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今月の話題

狙われる高齢者
〜消費者被害にあわないために〜

弁護士
末吉宜子(すえよし たかこ)

1. 統計から見た高齢者の現状

イラスト 内閣府が作成している平成17年版「高齢社会白書」に、大変興味深い数字が並んでいます。
 65歳以上の人がいる世帯は、平成15年で1千727万世帯あり、全世帯(4千580万世帯)の37・7%を占めています。高齢者のいる世帯のうち、ひとり暮らし世帯が341万世帯 (19・7%)、夫婦二人の世帯が485万世帯(28・1%)で、若い世代と同居していない世帯が半数近いのです。そして推計によれば、今後もひとり暮らし高齢者は増加を続けると予測されています。
 高齢者世帯を経済状況から見ると、個人所得では、65歳以上の男性の平均は、平成12年で年間303万6千円、女性は 112万4千円となっていますが、貯蓄からみると、世帯主が65歳以上の世帯(単身世帯は対象外)の平均貯蓄残高は、 平成15年では2千423万円で、全世帯平均である1千690万円の1.4倍となっています。ただ、4千万円以上の貯蓄を有する高齢者世帯が17%を占めており、高額貯蓄世帯が多いために、平均値が上がっているともいえます。
 こうした統計上に表れた高齢者の現状を見ると、所得は多くなくても貯蓄があり、高齢者だけで生活しているために、身近に相談できる親族がいない、ということがいえます。

2. 狙われる高齢者

 こうした状況ですので、悪質業者にとって、高齢者は格好のターゲットになっているのです。しかも、悪質業者のだましの手口は非常に巧妙かつ悪質になってきています。「振り込め詐欺」の一つである「オレオレ詐欺」は、当初は孫や子どもになりすまして高齢者にお金を振り込ませていましたが、さらに悪質化し、警察官や弁護士になりすまして、お金を振り込まないと子どもが刑事罰を受けるなどと脅す手口に変わっていきました。
 また、最近詐欺罪で逮捕者が出た悪質リフォーム業者によるだましの手口は、高齢者だけの世帯に親切を装って担当者が近づき、高齢者が心を許したところで高額な契約を締結させ、おかしいと気付いてやめようとすると、高圧的に脅しをかけてやめさせない、というもので、周到に仕組まれたものであることが警視庁の調べでわかりました。
 高齢者を狙う悪質商法として、その他に「点検商法」「次々販売」といわれる手口があります。高齢者は自宅にいることが多いため、訪問販売の被害にあう確率が高く、中でも被害が多いのがこれらの商法です。商品は布団や浄水器、床下乾燥剤などが多く、「お宅にある布団(浄水器)(家の床下)を無料で点検します」と言って、「無料」「点検」という言葉で安心させて家の中に入り込み、買い換えや乾燥剤を入れる必要があると強く勧めるのです。その際、そうしないと病気になるなどと高齢者の日ごろの不安をかき立てます。そして、一度契約すると、次々と新たな契約を勧めたり、また、その情報が流れて今度は別の業者もやってきて、次々と新しい契約をさせていくのです。
 こうした手口は、甘い言葉、不安感の利用、恐怖心(契約しないと帰ってくれない)などを取り混ぜて、高齢者を操作していくところに巧みさがあります。

3. 被害を防止するためにできること

 悪質業者は、高齢者よりも一枚も二枚も上手です。知らない人を家に上げない、すぐに契約をしない、といったことが被害防止の基本ですが、高齢者自身が気を付けるというだけでは不十分です。
 そのため、身内、近隣の人、ケアマネジャー、ヘルパーなど、日常的に高齢者と関わることのできる人たちによる「見守り」がとても大切になってきます。
 部屋の中にいつの間にか布団が大量に運び込まれていたり、契約書が部屋の中にあるのを親族やヘルパーさんが見つけて、消費生活センターに相談に行くことができ、被害を未然に防いだという例はよくあります。
 しかし、ヘルパーさんが必ずしも消費者問題について正しい知識があるとは限りませんので、ヘルパーさんが来ているから大丈夫との過信は禁物です。今後は、介護サービスに携わる人たちへの消費者教育も必要です。

4. 成年後見制度の活用

イラスト 最近、認知症の高齢者が消費者被害にあうという事例が増えていますが、判断能力の低下した高齢者を支援する制度に、成年後見制度があります。
 成年後見には、本人の判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の三段階があります。
 悪質業者が訪問販売で次々と商品を買わせるようなケースでは、「判断能力がやや不十分」な状態であることが多いので、最も程度の軽い補助の手続きを活用することが考えられます。家庭裁判所に補助開始の申立てをして、補助人に契約の同意権・取消権や代理権を付与してもらうことにより、その後の悪質業者による被害を食い止める一助になるのです。判断能力の低下が著しく、認知症の状態になったと思われる場合には、速やかに後見開始の申立てをして、法律問題が起こった時に対応できるようにすることが大切でしょう。

5. 高齢社会を安心して過ごすために

 私たちは、高度な経済社会に生きているので、悪質商法の危険に常にさらされているといえます。そして、誰もがいずれ高齢者となり、判断能力は衰えてきます。
 しかし、自らの権利は自ら守るという意識にたって、地域の人の援助や法律制度を上手に活用しながら、自立して高齢社会を生きていきたいものです。

 

高齢者の消費被害事例

イラスト このような悪質商法の手口に注意しましょう。困ったときは、お近くの消費生活センターにご相談ください。

点検商法:リフォーム工事
◆床下調湿剤や換気扇
 排水管の点検に来た業者に「水漏れがあるかもしれないので床下も点検します」と言われ、見てもらったところ、「湿気がひどいので換気扇をつけたり調湿剤をまかないと、家が腐って大変ですよ」と言われた。不安になり、高額な工事契約をしてしまった。
◆屋根工事
 「無料で屋根を点検します」と言う訪問業者に見てもらったところ、「このままでは雨漏りしますよ」と言われ、屋根工事の契約をした。見積書には工事一式と書かれていて内訳がなく、40万円だったのに、工事終了時には90万円近くになっていた。後で近所の大工さんに見てもらったら、10万円もしないとのことだった。

催眠商法:着物セット
 路上で景品引換券をもらい会場に行ったところ、客が大勢いて、業者がトークを交えながらさまざまな景品を配ったり、日用品を格安で販売していたので参加した。最後に「着物セットが半額!早い者勝ち!」と言われ、つい手を上げてしまい、契約してしまった。

次々販売:ふとん
 「以前販売したふとんの点検に来ました」と言って訪れた業者が「ダニが沢山いるので健康を害するから買い換えた方が良い」と勧めるので、購入した。しばらくして別の業者も訪れて、「ダニを防ぎます」と湿気取り機能付きのマットを勧めるので、つい購入してしまった。