Loading...
3-1 3-1_sp

3
若者に多い
契約トラブル
事例

ナツミ

これまで、「契約は守らなければいけない」ということを学びましたね。
しかし、契約によっては、これから紹介するようなトラブルにあうことがあります。契約に疑問や不安がある場合は、一人で悩まずに、すぐに最寄りの消費生活センターに相談しましょう。

ナツミ

相談することは、自分のトラブルを解決するだけではありません。消費生活センターに寄せられた被害の情報をもとに、注意が呼びかけられて被害の予防に役立ったり、そのようなトラブルの防止や救済のための法律改正につながったりします。よりよい社会にするためにも相談をすることはとても重要なことです。

ナツミ

もしも、契約のことを知らないで大人になってしまったら…
では、若者に多い契約トラブルの事例をみていきましょう。

契約トラブル事例①

  • タカシは、企業説明会場の近くで、就職活動に関するアンケートを求められ、名前と連絡先を書いた。

    第3部イラスト3-1_1
  • 後日、営業員から電話で「無料の就活セミナーを受けないか」と誘われ、タカシは営業所に出かけた。
    タカシは、「無料セミナー」を受けた後に、突然、この事業者が主催している有料のセミナーに勧誘された。
    タカシは、就活に失敗した人の動画を見せられ、「今、申し込まないと就職活動もうまくいかなくなる。このままでは失敗する」などと言われたりして、不安になって、その場で30万円の就活セミナーに申し込んだ。

    第3部イラスト3-1_2

だけど、セミナーは期待したほどの内容ではなく納得ができませんでした。どれだけの効果があるかもわからないので、解約したいです。

タカシ
ナツミ

トラブルにあった原因と思うものにチェックを入れましょう(複数回答可)。チェックを入れて回答すると、下の解説を読むことができます。

解説

就職活動中の学生は、これから就職ができるかどうか不安を抱きながら就職活動をしています。学生は、社会経験も乏しいため、事業者の話をうのみにして一層の不安をあおられ、有料の就活セミナーの契約をしました。このような場合、消費者契約法によって、契約を取り消すことができます。

事業者は、本来の目的である有料の就活セミナーの勧誘販売をすることについては何も告げずに、タカシを呼び出しています。このような勧誘方法をアポイントメントセールスと言い、特定商取引法では、クーリング・オフ制度が設けられています。書面を受け取ってから8日間以内であれば、何の理由もなく契約解除ができます。

クーリング・オフ期間を過ぎてしまっても、勧誘方法などに問題がある場合もあります。決してあきらめずに最寄りの消費生活センターに相談しましょう。

一言アドバイス

ナツミ

事業者から、不意打ちで契約について勧誘されたり、不安をあおられたりされると、冷静に判断することができません。その場で契約することはやめましょう。

契約トラブル事例②

マリは、知り合いに「1回だけ無料で脱毛エステを受けられる」と誘われ、エステティックサロンに出かけた。

  • 無料の脱毛エステの施術後、店の人から、「1年間継続して受ければきれいになる」、「脱毛後にフェイシャルエステをサービスする」などと勧誘されて、断りにくい雰囲気になった。

    第3部イラスト3-2_1
  • マリは、「学生なので支払えない」というと、分割で払えるから大丈夫などと言われた。
    45万円の1年間回数無制限の全身脱毛コースではあるが、支払いは月々1万5千円の36回払いになると言われ、それなら支払えると思い、その場で契約した。

    第3部イラスト3-2_2

帰宅してから冷静に考えてみたら、1年間の契約なのに3年間も支払いを続けることや、高額な契約をしてしまったことに後悔しています。解約できないでしょうか。

マり
ナツミ

トラブルにあったきっかけや原因と思うものにチェックを入れましょう(複数回答可)。チェックを入れて回答すると、下の解説を読むことができます。

解説

脱毛や語学教室など、特徴のあるサービスを限定して、特定商取引法ではクーリング・オフ制度が設けられています。書面を受け取ってから8日間以内であれば、何の理由もなく契約解除ができます。

クーリング・オフ期間を過ぎてしまっても、勧誘方法などに問題がある場合もあります。決してあきらめずに最寄りの消費生活センターに相談しましょう。

高額な契約の場合、分割払いという支払方法を勧められることがあります。月々の支払額は抑えられますが、利子が加わり、支払総額が高額になります。支払うことができる金額か、本当に必要な契約かなど、慎重に検討しましょう。

エステや語学教室などでは「無料体験」がありますが、主催する側はその後の契約を期待して実施するため、その点を十分に考えて参加しましょう。

一言アドバイス

ナツミ

契約するサービスには、どのような特徴があるかを考えましょう。また、分割払いは、支払総額と支払期間を確認することが大切です。自分にとって本当に必要な契約かどうかを検討しましょう。

契約トラブル事例③

コウスケは、大学の友人から投資をしてみないかと誘われ、その友人のサポートをしているという先輩から「銀行に預けるよりも投資をしたほうが良い」という話を聞いた。

  • 数日後、その先輩から連絡があり、「初心者が投資でもうけを出すためには、50万円の自動売買アプリを購入する必要がある」と説明された。高額だと思ったが、「アプリを使えば簡単にもうけが出るので購入代金はカバーできる」こと、「このアプリは会員制なので入会者を紹介すれば1人につき5万円の利益がある」と言われた。

    第3部イラスト3-3_1
  • コウスケが、お金がないというと、「学生ローンで借りればよい」と言われ、借金をして契約をしてしまった。

    第3部イラスト3-3_2

アプリを使ってみたけどもうからず、サポートもないため、解約したいです。

コウスケ
ナツミ

トラブルにあったきっかけや原因と思うものにチェックを入れましょう(複数回答可)。チェックを入れて回答すると、下の解説を読むことができます。

解説

自動売買アプリを購入して会員になって、また友人を入会させると1人につき5万円の利益があることから、特定商取引法の連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)に該当する可能性があります。このような取引形態については、書面を受け取ってから20日間以内であれば、何の理由もなく契約解除ができます。

クーリング・オフ期間を過ぎてしまっても、勧誘方法などに問題がある場合もあります。決してあきらめずに最寄りの消費生活センターに相談しましょう。

自分の借金返済のために、友人を入会させて利益を得ようとすると、被害者だったはずの消費者が、今度は加害者になってしまいます。絶対に友人を巻き込んではいけません。

事業者は、内容のわからない情報を販売し、「簡単にもうかり、返済できる」と勧誘していますが、実際にはほとんどもうからず、投資に必要な情報自体も何の価値もない場合があります。「簡単にもうかる話」などないということを知っておきましょう。

一言アドバイス

ナツミ

友人からもうけ話やいわゆるマルチ商法の勧誘を受けても、簡単にもうからないことを覚えておきましょう。高校卒業後、進学すると交友関係が広がります。友人であってもトラブルのもとになることに対してははっきりと断るようにしましょう。あなたが友人を誘えば、今度はあなたが加害者になってしまいます。

契約トラブル事例④

  • サツキは、スマートフォンで、「新人モデル発掘オーディション」という広告を見て応募した。書類選考合格の連絡があり、オンライン面接を受けることになった。

    第3部イラスト3-4_1
  • 面接の翌日合格を告げられ、事務所に来るように言われたので出向いたところ、「合格ではあるが、モデルとして仕事をするためには、1年程度レッスンを受けてもらわなければならない。入会金40万円のほか、レッスン費用は毎月2~3万円かかる」と言われた。

    第3部イラスト3-4_2

モデルになれるチャンスだと思い、その場で契約をしました。だけど、帰宅後、冷静になって考えると高額だと思い、解約したいです。

サツキ
ナツミ

トラブルにあったきっかけや原因と思うものにチェックを入れましょう(複数回答可)。チェックを入れて回答すると、下の解説を読むことができます。

解説

事業者は、本来の目的であるレッスン受講契約の勧誘販売を隠し、合格を告げて事務所に呼び出して、勧誘販売をしています。このような勧誘方法を、アポイントメントセールスと言い、特定商取引法では、クーリング・オフ制度が設けられています。書面を受け取ってから8日間以内であれば、何の理由もなく契約解除ができます。

クーリング・オフ期間を過ぎてしまっても、勧誘方法などに問題がある場合もあります。決してあきらめずに最寄りの消費生活センターに相談しましょう。

入会金40万円について、もし、契約書面に「入会金は、いかなる事情があっても返金しません」の記載がある場合、この契約条項は無効になる可能性があります。事業者の説明をうのみにせず、疑問に思ったら最寄りの消費生活センターに相談しましょう。

一言アドバイス

ナツミ

SNSには、さまざまな広告が掲載されていたり、それによって勧誘される場合があります。本来の目的を隠して呼び出され、突然、勧誘をされると冷静に判断することができません。その場で契約することはやめましょう。

ナツミ

次の問題にチャレンジしましょう

チャレンジクイズ①

  • 第3部イラスト3-5_1

    路上で呼び止められて「近くでアクセサリーの展示会をしているから見にきて」といわれ、近くの宝石店に連れていかれた。

  • 第3部イラスト3-5_2

    そこでネックレスを買ってしまったが、家に帰ってから、高額だし買ったことを後悔した。

ナツミ

クーリング・オフできるでしょうか。次の2つから正解と思う番号をクリックしてね。

1

クーリング・オフできる

sign O

2

クーリング・オフできない

sign x
解答を見る

解答

ナツミ

正解は、1です。

解説

街中や店舗以外の場所で呼び止められて、近くのお店などに連れて行き商品などの販売をする場合をキャッチセールスといいます。訪問販売の一種で、クーリング・オフ制度が設けられています。従って、店での契約であってもクーリング・オフができます。

チャレンジクイズ②

  • 第3部イラスト3-6_1

    インターネットショッピングでスニーカーを購入した。

  • 第3部イラスト3-6_2

    しかし届いた商品は思っていたイメージと違っていたのでクーリング・オフしたい。

ナツミ

クーリング・オフできるでしょうか。次の2つから正解と思う番号をクリックしてね。

1

クーリング・オフできる

sign x

2

クーリング・オフできない

sign O
解答を見る

解答

ナツミ

正解は、2です。

解説

インターネットショッピングは特定商取引法の「通信販売」ですが、クーリング・オフ制度はありません。しかしインターネット通信販売では、返品に関することを広告に表示することになっています。

事業者が、返品の可否や条件について特約を設けている場合、サイト上にわかりやすく表示することが義務付けられています。返品についての表示がない場合は、商品到着後8日以内であれば送料負担で返品することができます。

この事例では、自己都合による返品になりますので、返品特約に「返品できない」と記載がある場合は返品できません。ただし、商品に不具合があるなどの場合には、事業者に責任を問うこともできます。

チャレンジクイズ③

  • 第3部イラスト3-7_1

    中古車を購入した。

  • 第3部イラスト3-7_2

    販売店からは、事故歴がないと言われていたのに、購入後間もなく整備に出したところ、実は事故歴があることがわかった。

ナツミ

契約を取り消すことはできるでしょうか。次の2つから正解と思う番号をクリックしてね。

1

取り消せる

sign O

2

取り消せない

sign x
解答を見る

解答

ナツミ

正解は、1です。

解説

中古車を購入する場合、事故歴の有無は重要な事項です。その重要な事項について、販売店が嘘を言っています。消費者契約法では、勧誘に際して事業者が重要事項について事実と異なることを告げて(これを「不実告知」という)、消費者が事実でないことを事実と誤認して契約した場合、契約を取り消すことができるとされています。

チャレンジクイズ④

  • 第3部イラスト3-8_1

    証券会社の担当者から電話で「○○会社の株は、今後絶対値上がりする。間違いなくもうかるから、今買っておいた方がいい」と勧誘され、買うことにした。

  • 第3部イラスト3-8_2

    その後、株は大幅に下がり大損してしまった。

ナツミ

契約を取り消すことはできるでしょうか。次の2つから正解と思う番号をクリックしてね。

1

取り消せる

sign O

2

取り消せない

sign x
解答を見る

解答

ナツミ

正解は、1です。

解説

株式の将来における値段の変動は不確実です。この事例では、証券会社の担当者が「絶対値上がりする」「間違いなくもうかる」と断定的に言い切って顧客に株式を買わせています。消費者契約法では、事業者が将来の見通しが不確実なことについて断定的なことを告げたことによって、消費者が確実と誤認して契約した場合、その契約を取り消すことができると定めています。よって、この事例の契約は取り消すことができます。

チャレンジクイズ⑤

  • 第3部イラスト3-9_1

    マンションを購入しようと思っていた時に、事業者から新築マンション建設の話を聞いた。完成したら、眺めも日当たりも良さそうだったので購入契約をした。

  • 第3部イラスト3-9_2

    その後、マンションの隣に高層マンションの建設計画があることを知った。事業者はそれを知っていたようだ。

ナツミ

契約を取り消すことはできるでしょうか。次の2つから正解と思う番号をクリックしてね。

1

取り消せる

sign O

2

取り消せない

sign x
解答を見る

解答

ナツミ

正解は、1です。

解説

マンションを購入するかどうかを判断するとき、眺望や日照が良いかどうかは重要な検討事項となります。この事例では新築マンションの隣に高層マンションが建築されて、眺望や日照がさえぎられることを知らずに購入しました。しかし事業者は消費者にとって有利なことだけを言い、不利益なことを故意に告げなかったので、消費者は不利益な事実がないと誤認して契約をしました。この場合、消費者契約法では、「不利益な事実の不告知」として契約を取り消すことができると定めています。

全体のまとめ

ナツミ

きちんとした判断のもとで結ばれた契約は、民法で規定されている権利と義務が発生して、守らなければいけないことを学びましたね。

第1章で学んだね。

タカシ
ナツミ

だけど、契約の意思表示が、きちんとした判断でできていない場合、契約にしばられない場合があることも学びましたね。

第2章で学んだ。

マり
ナツミ

第3章の事例では、契約トラブルについて、特別に契約の効力をなくすことができる場合を定めた法律があることを学びましたね。それが消費者契約法や特定商取引法。

特定商取引法はクーリング・オフ制度がありましたね。ところで、消費者契約法って、どんな法律でしたっけ?

コウスケ
ナツミ

消費者契約法は、消費者と事業者とでは、契約について持っている情報の質や量に格差があるから、特別に意思表示についての取消しや無効が定められた法律よ。(参照:消費者契約法 第1条)

法律って色々と考えられているんですね。でも何かトラブルに巻き込まれた時は、自分一人で何とかしようとせずに、最寄りの消費生活センターに相談するのがいいね。

タカシ
ナツミ

それがいいわね。消費生活センターなどには、消費者契約に関するさまざまな相談が寄せられているの。これらのうち被害情報は、消費者被害の未然防止や被害拡大を防ぐための法律改正につながっているのよ。

相談することは、自分の被害救済のためだけじゃなくて、社会への貢献にもなるんだね。契約で不安になったり、困ったりしたら、すぐに相談しよう‼

black left black middle black right
タカシ
マり
コウスケ

専門の相談窓口

  • 最寄りの消費生活センター:
    消費者ホットライン/局番なし:188
  • 東京都消費生活総合センター:
    相談窓口/電話番号:03(3235)1155
    ホームページ:東京くらしWEB
    (消費生活相談窓口のご案内)
Float Btn