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今月の話題本当に知ってる?
正しい靴の選び方

一般社団法人 足と靴と健康協議会 事務局長
上級シューフィッター
木村 克敏(きむら かつとし)

 新学期や新社会人、暖かい春になり新しい靴をそろえたい、そんな気持ちになる季節ですね。ところでみなさんはどんなふうにして靴を選んでいますか?新しい制服に合わせて、ビシッとスーツに合わせて、街歩きにウォーキング、ジョギングにランニング…のはずが、うきうきした気持ちを吹き飛ばす、痛い靴擦れ、足が痛くてもう一歩も歩けない、そんな経験をしたことはありませんか?
 今回は失敗しない靴選びのポイントと、強力な助っ人シューフィッターについてお話ししたいと思います。

自分の足を知ろう

 顔が一人一人違うように足の形も十人十色です。まずは自分の足について知りましょう。身体のサイズを表すものには身長や体重がありますね。足にもそれと同じようなものがあります。踵からつま先(一番長いゆび)までの長さを「足長(そくちょう)」、親ゆびの付け根と小ゆびの付け根(一番幅のあるところ)の幅を「足幅(そくふく)」、その幅の周りの太さを「足囲(そくい)」と言います。
 これは体で言えばウエスト周りのようなものですね。靴選びに必要な足の寸法は「足長」と「足囲」です。正確に測るのは少し難しいのですが、頑張ってみましょう。壁に定規の0をあてそこに足を乗せて、一番長い指のゆび先のメモリを読めばそれが「足長」です。一番幅のある部分にひもなどをぐるっと巻いて、その長さを測れば「足囲」になります。もちろん左右で足の大きさは違いますので両足とも同じように測ります。
 これを後で説明するJISサイズ表に当てはめて靴のサイズを判定します。
 また、つま先は形によって大きく3タイプに分けられます。「エジプト型」「ギリシャ型」「スクエア型」の3タイプです。みなさんの足はどのタイプでしょうか?この機会にじっくり観察してみてください。先のとがったデザインの靴につま先が四角っぽいスクエア型の足は合いません。靴と足の相性は足の寸法だけでなく、つま先の形も重要なポイントだということを知っておいてください。

靴を知ろう

 それでは靴はどのような規格で作られているのでしょう。ここでは日本の靴に限定してお話ししていきます。みなさんも靴をお店で買うときは靴のサイズを見て選んでいると思います。靴の裏の底や靴の中にサイズの表示がありますね。例えば「23EE」とか「23E」など目にしたことがあるでしょう。これは先に触れたJISサイズ(日本工業規格)というものです(図1)。この表示は靴そのものの寸法ではなくその靴に合う足の寸法を表示したものです。例えば「23EE」表示の靴は足の足長が23センチで足囲が23・4センチの足に合う靴ということです。これを足入れサイズと呼んでいます。興味のある方は靴の中の長さをメジャーや定規で測ってみてください。23センチの靴は、おおよそ24センチくらいはあるはずです。そこに23センチの足が入ればつま先に1センチの余裕ができます。これをつま先余裕といい靴には必ず必要です。これがないと足のつま先が靴の先にあたってしまい爪を痛めたりすることになります。
 日本の靴のサイズは足のサイズということを覚えておいてください。冒頭に日本の靴に限ってお話ししますといったのは、外国ではこのようなサイズのシステムをとっていない国が多く、靴型サイズといって靴そのものの寸法が表示してあるものが多いのです。お店では日本の靴と外国から輸入された靴が混在して売られています。このような状況も靴選びを難しくしている原因の一つかもしれません。そこで登場するのが強力な助っ人「シューフィッター」の存在です。これは一般社団法人足と靴と健康協議会(FHA)が養成認定している資格で、簡単に言えば靴合わせのプロフェッショナルです。基本的にはお客様の足をお測りして好みに合った靴をお選びする心強い味方です。どこのお店に在籍しているかは前出のFHAのホームページで検索することもできます。
 ワイン選びで困ったときはソムリエに、靴選びで悩んだときはシューフィッターに気軽に相談してください。きっと親身になって一緒に靴選びをしてくれることでしょう。これで足にピッタリあった靴は見つかったも同然ですね。

それぞれに合った靴選び

子供の靴選び

 子供は成長が早いので大きめのサイズを選びがちですが、大きい靴では足がしっかりホールドされないので、飛んだり走ったりできません。足も靴の中で遊んでしまい、足を痛める原因にもなります。だからといって足にピッタリ合った靴をいつまでも履き続けることも、成長期の子供には危険です。
 少なくとも春と秋、半年に1回くらいは足を計測してサイズの確認をしたいものです。

高齢者の靴選び

 高齢者は足の筋力が衰えてくるため、すり足になり、つまずきや転倒をしやすくなります。そのため、靴のつま先がしっかり上がっているもので、靴底の素材は軽く滑り難く屈曲性に優れたもの、加えて脱ぎ履きがしやすく、柔らかい素材で軽いものを選ばれるとよいでしょう。
 また高齢者は膝や腰にトラブルを持つ方も多いので、中敷き部分にクッション材が入っているものも良いでしょう。

レジャー用の靴選び

 最近はハイキング、本格的な登山などがブームですね。それぞれのシーンで着る服が違うように、靴もTPOで使いわけが必要です。スポーツをイメージすると分かりやすいのですが、それぞれの競技で履く靴は違いますよね。靴にも得意、不得意があります。街歩きの靴でハイキングや登山などをしたら、足を痛めるだけでなく事故にもつながりかねません。用途に合った靴を選ぶことはとても大切なことです。

正しい靴の履き方と歩き方

 足に合った靴が見つかっても正しく履かなければ全てが台無しです。街中で靴のかかとを踏んでつぶして履いている人や、靴紐をほどかず脱ぎ履きしている人をよく見かけます。これは靴にも足にも良くない事です。靴のかかと部分にはカウンターという堅い補強芯が入っており、足の踵をしっかりホールドしてぐらぐらしないようにする役割をしています。踏んで潰してしまうとその機能が損なわれます。これを傷めないように必ず靴ベラを使うことを習慣にしたいものです。靴売場に行くと携帯用の靴ベラがたくさんあります。外出先でスマートに靴を履けば周囲の見る目も違ってきますよ。
 紐は何のためにあるのでしょう。紐を締めることで足を靴の中で固定して、歩く力を地面にしっかり伝えるためです。靴紐をしっかり締めなければ歩くたびに足が靴の前に滑ってしまい、爪を痛めたり、踵が緩く抜けてしまったり、逆に踵が擦れて靴ズレになったりと良いことは一つもありません。たとえ足にピッタリ合っている靴でも、正しく履かなければ、足を痛めることになります。紐靴の場合、紐を緩め、靴ベラを使って足を入れ、靴のかかとに足の踵をしっかりつけて紐を締めていきます。少し歩くと紐が緩んできたりします。その時は再度締め直します。
 そして最後は歩き方です。しっかりと背筋を伸ばし、手は大きく振り、歩幅はやや大股に、足の踵から着地して、足の裏全体で踏み返すようにして親ゆびでけり出す感じで、颯爽と歩いてみてください。この踏み返しを「あおり運動」というのですが、これにより心臓から送り出された血液を、ポンプのように戻しています。「足は第二の心臓」と言われるのはこのためです。このポンプ運動がしっかりできないと、足がむくんだり、疲れやすくなったりします。
 足は小さな面積で全体重を支え、歩いたり走ったりすればその体重の何倍もの重さがかかります。自分の足を知り、その足に合った靴を選び、正しく靴を履き、そして正しく歩くことで、そんな足をちょっといたわって下さい。

一般社団法人 足と靴と健康協議会(FHA)
http://www.fha.gr.jp/

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