害や外出先での対応のイメージ(帰宅困難者としての備え)を持っておくことも大切です。

在宅避難の勧めと共助の対策

 地震直後の「命を守る段階」で何とか生き残れた皆さんは、その後、「一時的な生活を確保する段階」に入ります。そこで、もし自宅が半壊被害の場合、避難生活をどこで過ごしますか?避難所、自宅、あるいはそれ以外ですか?
 もし避難所生活なら、ちょっとした覚悟が必要です。
 避難所での最大の問題は、膨大な避難者が殺到することによる避難所の「オーバーフロー(人員超過)問題」といえます。これに対しては、もちろん避難者収容施設を増やす対策(民間施設を含む)が必要ですが、それと同様に、施設利用者を減らすことが重要です。たとえば、在宅避難者を増やす、自助の備蓄を増やす、親戚の家にお世話になる、地方に疎開する等です。
 避難所より、在宅避難生活に備える方が合理的だと考える人が増えれば、避難者数の軽減につながることが期待されます。これには、在宅避難者への支援体制づくりも必要ですが、各家庭での日頃からの備えがとても大切です。ここでは、日常品を少し多めに備える「日常備蓄」の考え方を参考にあげます。「日常備蓄」はご家庭で実践できる対策です。(図2「日常備蓄のイメージ」参考)

【図2】日常備蓄イメージ図
【図2】日常備蓄イメージ図

【写真1】阪神・淡路大震災後の神戸市内の避難所の様子
【写真1】阪神・淡路大震災後の神戸市内の避難所の様子

 さて、避難所開設時の人員調整が落ち着いた後も、避難所運営の課題が山積みです。排泄、飲食、洗顔、着替え、就寝など、平時には各家庭で行ってきた生活の営みが、いきなり大所帯による共同生活・共同運営を迫られる訳ですから、不便・窮屈な生活へのストレスや不安はとても大きいはずです。
 それでは、避難所運営の作業は誰がやるのでしょうか?避難者は「上げ膳据え膳」でよいのでしょうか?避難所の組織体制を素早く構築できないと、混乱状態が益々悪化してしまうかもしれません。避難者の協力・作業分担は必要不可欠です。

トイレ問題に自助から取り組む

 在宅避難生活には、自宅の耐震補強、室内家具の転倒防止、トイレ、水、食料、生活物資、衛生用品の備蓄などの備えが考えられますが、ここでは、その中でもとくに、災害後すぐに必要となり、それを我慢することが困難で、場合によっては健康に重大な影響を及ぼす、「トイレ問題」を取り上げます。
 トイレ問題は、地震によるトイレ設備や下水管きょ・下水処理場等の被害、それに関わる水や電気の供給停止等によって、平時の下水道システムが破壊され、トイレが使えなくなること、また、それに伴うトイレの不足や衛生問題、トイレを我慢することによる病気や死亡に至る問題と捉えます。
 こうしたトイレ問題にどう対処すればよいのでしょうか?行政も避難所運営本部も外部の支援が入るまでは、すぐに十分なトイレを確保することは極めて困難です。少なくとも自分が納得できる量と質のトイレは自分で確保するしかありません。自宅での代替トイレの準備はそう難しいものではありません。誰でもすぐにでも着手できます。
 トイレ問題に対する自助の備えとしては、トイレ被害を確認した後、代替トイレの設置と排泄物の処理等が必要です。排泄物の処理は、液体状のものを捨てやすく固めることと、捨てるまでの間の悪臭を消すことが必要です。
 代替トイレには、携帯型、簡易型、組立型、マンホール型、仮設型、自己処理型、車載型などの種類があります。家庭で最も簡単にできるのが携帯型(便袋)です。自宅の下水管が被害を受けた場合でも、便器が使えれば、便器に便袋をかぶせて使えます。便袋の中に凝固剤・消臭剤を入れておけば排泄物はベランダに保管し、燃えるゴミの日に出すことができます。なお、トイレットペーパーは分別処分します。ただし、便器が使えない場合には、簡易型トイレを使います。これは段ボールやイスを改造して作ることも可能です(写真2)。

【写真2】東日本大震災後の大槌町安渡地区における手づくりのトイレ
【写真2】東日本大震災後の大槌町安渡地区における手づくりのトイレ

 「おがくずトイレ」は、ある講演会で防災にとても熱心な女性が教えてくれました。ポリバケツ(15リットル)、ポリ袋(30リットル)、おがくず、トイレットペーパーがあればできます(図3)。ポリバケツにしゃがみ、ポリ袋に排便し、その便におがくずを振りかけるだけです。また、便と尿は分けた方がよく、尿はじょうごを使い、ペットボトルに入れるとよいそうです。
 要援護者の方々や、オストメイト※の方々には専用トイレが必要です。このような様々な事情をお持ちの方のトイレ対策も欠かせません。
 最後になりましたが、防災対策は「想像力」と「協働力」が大切です。災害時の被害をよく「想像」し、自助・共助・公助のできることから「協働」(連携)を模索します。公的機関や自主防災活動への不満ばかりを口にしていても始まりません。まずは自助でトイレ対策から始めてみませんか。あなたの行動に感化された人たちによって、備えの輪が広がっていくかもしれませんよ。
※オストメイト:大腸ガンの手術等によってストーマ(人工肛門等)を造設している方

【図3】「おがくずトイレ」のイメージ
【図3】「おがくずトイレ」のイメージ

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