東京くらしねっと 9月号

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今月の話題 高齢者被害防止キャンペーン月間特集 だまされる高齢者の心理イラスト 高齢者

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だまされない人はいない

 だまされるということは、恥ずかしいこと、避けるべきことと思われるでしょう。しかし、だまされるときによく起こる「思い込み」や「勘違い」、あるいは、日常の「くせ」は、誰にも普通に起こることです。笑ったり、悲しんだり、喜んだり、不安になることを、恥ずかしいとかやめようとか思わないのと同じように、だまされる最中に起きがちな思い込みや勘違いと、全く縁の無い人はいないのです。こう考えると「だまされない人はいない」のです。普段の生活においては、思い込みで行動したり、勘違いが起こっていても、大きく損をしたり、他人に迷惑がかからないように世の中ができています。
 ところが、悪質商法では、普通ならば問題にならない程度の思い込みや勘違いをしただけ、あるいは、常識として当たり前のことをしているだけなのに「だまされる」ように筋書きが書かれているのです。悪質商法にだまされることは不思議なことではありません。とすれば、悪質商法から逃れるのは難しいことなのでしょうか。
 悪質商法にだまされにくくするヒントを探すためにも、悪質商法の特徴、特にだまされる心理からみた特徴を、整理してみましょう。

肩書・身分でだます

 自転車に乗っているときに警察官の指示に従い、停止したりするのは当たり前です。こうした指示に従わない人は、危険にさらされることになります。それだけに、警察官の指示を端から疑う人はいません。こうした警察官に対する「信頼」が、悪質商法や詐欺に利用されています。また、信頼できるのは警察官に限りません。自治体の職員や弁護士、医師などへも厚い信頼が寄せられています。偽物の制服や身分証を身につけ、こうした肩書きをかたることで、だましの内容を本当と思わせています。

感情を揺さぶる

 息子が会社のお金を使いこんだなどの身内が起こした事件や事故の連絡や、年金などを受け取るための銀行口座が犯罪に利用されたので口座を使えないといった知らせを急に聞かされると不安になります。不安をかきたてられる内容を、予告もなく突然に伝えてくるのは、振り込め詐欺や悪質商法ではよくある手口です。他にも、東京五輪のための施設整備や選手育成の助けにもなるもうけ話や、東京五輪の入場券が特別に手に入る、払い過ぎた税金や年金が急に戻る(還付される)、過去の悪質商法被害が救済される、などといった連絡はうれしいと思います。これらも最近の詐欺や悪質商法の手口です。
 「うれしい」、「不安」といったことを感じること自体は、人間のこころの自然な働きです。しかし、こうした感情がわき上がると、慎重さを欠く判断をすることがあります。また、こうした感情を揺さぶる話の全てがうそではありません。悪質業者は、最近のニュースをよく調べ、実際に自治体が行っているサービスや指示を、だますために一部分だけ都合良く書き換えているので、どこにうそがあるのか分かりにくいのです。

イラスト 感情を揺さぶる

決定をせかす

 予想していなかった感情への揺さぶりに加えて、告げられた事実の確認やもうけ話の内容をしっかり考える、時間の余裕を与えないことも悪質商法の手口です。悪質業者は「今日中に」などと即座の支払いや契約を求めたり、通帳やカードを引き渡すよう要求してきます。たとえば、あなたの口座が犯罪に使われたので、今日中に預金を下ろして、別の口座に移し替えなければならない、今日中に申し込んだ人だけが東京五輪の入場券を特別に手に入れられる、先着10名に限って五輪関連のもうけ話に参加できる、などの台詞(セリフ)で私たちを焦らせます。私たちは、うれしくなったり、不安が高まっているときにせかされると、事実を確認するなどの慎重さを欠くこともあります。そうなると、信頼できる職業・肩書の方々の勧めならば大丈夫といった、思い込みに頼ることもあるでしょう。
 「火事だ」という叫びを聞いて、本当に火事が起きたのか慎重に確認していては、火事から免れることは難しくなります。避難するために非常口を確認する、誘導に従い、できるだけ速く移動するといったことが必要です。緊急時に素早く行動するためには、慎重さを犠牲にし、直感的に判断すべき場合もあります。これは私たちの賢さでもあります。悪質業者はこれを悪用し、私たちをせかすことで、偽りの「救いの手」や「もうけ話」であっても、私たちが信用するように仕向けるのです。

そのほかの特徴

 悪質業者は、ドラマの役者のように複数の異なる立場の人物を登場させて、うそを見破られにくくもしています。たとえば、証券会社の社員をかたった人がもうけ話を持ちかけ、その後、新聞記者や自治体職員などのもっともらしい肩書きや身分をかたる人が、そのもうけ話は信用できると言ったりするなどがあります。

悪質商法への対策

 悪質商法になぜだまされてしまうのか、だまされる心理を説明してきました。だます側は、毎日、多くのだましを試みる中で、その手口を見直し、作り話を「真実」のように作り込みます。これに対抗する4つのヒントを紹介します。

イラスト 悪質商法

❶「自分もだまされるかも」

 悪質商法への対策の第一歩として「だまされない人はいない」、言い換えると、「自分もだまされるかも」と感じていただきたいのです。「自分もだまされるかも」と感じることから、悪質商法は身近なものとして注意を向けて欲しいと思います。

❷電話連絡がしづらいと思わせましょう

 高齢者を狙う悪質商法の多くは、電話を使って私たちに連絡をとり、指示を送ろうとします。悪質業者から電話連絡がしづらいと思わせる、または、こうした電話を私たちが取らずにすむようにすることは有効な対策です。たとえば、東京都においては、「自動通話録音(警告)機」(振り込め詐欺見張隊)という電話機につなぐ機械を、近くの警察署を通して無料で貸し出してもらえます(※)。この機械は、電話に出る前に「犯罪防止のため、会話内容が自動的に録音される」ことを発信者側にアナウンスします。通話内容が録音されることを嫌がる悪質業者は、この時点で電話を切ってしまいます。もし、電話を切らなかったとしても、通話の内容は録音されますので、警察の捜査協力にもなり、被害拡大の予防にも貢献します。こうした機械を使う以外にも、特に昼間、銀行の営業時間帯を中心に留守番電話を使うと、悪質商法に関わる電話に出ずにすむ場合が増えるでしょう。

イラスト 自動通話録音

❸宅配便やゆうパックで現金送付と言われたら、すぐに警察へ

 宅配便などで現金を送ることは、違法です。いくら弁護士や警察官を名乗る人が勧めたとしても、それは「うそ」です。すぐに警察に連絡しましょう。

❹目立つ色、立派な紙の封筒・パンフレットがあれば要注意

 もうけ話に関する資料は、どこに置いてもすぐ見つかるように、目立つ色、立派な紙でできた封筒やパンフレットで送られてきます。ご家族やお友達、知人の身の回りで、こうした見知らぬものを見つけたら「これは何?」と尋ねてみてください。悪質商法の被害を未然に防ぐきっかけになります。

イラスト 封筒やパンフレット

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