消費生活総合センターを訪ねて
東京都は2006年11月、「マイナスイオン効果をうたったインターネット広告に科学的な根拠がないものが含まれている」として、7事業者に景品表示法(※)を守るよう文書で指導し、関係業界に表示の適正化等について要請しました。私はこのニュースを知り、マイナスイオンという科学物質の存在や、効果・性能をうたう商品の実態について調べてみたいと思いました。そこで今年の7月に、東京都消費生活総合センターを訪ね、くらしに役立つ実験実習講座『マイナスイオンをうたった商品〜科学的根拠はあるのか〜』を受講するとともに、講座の講師である、科学ジャーナリストで理学博士の川口啓明先生にお話を伺う機会をいただきました。講座当日は梅雨空にもかかわらず、会場は超満員の受講者で、マイナスイオン商品への関心の高さをうかがわせました。
(※)正式には「不当景品類及び不当表示防止法」…過大な景品付販売や消費者に誤認される恐れのある誇大・虚偽表示等の禁止を定めている法律
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消費生活相談の状況
都内の消費生活センターに寄せられた相談のうち、マイナスイオン商品に関する相談件数は、平成14年度から17年度までの過去4年間で332件あったそうです。内容別内訳では、「効果・性能」に関する相談が最も多く、143件(43・1%)でした。
マイナスイオンという科学
マイナスイオンは、あらゆる健康関連商品に定着し、「リフレッシュ効果」や「血液をサラサラにする」等と言われています。しかし、現在、効能に関して科学的に認知された理論は無く、科学的・学術的な用語としての明確な定義も無いそうです。マイナスイオンは、空気イオンのうち、負に帯電したもの「空気負イオン」のことと言われています。負の空気イオンを発生させる仕組みを用いた商品には、水破砕による滝のリフレッシュ感をうたうマイナスイオン発生器、放電による電離を利用したヘアドライヤーなどがあります。負の空気イオンは種類が多く、効能はイオン種によって異なるそうです。マイナスイオンは、科学とも非科学とも言えない未科学のようです。
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科学的根拠を問うやり方
講義の中で、川口先生は次のように述べられていました。
科学は、仮説の「提唱」とその仮説の「検証」によって進展していきます。あらゆる仮説が科学の世界では許容されて、多くの検証を経て、妥当なものだけが、科学的な理論や説明として認知されます。仮説は十分に検証されない限り、単なる仮説、単なる思い付きにすぎません。単なる仮説の段階で、その仮説に基づいて、商品のうたい文句を作り出して販売すれば、それは詐欺だと言えます。このうたい文句は、実証データに基づかない「不実証広告」となります。このような詐欺的商品を摘発するのは、2003年の景品表示法の改正以前には難しかったと言えます。
東京都の表示に関する調査・検証の概要
今回の講座は、2006年11月の東京都の調査等も踏まえた「景品表示法の観点からの科学的な視点での検証」を中心にした解説講義でした。都はインターネットの表示に問題がありそうな布団、ネックレス、空気清浄機など8商品を選んで、その商品を販売している7事業者に資料の提出を求めて、業者からの回答を分析したところ、商品の仕組みと合致しない実験データを示していたり、ネット上で見つけた数値を根拠なく引用したりしていたことが判明しました。(なお、東京都の調査は、マイナスイオンの存在自体を否定したり、全てのマイナスイオン商品の効果・性能を否定したりするものではないことに注意が必要です。)
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景品表示法と測定法
東京都のマイナスイオン商品の調査で注目すべき2つの出来事があります。
一つ目は、2003年の「景品表示法の改正」によって、都道府県知事による執行力の強化が図られたり、第4条2項の新設により、効果・性能に関する表示については公正取引委員会が事業者に対して、その合理的な根拠を求めることができることとなったことです。東京都の調査は、都道府県知事の権限である景品表示法第9条に基づく報告徴収等により事業者に表示の根拠とした資料の提出を求め、これを検証したものです。
二つ目は、2003年9月の国民生活センター「マイナスイオンを謳った商品の実態」報告にもあるように、それまでは空気中の正・負イオン密度(イオン数/m3)の測定方法に関して、公的な試験方法が無かったのですが、2006年11月20日に、日本工業規格JIS B 9929 「空気中のイオン密度測定方法」が官報公示されたことによって、マイナスイオンを発生する商品と発生させない商品の見分けが可能になったことです。
実験実習講座を通して
私たち消費者は、一見、科学的な根拠に基づくかのように見える効果や性能をうたった表示や、販売員のセールス・トークだけに感情を動かされることなく、いろいろな角度から情報を集めたり、消費生活総合センターに相談するなどして、商品やサービスを合理的に選択していく必要があると思いました。最後に、今回のテーマに限らず、様々な「くらしに役立つ実験実習講座」が東京都消費生活総合センターでは無料で開催されています。皆さんも積極的に参加し、日々の消費生活に役立ててはいかがでしょうか。