• 消費生活相談・多重債務相談 電話03(3235)1155 (受付時間:月曜~土曜 午前9時~午後4時)
  • 高齢者被害110番 電話03(3235)3366 (受付時間:月曜~土曜 午前9時~午後4時)
  • 架空請求110番 電話03(3235)2400 (受付時間:月曜~土曜 午前9時~午後5時)

薬局で買える薬~リスクを知って上手に利用~ 慶応義塾大学薬学部 教授 福島 紀子

  • 薬を知るための新たな制度
  • 一般用医薬品のリスク区分
  • 購入時の専門家による情報提供
  • 情報提供と相談体制
  • 今後の課題
今月の話題イラスト

薬局やドラッグストアーの店頭には、たくさんの薬が陳列されています。これらの薬は一般用医薬品(大衆薬)と呼ばれるもので、消費者が医師の処方せんなしに購入することができる薬です。なかには手に取ろうとすると、「薬剤師にご相談ください」とか、「店員に声をかけてください」などと書かれた箱だけの展示をご覧になることがあるかもしれません。
平成21年6月1日から、この一般用医薬品の販売方法が大きく変化したことをご存じでしょうか。改正から3年たちましたが、いまだに「どうしてわざわざ薬剤師から説明を受けなくてはならないのか」「消費者を信用していないのか」といった苦情を聞くことがあります。薬の適正使用を目指して制度を改正した趣旨を今一度考え、一般用医薬品を上手に利用していただきたいと思います。

薬を知るための新たな制度

医薬品の販売制度の改正には、それまで政府が経済の活性化をめざして実施してきた、規制緩和政策が大きくかかわっています。一方で、国は、高騰する国民医療費と国民皆保険制度の存続についての問題も抱えており、軽い疾病であれば自分で対処するセルフメディケーションを推進し、医療費を削減することも視野に入れてきました。今後はこれまで以上に危険性(リスク)の高い薬を薬局で購入できる可能性も考えられます。

しかし、これを実行するには、医薬品販売の現場において、適切な情報提供と相談対応がなされる体制が必要です。しかし一般用医薬品の販売については、説明のないままの販売や薬剤師でない者の販売、店舗での薬剤師不在等の実態が指摘されていました。

薬は、期待する効能効果と望まない副作用発生のリスクを併せ持っています。また、体の中で長い時間効果が持続する工夫(徐放性製剤と呼ばれています)や、胃では溶けないで腸で溶けるような工夫(腸溶錠と言います)など、常に効能効果を高めるための発展があり、新たな工夫に合わせた使用方法の注意が必要です。しかし、薬を見ただけでは、その効能やリスク、工夫については分かりません。薬を正しく使用するには、情報提供が必要不可欠です。一般用医薬品の中には、リスクが低い薬も多くありますが、まれに重大な健康被害を生じるおそれのある薬も含んでいます。リスクの違いにより情報提供の内容に違いがあるため、自分に合った一般用医薬品を安心して購入し、使うために、医薬品のリスク区分が行われ、リスクの程度に応じて薬剤師等が適切な情報を提供するための制度が開始された訳です。

このページのトップヘ戻る

一般用医薬品のリスク区分

医薬品のリスク区分図

一般用医薬品は、リスクの程度に応じて、特にリスクの高い第1類医薬品、比較的リスクの高い第2類医薬品、リスクが比較的低い第3類医薬品に分類されています。冒頭に述べたように消費者が直接手に取ることができる場所には空箱が置いてあり、実物はカウンターの内側など別の場所で管理しているのが第1類医薬品です。これらは、これまで医師の処方せんでしか手に入れることができなかった医療用医薬品と同じ成分を含んだ薬があるため、販売時に特に注意を要する成分を含む薬として分類されたものです。医療用での使用経験から安全性が確認されたものではありますが、一般用医薬品としては使用経験が少ないため、使用には薬剤師の助言など充分な注意が必要です。最近では、再発防止薬として、口唇ヘルペスや膣カンジダ症の治療薬も販売されています。これらの薬は、以前に医師の診断を受けたことがある人に販売することができますが、薬剤師が必要な質問や情報提供を行わなくてはなりません。

第2類医薬品は比較的リスクが高い分類ですが、普通に消費者が手に取ることができる場所に陳列されています。その中でも特に注意が必要な成分を含むものとして指定第2類医薬品という区分があります。これらの成分は、かぜ薬、解熱鎮痛薬、睡眠改善薬、胃腸鎮痛鎮痙薬、漢方薬などに含まれており、医療用医薬品との相互作用や重複投与等にも注意が必要です。また、スポーツ選手が使用する場合に、ドーピング検査での禁止成分が含まれている薬もありますので、薬剤師等による情報提供が重要になります。

第3類医薬品は、日常生活に支障をきたす程度ではありませんが、身体の不調が起きるおそれがあるもので、ビタミンB・C含有保健薬、主な整腸薬、消化薬などがあります。

これらのリスク区分は、消費者が容易にわかるように、外箱や直接の容器等にリスク区分の表示が義務付けられています。表1に示すように指定第2類医薬品と第2類医薬品の表示が分かりにくいのでご注意ください。

このページのトップヘ戻る

購入時の専門家による情報提供

リスク区分毎の対応する専門家 表

リスク区分に応じた情報提供を実施するために、対応する専門家を表2のように規定しています。第1類医薬品の情報提供は薬剤師が行わなければなりませんが、第2類、第3類医薬品の情報提供は、薬剤師だけでなく平成21年に新たに登場した「登録販売者」が対応できることになっています。

「登録販売者」は、原則として、第2類医薬品と第3類医薬品を販売し、情報提供等を行うことができます。薬剤師と違って、国家資格で免許を受けるのではなく、都道府県の試験を受けて登録がされます。受験資格も様々で、高校を卒業していなくても、4年以上の実務経験があれば受験できます。第1類医薬品以外の医薬品を販売する場合は、薬剤師を必要とせず、その店舗管理者は登録販売者がなることができます。

このページのトップヘ戻る

情報提供と相談体制

イラスト

新しい医薬品販売制度においては専門家による情報提供と相談体制が最も重要です。そのため医薬品販売にあたっては、情報提供を行う場所(情報提供場所)の設置が義務付けられています。

情報提供の方法は 第1類医薬品の場合は薬剤師が書面を用いて、情報提供場所において対面で行うことになっています。もちろん、消費者から情報提供の必要がないとの意思表示があった場合は、情報提供の義務はありませんが、薬剤師が必要と判断した事項については積極的に質問や情報提供を行います。消費者の情報から、希望する薬が使えないこともあります。薬剤師が質問をすることは、薬を適正に使用するときにとても重要です。

第2類医薬品については、薬剤師又は登録販売者が情報提供を行うように努力することが求められています。情報提供場所において対面で行うことや質問又は説明などは第1類の対応と同じです。消費者からの相談があった場合は、第1類医薬品については薬剤師が、それ以外の一般用医薬品については薬剤師又は登録販売者が対面で、必要な情報を提供することが義務付けられています。

ドラッグストアーなどで専門家にアドバイスを受ける場合、医療面では現在医療機関にかかっているか、他の薬やサプリメントを使用しているか、生活面ではスポーツ選手で大会出場経験者か、妊娠しているかあるいは予定があるか、過去の経験として副作用・アレルギーがあるか、今後の予定として歯科治療や手術等があるかないかを話して、相談いただけるとよいと思います。また、OTC薬*の購入などご自分で服用するものでないものを購入する時は、使用する人は誰なのか、何歳なのかをしっかり伝えてください。

* OTC薬(オーバー・ザ・カウンター・ドラッグ):医師の処方せんがなくても薬局などで購入できる一般用医薬品のことで、健康被害などのリスクを負わないよう、リスク区分に応じて分類されている。

このページのトップヘ戻る

今後の課題

以上のように、販売制度の改正によって、消費者のリスクを最小限にするためのリスク区分や表示の義務付け、また、専門家の対面による情報提供と、これまでにない消費者の安全を重視した一般用医薬品の販売体制が整備されたと考えます。しかし、ネット販売の問題や、消費者の自己責任に委ねるセルフメディケーションに対応するための薬の正しい使い方の教育や、消費者教育の遅れなど課題は先送りになりがちです。リスク区分についても、第1類医薬品以外にも注意が必要な成分は指定第2類医薬品にもあり、薬剤師がいないところで販売される可能性が高いと思われます。医療用医薬品を服用している患者の相談や、医療用医薬品との相互作用や重複投与について、また既往歴等の理解など、登録販売者の継続的な教育体制の整備が必要です。

多くの薬の中から、状況に応じた最適な服薬設計がされるには、専門家である薬剤師の情報提供が欠かせませんが、薬剤師も、最新の知識や事故事例、対応方法を入手するための情報の共有化などに常に気をつかう姿勢が必要です。

一方で、薬を使用する消費者は、すこしでも疑問を感じたら、服薬情報等を薬剤師などに質問してみることが、とても大切なことです。

このページのトップヘ戻る
ご案内 募集中