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楽しい旅行にするために ~パックツアーのチェックポイント~ 兵庫県弁護士会消費者保護委員会

  • 契約成立時期とキャンセル料
  • オペラ鑑賞ツアーのトラブル
  • 旅行中の交通事故に対する補償
  • 海外旅行傷害保険のすすめ
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旅行会社の店頭に並んだ華やかなパンフレットに惹かれて、道行く人が足を止めている光景をよく見かけます。人々の価値観の多様化に伴い、数多くの魅力的な海外、国内旅行が企画・販売されていますが、一方でトラブルも絶えません。よくあるトラブルについて、法律ではどのような解決ができるか、またトラブルを未然に防ぐために何に気をつけたらよいかをご案内します。

(契約成立時期とキャンセル料)

旅行業者に海外パックツアーの申し込みを電話でしたのですが、都合が悪くなり出発20日前にキャンセルをしました。まだ申込金を支払っていませんでしたが、旅行業者からキャンセル料の請求書がきました。

私はキャンセル料を支払わなければならないでしょうか。

キャンセル料を支払わなければならないかどうかは、旅行契約が成立しているかどうかで異なります。

旅行業の登録をしている業者は、「標準旅行業約款」(以下、約款)という観光庁長官及び消費者庁長官が定めて公示する契約条件に従っているのが通例です。

この約款によると、パックツアーの場合、旅行契約は消費者が申込書に必要事項を記入して申込金を支払うことにより、初めて成立するのが原則です。電話、ファックス、郵便、eメール等の通信手段による予約の申し込みだけでは旅行契約は成立していません。キャンセル料の支払いは旅行契約に基づく義務なので、旅行契約が成立していない場合には支払う必要がありません。

今回のケースでは、電話で申し込みをした後、まだ旅行業者に申込金を支払っていないため契約は成立しておらず、キャンセル料を支払う必要はありません。

ただし、インターネット等により旅行を申し込み、旅行代金をクレジットカードで決済する場合には、旅行業者の承諾時に旅行契約が成立し、以後のキャンセルについてはキャンセル料が発生するおそれがあるので、注意が必要です。

また、最近では外国の企業が日本語のウェブページを開設し、日本の消費者に対して直接、海外のホテルの予約や航空券の販売を行う例が見られます。このような業態の外国企業は、日本の旅行業登録をしておらず、約款によることなく事業を展開しているので、前述のようなキャンセル料の規律も適用されません。キャンセル料の支払義務の発生時期やその料率が、日本における規約とは異なり、また紛争となった場合には海外で裁判をしなければならない可能性もあるので、事前にウェブページの記載をよく確認しておく必要があります。

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(オペラ鑑賞ツアーのトラブル)

旅行会社が企画したヨーロッパでのオペラ鑑賞ツアーに申し込みをしましたが、ツアー中に3回のオペラ公演を聴けるはずだったところ、そのうち1回については実際には聴けませんでした。

原因

  • 旅行会社の手配ミスのため、オペラ公演のチケットが入手できなかった。
  • 行きの飛行機が機体整備不良で乗り継ぎ地に延着したため、予定の乗り継ぎ便に乗ることができなくなり、結局、オペラ公演に間に合わなかった。

旅行業者はパックツアーの契約において、消費者が計画どおりの日程で運送・宿泊など、旅行に関するサービスを受けられるように手配し、旅程を管理する義務があります。

旅行内容の変更が生じた場合でも、旅行業者がこのような義務をきちんと果たしている場合には、契約違反はありません。しかし、そうでない場合、消費者は旅行業者に対し債務不履行を理由に損害賠償請求や旅行契約の解除ができます。そして、旅行内容が変更された場合、それが適法にされたものか、それとも単に債務不履行の結果なのかは、次に挙げる約款に定められた旅行内容変更の要件を満たすかどうかによって区別されます。

【1】 損害賠償等の請求

旅行イメージ

一般に契約はいったん成立すると、その内容を変更することはできません。しかし、旅行契約では旅行業者の責任とはいえない事情により、状況が変わることも少なくありません。そこで、約款では
(1) 旅行業者において関与できない事由が発生したこと
(2) 旅行の安全かつ円滑のためにやむをえないこと
(3) あらかじめ速やかに(緊急の時は事後速やかに)旅行者に変更の理由等を説明すること

という三つの要件を満たした場合、旅行業者が旅行内容を変更することを認めています。

Aの場合、オペラ公演を鑑賞できなかったのは旅行業者の手配ミスが原因なので、要件(1) を満たさず、旅行業者は旅行内容を変更することができません。この場合、旅行業者の債務不履行として消費者は旅行業者に対し、オペラ鑑賞ができなかったことによる損害賠償請求(慰謝料請求など)が可能です。

Bの場合、飛行機の整備不良により現地到着が遅れたことが原因なので、要件(1) (2) を満たすといえるでしょう。よって、旅行業者が変更について消費者に説明していれば、(3) の要件も満たされることとなり、旅行業者はオペラ鑑賞から別の旅行内容へと変更することができます。この場合には債務不履行はないので、消費者は旅行業者に対して損害賠償を求めることはできません。

なお、約款上は旅行業者に責任がない場合であっても、例えば入場する観光地・観光施設の変更やツアータイトル中の記載事項の変更等、約款に定められた重要な変更が生じた場合には、一定の免責事由がない限り、消費者には旅行業者から変更補償金が支払われるものとされています(旅程保証制度)。この事例では、「観光施設の変更」に当てはまると考えられるため、Aの場合には旅行代金の2%の金額の変更補償金を受け取ることができますが、Bの場合には航空機の延着が免責事由となり、変更補償金の支払いはありません。

【2】 契約の解除

前述の旅行内容変更の要件をすべて満たし、旅行内容が適法に変更された場合でも、その内容が約款に定められた「重要な変更」に当てはまるときは、消費者はキャンセル料なしで旅行契約を解除することができます。飛行機延着やオペラ公演の開催者側による中止などが旅行開始前に分かっていたようなケースでは、消費者は旅行の中止を申し出た場合、キャンセル料なしで解除することができます。

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(旅行中の交通事故に対する補償)

海外パックツアーで現地会社の空港送迎バスに乗車中、バス運転手が前方不注視のため中央分離帯に衝突する交通事故を起こし、私は右腕を骨折する被害を受けました。

この場合、私はパックツアーを申し込んだ日本の旅行業者に対して、被害の賠償を求めることができますか。

この問題の場合、旅行業者の責任としては二つ考えられます。

【1】 安全確保義務

旅行業者には、旅行中に遭遇すると思われる危険を避けるため適切な措置を取る義務があります。この事例では、バス会社の選択にミスがなかったか(過去に何回も事故を起こしている、現地の免許を有していない等)、バス行程として選択した道路状況等に問題がなかったか(一般には利用されない細い道であった等)、などについて旅行業者に過失があれば、安全確保義務違反による損害賠償請求の可能性があります。しかし、事故の主な原因がバス運転手の前方不注視という点だけであれば、損害賠償請求は困難となります。

【2】 特別補償責任

パックツアーにおいては、旅行業者は旅行中の事故による消費者の生命・身体・携帯品への被害について、過失がなくても一定額の補償金・見舞金を支払う責任を負っています。消費者がパックツアー参加中に、突発的な事故等によって身体に傷害を受けたときには、当然この責任が発生します。この事例の場合、右腕骨折なので、例えばギプス固定で7日以上90日未満の通院を要した場合には、旅行業者には特別補償責任として通院見舞金5万円の支払義務があります。

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海外旅行傷害保険のすすめ

このように、安全確保義務違反の立証は困難であり、また特別補償責任は低額となるため、実際の被害回復のために是非、海外旅行傷害保険への加入をお勧めします。

クレジットカードに付帯している海外旅行傷害保険を利用する場合には、

  • 旅行代金のカード決済が保険適用の条件となっていないか
  • 海外での高額な医療費について治療費の補償額は十分か
  • 提携病院でキャッシュレスで治療を受けることができるか
  • 渡航先で入院した場合に家族が現地に赴く費用の補償があるか
  • 日本語対応のアシスタンスサービスが受けられるか

など、十分な補償を受けられるかどうかの確認が必要です。

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