東京くらしねっと 5月号

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今月の話題 薬の買い方はどう変わる? ~薬のネット販売解禁~ 慶應義塾大学薬学部教授 福島紀子(ふくしまのりこ)・薬は信頼できる薬局から購入しよう ・ネット上での情報の「保護」と「活用」には課題も ・一般用医薬品OTC薬は正しく使おう

今月の話題 薬の買い方はどう変わる? ~薬のネット販売解禁~

今月の話題 イラスト 薬局でもネットでも薬を購入する際はしっかり情報収集しましょう!

薬のネット販売解禁?

 昨年は、一般用医薬品のネット販売の問題が、新聞・テレビなどのマスコミで多く取り上げられました。その後のニュース等では「医薬品のネット販売解禁」あるいは「薬のネット販売解禁」といった見出しが見られ、あたかも医薬品のすべてがネットで購入できると勘違いされた消費者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。医薬品は大きく2つに分けられます。医師の処方せんが必要な「医療用医薬品」と、医師の処方せんなしに購入することができる「一般用医薬品」です。ネットで買える薬は、あくまでも一般用医薬品(以下、「OTC薬」という)のことであることをしっかり理解してください。

 さて、改正薬事法(改正後の名称:医薬品・医療機器の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律)では、OTC薬の定義は、「医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであつて、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの(要指導医薬品を除く。)をいう。」となりました。健康被害が生ずる恐れが予想される成分により、特にリスクの高い第1類、リスクが比較的高い第2類、リスクが比較的低い第3類に区分されているのはこれまでと同じです。改正前と違うのは、「要指導医薬品を除く」という言葉が入ったことです。要指導医薬品とは、今回新設された分類です。その適正な使用のために薬剤師による対面での情報提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要であり、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定します。具体的には、医療用医薬品だったものが一般用医薬品にスイッチ(移行)され原則3年を経過していないものや、毒薬、劇薬等のことです。したがって、要指導医薬品はネットで購入することができません。

(図1)医薬品の分類と販売方法

薬の買い方はどう変わる?

 薬のネット販売解禁は、消費者にとっては、OTC薬の購入方法の選択肢が増えたということだと思います。場所や時間の制約がなく、薬局へ行かなくても、クリックひとつでOTC薬を自宅まで郵送してもらえます。ネット上に書いてある情報を読み、分からないことがあったら、そのサイトに記載されているアドレスや電話番号にメールするなり電話をすることで、常駐する薬剤師あるいは登録販売者 ※ と相談できます。薬局やドラッグストアが近くにない場合、障害を持つ人や高齢者など外出の負担が大きい人、子供の世話や家庭内介護、共働きなど日常生活のサイクルに追われることが多く、忙しくて薬を買う時間が持てない人などにとっては、ネットが便利かもしれません。妊娠検査薬や痔の薬など、対面での購入をためらいがちな薬などは買いやすくなるかもしれません。ただし、自己判断だけで購入したときには、本来は医療機関で受診しなくてはならない症状を見落としてしまう恐れもあることを忘れないでください。

※「登録販売者」は、薬剤師と違い国家資格ではなく、一定の実務経験がある者が都道府県の試験を受けて合格すると登録されます。原則として、第2類医薬品と第3類医薬品を販売し、情報提供等を行うことができます。

ネット上での購入の注意点

 ネットを介した薬の購入で、特に注意をしなければならない点は、購入者側は、ネット上の薬局が本物かどうか、実際には薬剤師がいないような違法なサイトなのかを見分けることが難しいことです。購入時や、実際に服用する際の相談事に関するメールに、薬剤師以外が対応しても確認が取れません。また、心配事に対してすぐに返事が来ない可能性もあります。
 また、日本国内に拠点がないのに、日本語で書かれている海外のサイトは数多く存在します。これらのサイトから購入をした場合は、個人輸入の取扱いになり、トラブルが生じても、原則として日本の法律が適用されないので注意が必要です。

 さらに、ネットを利用する場合に知っておく必要があるのは、薬の購入に関係する個人情報は、システムを運営する第三者のネットワークを経てやり取りされるという点です。情報そのものの蓄積や保管・再利用などは、薬局が直接管理せず、運営会社に管理委託するという仕組みが一般化しつつあります。こうした仕組みにより、売れ筋の分析等も含めた巨大な情報を解析し、各種の支援情報と関連付けてデータとして活用する等、新たな情報社会を形成しつつあります。しかし一方で、個人の属性や居場所、過去の購入履歴や嗜好の傾向などの情報からさかのぼって、比較的容易に個人を特定することができてしまいます。薬の購入や服用の情報は、個人属性や機密度が極めて高いという側面から考えると、大きな問題にもなりかねません。これは、情報の「保護」と「活用」の間で、盛んに議論をされています。

(図2)ネット購入の仕組み

OTC薬の正しい使い方を知る

 海外などでは鎮痛薬の継続使用による肝障害が問題になっています。頭痛になった時に使っているうちに、頭痛になるのを恐れて、OTC薬の鎮痛剤を飲み続けるといった報告もあります。ネットだけの問題ではないと思いますが、対症療法を続けているうちに医薬品の乱用となることも懸念されます。鎮痛薬などのOTC薬は、短期間使うことが原則です。受診の機会を遅らせ、症状が悪化しないよう、普段から正しい薬の使い方をしっかり身につけることが大切です。人体に対する作用が著しくないとされるOTC薬ですが、中には、医師の診断を受けたことがある場合にしか使用できないものや、医療用と全く同じ成分のものも販売されています。間違った使い方をすれば危険な薬にもなりかねません。説明書をよく読み、正しく使用し、使用後は症状をよく観察し、症状が悪くなっていないか、副作用は出ていないか確認するようにしましょう。
 ほとんどのOTC薬は、他の薬との相互作用を持っています。自分で飲んでいる他の薬との相互作用に注意する必要があります。また、医療用医薬品を使用している人が、OTC薬を使用する場合には、同じ成分が入っていないかなどを確認することが大切です。
疑問を感じたり、少しでも体に不調を感じたら、薬剤師など専門家に相談したり、医療機関で受診することが大切です。

まとめとして

 販売者側に求められるのは、対面販売であれネット販売であれ、薬を購入する人の症状を丁寧に聞き取り、状況に応じた薬を選び、飲み方、副作用など購入者に必要な情報を提供することです。また、購入者側に必要なのは、知識や情報をもとに、より安全で自分にあった薬の買い方、使い方を見つける力を身につけることです。最近は、質問サイトや個人のブログなどから情報を収集する傾向にありますが、そこに書かれている薬の効果などは、あくまでも個人的な意見であり、それに惑わされないようにしましょう。医薬品の情報は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの公的機関や、薬剤師会などが提供する、正確な情報を集めるようにしてください。 
 薬は、私たちの暮らしに身近なものであり、健康に直接結びつくものであるからこそ、薬局等の対面販売やネット販売の特徴をよく理解し上手に活用しながら、自分自身の健康管理をすることが大切です。

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