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読者レポート減塩生活のすすめ

読者委員
小林 好教(こばやし よしのり)

 食塩は、身近な調味料であると同時に、摂りすぎによる高血圧症をはじめ、さまざまな疾患のもとになっていることから、毎日の生活の中で「減塩」を意識することが大事になってきています。今回、「なぜ減塩が必要なのか?」「誰でもできる減塩法」について、NPO法人日本高血圧学会・減塩委員会委員で、医療法人社団光靖会北村記念クリニック院長の安東克之医師にお話を伺いました。

なぜ「減塩」が必要なのか?

 日本人の1日の食塩摂取量は、年々少しずつ減ってきているものの、2015年の平均で見ると、成人男性では11g、成人女性で9.2gとなっています。しかし、厚生労働省が昨年に改定した1日の食塩摂取量の目標値は、成人男性8g未満、成人女性7g未満となっており、日本人の食塩摂取量が依然として高いことが分かります。一方で世界保健機構(WHO)では、2025年までに食塩摂取量5g未満を提唱しており、日本の摂取基準自体が世界と比べて未だに高いという実状もあります。
 「塩分の摂りすぎは高血圧症のもと」とよく言われます。血液にはNa(ナトリウム)濃度を一定に保つ働きがあります。そのため、塩分を過剰に摂取すると、Na濃度を下げようとして血液中の水分が増えるので、血液量が増えます。増加した血液が全身を巡る際、血管を押し広げる結果、血圧が上がることになるのです。
 塩分の摂りすぎは、高血圧症以外にも、脳卒中、腎臓疾患、心臓病のリスクも増えることになるので、「減塩」は、それらの疾患に対する大変有効な予防法ともいえます。

なぜ「減塩」が難しいのか?

 塩分は、毎日の食生活における各種の食材や調味料(しょうゆ、味噌など)から摂取しています。長い間濃い塩味に馴れた食生活から急に薄い塩味に変えると、味に物足りなさを感じてしまい、なかなか長続きしません。
 ところが欧米では、味覚の「馴れ」を利用した減塩の実証例があります。

  • 味覚の実験で、パンの塩分量を1週間ごとに5%ずつ減少させ、5週間で25%まで減塩したところ、味の変化に誰も気づかなかった。
  • イギリスで、国と食品メーカーが協力して、調味料などの食品の塩分量を数年かけて段階的に減らす取り組みを行い、結果として、国の医療費を数千億円削減した。

 私達も参考にしたいものです。

「減塩」への心がけ

 食品のパッケージに書かれた「栄養成分表示」を見て、自分が1日どれくらい塩分を摂取しているのかを調べてみることも大事です。また検査で、尿中の塩分量を測定する方法があります。
 取材の最後に、安東医師は「人の食生活習慣は一朝一夕には変わらないが、前述のポイントを少しずつ積み上げていけば、高血圧症をはじめとするさまざまな疾患の予防につながることを認識していただきたい」とおっしゃいました。
 私自身の食生活を省みると、塩分過多となっていますので、今回、安東医師から伺ったお話をしっかりと受け止めて、毎日の生活の中で減塩に努めていこうと決意しました。

取材ポイントまとめ 誰でもできる減塩法 ~減塩のための工夫~

食材購入時のポイント

★同じ食品であれば、減塩食品を選びましょう。

日本でも減塩食品の品揃えが増えており、すでに百数十品目以上が販売されています。減塩食品リストは、日本高血圧学会・減塩委員会のホームページで見ることができますので、ぜひ確認してみてください。

【一般のみなさま向けの情報】
特定非営利活動法人日本高血圧学会
HPhttps://www.jpnsh.jp/general_salt.html

★「栄養成分表示」で塩分量を確認しましょう。

食品のパッケージに、「栄養成分表示」を記載することが、法律により義務づけられています。この中で塩分については、「食塩相当量」と表示されていますので、日頃からチェックする習慣を身につけましょう。なお、2020年までの間は、「ナトリウム(Na)」で表示している食品もあります。ナトリウム量は食塩量とは違うため、食塩相当量に換算するには、「2.54(2.5でも十分)」をかけなければなりません。必ず「食塩相当量」として確認しましょう。

計算式
(例)ナトリウム0.2g × 2.5=食塩相当量0.5g ※「mg」の場合は「g」にしてから計算します。[200mg=0.2g]

調理の仕方でのポイント

  • できるだけ新鮮な食材を使い、調味料に頼らず、食材そのものの味を生かしましょう。
  • 酸味(酢など)や香り(ゆず、レモンなど)を効かせて、塩味の代わりにしましょう。
  • だしを利かせると、手間はかかりますが、味噌、しょうゆなどの調味料の使用量を減らせます。
  • 塩蔵品などは下ゆでなどすることにより、食材に含まれる塩分量を減らせます。

食べ方でのポイント

  • うどん、そば、ラーメンなどのつゆやスープは塩分が多いため、残しましょう。
  • 味噌汁は具だくさんにしましょう。塩分を体外に排出するカリウムを多く摂取できます。
  • 塩味は、食材の一部や表面だけでも感じるので、しょうゆなどの調味料はたっぷりかけずに、少しだけつけて食べるようにしましょう。
  • 外食やインスタント食品は塩分量が多い傾向があるので、できるだけ控えましょう。

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