東京くらしねっと 4月号

東京くらしねっと 4月号

今月の話題 食物アレルギーを正しく知ろう

独立行政法人国立病院機構 相模原病院
臨床研究センター アレルギー性疾患研究部長

海老澤 元宏(えびさわ もとひろ)

◆食物アレルギーの正しい理解を
◆重要なのは「正しい診断による必要最小限の食物除去」

イラスト 食物アレルギーを正しく知ろう

食物アレルギーの正しい理解

 厚生労働省科学研究班の調査などから、現在わが国では、1才の10人に1人、3才で20人に1人が、何らかの食物に対してアレルギーを起こすと推定されています。文部科学省の調査によれば、保護者による学校への食物アレルギーの申請は、2004年に2.6%でしたが、2013年には速報値として4.5%と報告されています。
 食物アレルギーとは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して、生体にとって不利益な症状が惹起(じゃっき)される現象」と定義されています。
 食物アレルギーのメカニズムの大部分はIgE(免疫グロブリンE)という生体内の微量なタンパク質が介在して起こることが知られています。IgE抗体は皮膚・腸粘膜・気管支粘膜・鼻粘膜・眼球結膜などに存在するマスト細胞に結合した状態で食物アレルゲン(アレルゲンとはアレルギー反応を起こすもとのIgE抗体と結合するタンパク質)と出会うことにより、マスト細胞から化学伝達物質が放出され、我々にとって好ましくないアレルギー反応が引き起こされ、症状が誘発されます。
 IgE抗体依存性の反応の場合には、食物を摂取した直後から2時間以内ぐらいにアレルギー反応を認めることがほとんどです。したがって、食物アレルギーを起こす物質は基本的には食品中のタンパク質です。わが国で多く認められる食物アレルギーの原因食物は、鶏卵・牛乳・小麦・甲殻類・果物類・ソバ・魚類・ピーナッツ等ですが、食物アレルギーは小児と成人で原因食物が異なり、様々な臨床病型が存在します。

食物アレルギーの症状と臨床病型

 食物アレルギーによって誘発される症状として【表1】に示すような症状が出現します。【表1】食物アレルギーにより引き起こされる症状
 即時型症状に引き続き、血圧低下により脱力状態に陥り、緊急に対応しないと生命に影響を及ぼすアナフィラキシーショックを起こす場合もあるので注意が必要です。
 離乳期以降、本人が直接食物を摂取すると、幼児・学童・成人も含め、じんましん・紅斑などの皮膚症状や呼吸困難などの急激な反応(即時型症状)が出現することが多くなります。
 即時型のタイプの特殊型で最近増えている食物アレルギーに「口腔アレルギー症候群」があります。幼児・学童・成人に果物(キウイ、バナナ、メロン、モモ、パイナップル、リンゴなど)や野菜などで、口の粘膜や口周囲の皮膚にじんましん反応を起こすことがあります。果物アレルゲンの場合には、加熱処理することによりアレルゲン性が減弱あるいは消失してしまうことも多く認められます。
 口腔アレルギー症候群のメカニズムは、シラカバやハンノキなどの花粉に対して、IgE抗体が作られている花粉症の患者において、バラ科の果物(リンゴ・ナシ・サクランボなど)を摂取した際に、果物中の花粉のある成分に似ているタンパク質に、反応してしまうことにより発症します。
 特定の食物と運動の組み合わせでじんましんから始まり、呼吸困難、そしてショック症状に至る場合を「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」といいます。我が国では原因として小麦・甲殻類などが多く報告されています。
【表2】臨床型分類  以上述べてきた臨床型分類【表2】は後述する「食物アレルギーの診療の手引き2011」にまとめられています。

食物アレルギーの診断

 即時型症状の場合には、誰の目にも明らかな症状が出現するので、詳しく話を聞けば、原因食物の診断はそれほど難しくありませんが、「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」の場合には、湿疹がコントロールされていない状況では、食物が関与しているかの判断は困難です。
 食物アレルゲンに対するIgE抗体の検査や皮膚テストによるIgE抗体の証明が、診断の補助的意味しか持たないことも、食物アレルギーの診断を難しくしています。最終的には、食物除去試験や食物経口負荷試験によって、食物アレルギーの診断を確定します。食物経口負荷試験は、症状への対処に慣れた、食物アレルギーを診療している専門医において施行されるべきです。血液検査や皮膚テストが陽性という理由だけで、ずっと必要のない食物除去を指導されている場合もあります。食物経口負荷試験を基本とした「正しい診断による必要最小限の食物除去」は、非常に重要です。

食物アレルギーの管理

 「正しい診断による必要最小限の食物除去」が食物アレルギーの基本的な対応・管理です。これには、さまざまな意味が込められています。
 小児期の食物アレルギーの中で最も多い「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」とその後に移行する「即時型」では、そのほとんどが乳児期に発症し、3才までに約5割、小学校入学までに約8~9割が寛解します。したがって「食べられるようになったのでは」ということを前提に、定期的に特異的IgE抗体検査や食物経口負荷試験を行う必要があります。
 乳児期に発症する食物アレルギーは、鶏卵・牛乳・小麦・大豆の順に頻度が高いですが、一般的に改善が見られる順番は頻度の高さに反比例し、大豆・小麦・牛乳・鶏卵の順です。しかし、食物アレルギーは、個々に原因、治り方、検査データが異なるので、指導を一般化せずに個別に的確に診断し、対応していくことが重要です。
 食物経口負荷試験後の食事・栄養指導に管理栄養士が関わってくれると、食生活の質の向上につながります。

アレルギー物質を含む食品表示

 発症頻度が高いか重篤な症状を誘発しやすい食物(特定原材料等)に対して、微量でも含有している場合は、原材料表示されています。ただし、表示の対象は容器包装された加工食品のみで、店頭販売品や外食は対象外です。原因食物の除去を実践する上で重要な情報であり、患者および保護者に情報提供するべきです【表3】。
 表示品目については、3年に一度、見直しが行われています。

【表3】加工食品に含まれるアレルギー表示

消費者庁 アレルギー表示Q&A
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin12.pdf

おわりに

 学校でのアレルギー対応としては、日本学校保健会から「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が発行され、保育所については、厚生労働省より「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」が発行されています。
 また、厚生労働科学研究の”食物アレルギーの研究班“において「食物アレルギーの診療の手引き2011」および「食物アレルギーの栄養指導の手引き2011」が発行され公開されています。食物アレルギーの診療のレベルの向上と、患者の生活の質の改善を目的として専門家が集まり作成しました。医師のみならず栄養士などコメディカルや一般の方にも分かりやすく解説されており、食物アレルギー研究会(※)等のHPからPDFファイルでダウンロード可能なので参考にして欲しいと思います。

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